りかさとりか短文妄想(2021/8/13)

お題『コーヒー味のキス』

※質問箱にて提供頂いたお題です。ありがとうございました!

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「ふぁぁぁ、だめですわ…ねむすぎて…」
「みぃ…沙都子、頑張るのですよ…あとちょっと…ふぁぁ…」

ここ数日恒例になった、二人の夜中の受験勉強。しかしこう毎日夜遅くまで勉強をしていると当然寝不足になり、いよいよ沙都子も梨花も眠気に限界が近付いていた。

「そういえばこの間レナから貰ったいいものがあるのです」

梨花はそう言うと台所の方に向かう。
5分後、梨花が戻ってきたかと思えば、その手にはふたつのマグカップ。

「この匂い…コーヒーですの?」
「そうなのです。この間、レナに勉強中に眠くなるって相談したらくれたのですよ」
「でもコーヒーは苦い印象しかないですわ…」
「何事も挑戦なのですよ」

そう言う梨花も今まで何度も繰り返してきた中でも、コーヒーはあまり飲んできてはおらず、そこまで得意ではない。ただ眠気に勝つために、今このコーヒーに挑戦すべきなのだ。

「いただきますわ…」
「いただくのです…」

二人とも舌を火傷しないよう、恐る恐るコーヒーを流し込む。

「…うぇ…!に、にがいですわぁ…」
「みぃ…これは砂糖がないとダメなのです…」

ひとまずブラックで飲んでしまったのが間違いだった。二人は自身の思うありったけの量の砂糖を入れ、再度飲んでみる。

「ふぅ…ちょっとマシになりましたわ…」
「これならなんとか飲めますですよ」

砂糖のおかげでようやく飲めるようになり、二人は休憩がてら話をしながらコーヒーを飲み進める。
ほとんど飲み終えて、いざ勉強を再開しようと、気合いを入れた沙都子の手を梨花が掴む。

「梨花…?どうしましたの?」
「沙都子…ちょっと…気になることがあるのです」
「気になること?」
「えぇ…その…今キスしてみたらどんな味がするのかしら…」
「ふぇっ!?梨花、突然何を…」

沙都子から目を逸らしながら、顔を赤らめてそう言う梨花に、沙都子は困惑する。二人は、中学生になり、その関係を進展させ、恋人同士となった。たまにそういう雰囲気になった時にはキスも何度かするようになったが、沙都子はまだそのタイミングに慣れず、梨花から求められては、困惑し、照れる姿を見せる。梨花も、いざ恋人同士になると、その思いを伝えることに臆病になり、毎回ぎこちない伝え方になってしまう。
それでもお互い、そんな相手に惹かれ合い、今こうして同じ時間を過ごしているのだが。

「沙都子…ダメ、なのですか…?」
「えっと…その…ダメ、じゃありませんわ」

そう言うと、沙都子は梨花の両肩に手を置き、きゅっと目と唇を閉じる。
梨花はそんな沙都子の顔を、可愛いなぁと思いつつ、自身も勇気を振り絞りその頬へ手を添え、触れるだけのキスを一度。

「んっ…」

そして、梨花は再び口付けをすると、今度は自身の舌で沙都子の唇をノックし、軽くあいた沙都子の唇の間から口内へ侵入する。

「ふぁっ…ん…」
「んっ…んむっ…」

沙都子も少しずつ、梨花の舌に絡ませるように動かしてくる。お互いの舌を味わうのに夢中になっていると、いつの間にか、お互いに身体をぴったり密着させていた。

「はぁ…梨花ぁ…」
「沙都子…」

ようやくその濃厚な時間に終わりを告げるために、唇を離すと、二人の名残惜しい気持ちを表すかのように銀の糸が二人を繋ぐ。

「なんだか…コーヒーの味がしますわ…」
「みぃ…大人のキス、なのです」

二人は密着させたその身体を離さないといわんばかりに、ぎゅっとしがみつき、そのまま近くにあった小さな毛布を共有しながら眠りについた。

それ以降、コーヒーは二人の甘い時間の合図に変わってしまったのは言うまでもない。


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