りかさとりか短文妄想(2021/8/18)

お題『サロンで理想の殿方の話になった時に沙都子のことばかり思い浮かべてしまう梨花ちゃま』

※質問箱にて提供頂いたお題です。ありがとうございました!

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古手梨花は今日もサロンで友人たちと紅茶を飲みながら、華やかな会話をしている。

「突然なのですが、皆さんは“理想の殿方”っていらっしゃいますか?」

ひとつの議論が終わると、いつも梨花とサロンをともにしているツインテールの生徒が突然このような話を切り出してきた。
聖ルチーア学園は、全寮制の女子高であり、かなり閉鎖的な高校である。そのため、一般的な高校にあるような異性との恋愛で盛り上がるといったことはめったにない。
ただ、一部の生徒はいわゆるお嬢様であり、有名企業の御曹司である男性と許嫁の関係を結んでいるということがある。このツインテールの生徒も、そのうちの一人であり、つい最近両親から許嫁として、とある男性を紹介されたのだという。

「いきなり許嫁って言われても正直戸惑ってしまって…そこで皆さんの"理想の殿方"をきいてみたくなってしまって…特にその、梨花さんのような素敵なお方にとっての理想をきいてみたくて…!」
「えっ…私の…?」
「た、確かに、それは私もききたいです!」

ツインテールの生徒に続いて、おさげの生徒が前のめりになり、賛同する。その後に続いて、もう一人のハーフアップの生徒もこくこくと頷く。

「えっと…私にとっての理想は…」
「「「はい…!!!」」」

梨花は自分にとっての理想を思い浮かべようとする。

「私にとっての理想は…無邪気な笑顔が可愛くて、少し意地悪すると涙目になりながらも反撃しようとしてきて…。でもそうかと思ったら、私が困った時には頼りになるトラ…いえ、工夫をして助けてくれて…。そして、いつも私の傍にいてくれる…そんな人」

そう言い終えた梨花はすっと、ティーカップを持ち、中の紅茶を口に運ぶ。しかし、実際にはそのティーカップを持つ手は微かに震えていた。

(しまった…私にとって、理想の殿方なんていないから思わず沙都子のことをイメージして話しすぎたわね…)

「えっと…梨花さんの理想は…随分と具体的なのですね…」
「えっ、えぇ…実はここに入る前に住んでたところで身近にいた人がそういうタイプで…」
「ま、まさか梨花様、その殿方に好意を寄せてらっしゃるのですか…!?」

(えーーー私が沙都子に…好意を…?)

「そ、そんなわけないのです。ボク…いえ、私の田舎は人も少なかったから、当時、少し憧れを抱いていただけなの」
「そ、そうなんですか…?」
「えぇ、そうよ。私がさと…いえ!あの子を好きなんてそんなこと………ごめんなさい!」

梨花は突然席を立ち、サロンの部屋から急ぎ足で出ていく。梨花の話を聞いていた他の生徒たちは呆然としていたが、梨花のあの顔を真っ赤にして、今まで見た事のないような焦りっぷりを見て、(まだその殿方のことが好きなんだな)と確信したのは言うまでもない。

その夜ーーー。

「私は沙都子が好き…そういう意味で…?確かに沙都子とはこれから先もずっと一緒にいたいと思っているわ…。でもそれと恋愛感情は一緒…?」

寮の自室でサロンでの自分の発言を思い返しては困惑している梨花が、ベッドに顔を突っ伏してぶつぶつ呟いている。
その夜、梨花は一睡も出来ず、睡眠不足になった。
この晩をきっかけに、梨花は今までとは違う意味で沙都子に好意を抱くようになり、そう遠くないうちに二人は付き合うことになるのであった。


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