りかさとりか短文妄想(2021/8/5)

お題『ギャグテイスト(?)りかさとりか』

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「はぁ…」
「梨花様、どうかなさいました?」

聖ルチーア学園の放課後、古手梨花は毎日のように同級生たちとサロンで様々なディベートを繰り広げている。
最初こそ、運命の定義とは何かといった崇高な議論を行っていたが、最近の梨花はそれどころではなくなっていた。

「えぇ…少し聞いてもらえるかしら…?」
「もちろんですわ。梨花さんの悩み事、私たちに話すことで少しでも軽くなるのでしたら是非協力させてください!」
「みんな、ありがとう。実は…」

梨花の深刻そうな切り出しに、緊張の面持ちでその話を聞こうとする同級生たち。

「その…沙都子が…」
「沙都子…北条さんのことですよね…?」
「まさか、あの方、また梨花様に何かしたんですか…!?」

「北条沙都子」の名をきいて、同級生たちの表情が険しくなる。彼女たちにとって沙都子は、梨花と同郷とはいえ、素行不良な一面ばかり見ているため、関わるべきではない存在として認識している。また、今までの学園生活において梨花からも北条沙都子の話はほとんどされていなかったので、あくまで偶然同郷だっただけで、実際の二人の仲の良さを彼女たちは知らない。

「いえ、違うのよ。沙都子が最近…凄く魅力的で…」
「「「……え…?」」」

梨花から発された言葉は、同級生たちにとって予想外すぎるものだった。

「梨花様…えっと、その…どういうことですか…?」
「どうも何も、そのままの意味よ。貴女たちも思わない?最近の沙都子、身長もみるみる高くなっていくし、胸も大きくなってるし…」

胸の話をした時の梨花が自分自身の胸を見て少し沈んだように見えたが、同級生たちはそこに触れるのを控えた。

「それに何より!あの子、本当に顔が良いのよ…!!!高校に入ってあんな魅力的になるなんて…私が知らない間に他の人に告白とかされて、誰かのものになったらどうしようって最近そればかり考えてしまうの…」

梨花の未だかつて見たことのない勢いの話し方に驚きを隠せない同級生たち。しかし、そのうちの一人が話し始める。

「梨花さん、北条さんは顔もスタイルも良い、私もそれは思ってましたわ」
「そうよね!?!?やっぱり沙都子は最高に可愛いのよ…!」

同級生からの同調に身を乗り出して返事をする梨花に、圧倒される同級生たち。

「でも梨花さん…北条さんはご自身の素行に問題がありますから、今はまだその魅力に気付いていない方が多いと思いますわ」
「…本当に…?」
「えぇ。少なくとも私の周りではそういう声は聞きませんわ」
「そう…良かった…」

同調した同級生からの話に、梨花は胸を撫で下ろす。

「でも、油断はいけません」
「えっ…?」
「先程も言いましたが、今はまだその魅力に気付いてないだけです。いつかは梨花さんのように、その魅力に気付き、素行不良な一面ですら好きと言う方も現れるかもしれません」
「そんな、どうしたらいいの…?」

安心したのもつかの間、また絶望の表情を浮かべる梨花。

「梨花さん、今が勝負です。北条さんを取られたくないのであれば、今すぐにでも梨花さんのお気持ちを北条さんに伝えるべきですわ!」
「…!!!そうね…そうだわ…!!ありがとう、私、沙都子に気持ちを伝えてくる!」
「えぇ、いってらっしゃいませ、明日のサロンで結果を教えてくだされば嬉しいですわ」
「私は突きつけられた賽の目を不変のものだなんて思わない、蹴り飛ばし、抗い、変えることだってできるのよ…!それが…私の考える運命の定義!明日、きっといい報告をしてあげるわ」

そう言って立ち上がり、走り出そうとして、廊下は走ってはいけないことを律儀に思い出したのか、早歩きで部屋を出ていく梨花。

「ちょっと!なんで梨花様にあんなことを!」
「そうですわ…!あんな不良生徒の北条さんと梨花さんをくっつけるようにするなんて…」
「ふっ…貴女たち、まだ分からないのね。まぁ見てなさい、きっと分かるようになるわ…田舎の同郷で、しかもここまで偏差値の高い高校に一緒に入学するなんて、梨花さんと北条さん、何もないわけないのよ。今日の梨花さんの様子で私はそれを確信したわ…!」

唯一同調した同級生の言葉を理解できないでいる残りの二人。
しかし、それは今だけのもの。いずれ、梨花のいない時のサロンでは、「梨花さんと北条さんでどちらが攻めか受けか」という議論が活発になされるようになるのであった。


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