まとめ11【ザ・タイガース 絶頂期】
ジュリーこと沢田研二さんの経歴やあれやこれやを徒然なるままにつらつらと綴って参ります。細々とやっていきます。
Xで連載(?)しているネタのまとめです。
よろしくどうぞ。
【まだまだ沢田研二】まとめ11
さて『君だけに愛を』で人気が大爆発したザ・タイガースの次なる作品は
『銀河のロマンス/花の首飾り』(1968/3/25)
こちらは当初『銀河のロマンス』がA面でしたが『花の首飾り』が話題沸騰となり、A面を入れ替えて再発された経緯があります。
『花の首飾り』は雑誌『明星』で募集した女子高生が書いた詞に、なかにし礼が補作したものとされています。
この制作経緯については瞳みのるが復帰後に書籍にまとめています。
「ザ・タイガース 花の首飾り物語」
『銀河のロマンス』はこれまでのザ・タイガースの路線に沿った貴公子然とした楽曲です。
そして『花の首飾り』。こちらはトッポがリードボーカルを務め、ジュリーはコーラスを担当しています。
トッポはザ・タイガースの前身であるサリーとプレイボーイズ時代からリードギターで、コーラスは担っていましたが基本的にボーカルを取ることはありませんでした。しかし幼少期は教会で賛美歌を歌っていたこともあるそうで、ハイトーンで澄んだ美声の持ち主です。当時ザ・タイガースが出演した日劇ウエスタンカーニバルでビージーズの『ホリデイ』を歌っていたところ、それを観たすぎやまこういちが一気に書き上げたのが『花の首飾り』です。
『花の首飾り』は正にトッポの為にある曲。
神話的な歌詞にこれまで以上にクラシカルな美しい旋律は正にトッポにピッタリです。
ところでギタリストとしてのトッポを見た場合。
意外にも(?)彼の嗜好は本格派のロックサウンドに向いています。
トッポがフェイバリットとして挙げるのはエレキギターに革命を起こしたジミ・ヘンドリックス、ザ・ローリング・ストーンズの創始者で初代リーダーのブライアン・ジョーンズ、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ、更にはフランク・ザッパといった面々。いずれも激しく独創的なサウンドの持ち主たちです。
特筆するならば、ブライアン・ジョーンズはローリング・ストーンズの生みの親でありながら1969年に脱退し、間もなく世を去った悲運のギタリスト。この「途中脱退」という点で、トッポはやがて「ザ・タイガースのブライアン・ジョーンズ」と言われることになるのでした……。
そして発売直前の3月10日、日本武道館で新曲発表会が開催され1万2千人が集まりました。僅か1年9ヶ月前、客席でザ・ビートルズ日本公演(1966/6/30-7/2)を観ていた彼らが、今度は主役として舞台に立ったのでした。これは日本人初の武道館公演となります。
正にザ・タイガースの人気を証立てたイベント、そして楽曲の大ヒットですが、これらは1本の映画の為にあったのでした。そう、彼らの主演第1作
『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』(1968年4月10日公開)
監督:和田嘉訓/脚本:田波靖男/主演:ザ・タイガース
アンドロメダ星のプリンス、シルビイが婚約者から逃げて地球へやって来ます。ザ・タイガース(劇中の役は本人そのまま)は彼女たちを匿うのですが、やがてシルビイは故郷へ帰って行く……という、言ってしまえば他愛ない物語。
監督の和田嘉訓(よしのり)は東大卒業後に東宝へ入社、黒澤明などの助監督を務め1964年に監督デビュー。ドリフやクレージー映画を監督。
脚本の田波靖男は慶応大学卒業、1961年に脚本家デビュー。若大将シリーズ全作とクレージー映画に携わりました。
『銀河のロマンス』はシルビイに語り掛ける歌なんですね。
ちなみに彼女の婚約者ナルシス王子役は当時「星の王子様」というキャラで売っていた五代目三遊亭圓楽。……うん、そりゃ逃げるよなあ(笑)
星の王女シルビイを演じたのはザ・タイガースと同じナベプロ所属の女優・歌手の久美かおり。オーディションで決まったという説もありますが、既にデビューしていました。
劇中でジュリーに憧れを抱き宇宙へ連れて行こうとするのですが「ジュリーはみんなの恋人」と諦めます。ジュリーファンの少女たちに最大限配慮した役どころですね(笑)
久美かおりはその後ザ・タイガースの映画全てに出演。ジュリーファンの嫉妬を買い、刃物が送られてくるなどの相当な嫌がらせを受けたとも……。
映画には橋本淳とすぎやまこういちも本人役で出演しています。
この映画では合宿所での共同生活やジャズ喫茶での演奏と、いつでもどこでも追いかけて来る熱狂的なファン、というザ・タイガースが置かれていた当時の環境が再現されています。映画用に撮影された再現シーンとは言え、その空気は今日でも存分に味わうことが出来るでしょう。
映画のクライマックスでは、武道館で演奏するザ・タイガースのメンバーと宇宙船から地球へ向けて歌うジュリー。曲目は彼らの必殺ナンバー『シーサイド・バウンド』!
地球へ向けて歌っていたハズのジュリーは、突如「映画館でご覧の皆さんも一緒に歌ってください」とスクリーンに呼びかけます。
所謂「第四の壁」を超える演出ですが、これはミュージカルを意識した田波のアイディアだったそうです。つまり「舞台と客席を一つにする」演出ですが、これを映画で実現したのはなかなかに斬新で冒険的なアイディアだったのではないでしょうか。正に熱狂の只中にあるザ・タイガースだからこそ、映画でも存分に彼らの楽曲と演奏シーンを取り上げる作品だからこそ、成し得た演出だったと思います。
そのアイディアは見事に的中し、公開時の劇場はさながらコンサート会場のような熱気と歓声に揺れたそうです。
ザ・タイガースの絶頂期を象徴する楽曲と映画。
それはグループ・サウンズの絶頂期の象徴でもありました。
(続く)
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