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【中国軍事動向】チベットの軍司令官が新疆ウイグルに配置換え:経験豊富な指揮官への期待・衝突起きた南疆軍管区の改善か?

 実戦経験豊富なチベット軍区司令員の汪海江中将がこのほど新疆に配置換えになった。「職務については近く発表が待たれる」とも伝えられた。

 「新疆日報」が4日に伝えたところによると。新疆ウイグル自治区のウルムチ市の烈士陵園で清明節の英雄追悼式が行われた。その指導者名簿の中に汪海江氏の名前があったというのだ。

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 1963年7月生まれで57歳となる汪海江氏は四川省安岳出身。長期にわたり、辺境で仕事をしており、師団長や南疆軍区副司令員、2016年にはチベット軍区副司令員に就任している。2019年の冬季人事異動で許勇中将に代わりチベット軍区司令員になった。そして2019年12月に中将に昇格している。

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 2018年に彼はインタビューを受けた時に「私は1977年に高等教育受験が復活してから(文化大革命の混乱で中止されていた:筆者)第一陣として受験があって軍系学校を受けた学生だった。卒業してほどなく、辺境の自衛反撃戦(中越戦争を指す:筆者)に参加し、兵士を率いて前線の敵陣を偵察して作戦により一等功を授与されたこともある」と述べている。

 「40年間の軍での生活において、軍隊が強くなってきたのは一人一人の兵士が奮闘努力の不屈の精神がある強軍の道を構築するのは奮闘努力の夢があってこそであり、奮闘努力があってこそ勝利を得られ、新たな栄光がある」と指摘している。
  
  ある専門家は「チベットと新疆ウイグルは中国の西の辺境で地政学的に交差する場所だ。原理主義、分裂主義の恐怖に直面しており、中国の軍事地図においては特殊な位置を有している」と指摘している。

 こうしてみるとチベットもウイグルも特に違いはないようにも見えるが、「解放軍報」は2017年に汪海江が「海抜4000メートルの国境線で10ヶ月に渡って続けて兵士を率いて極端な天候の中道路を修復し、辺境の村興しに貢献した」と伝えたことがあり、こうした経験を新疆でも広めることが期待されている可能性を窺わせる。

  日本ではあまり知られていないが、今回の中印国境紛争での犠牲者が出たのもチベット軍区ではなく、新疆軍区傘下の南疆軍区に所属する国境警備大隊(辺防団)の兵士である。チベット自治区のガリ地区(阿里)はチベットにありながら、軍管区の管轄ではチベットではなく、新疆の管轄になっているのだ。その点で汪中将がチベット軍管区内での国境哨戒所などで行ってきた様々な向上策を新疆軍管区内のチベットの国境哨戒所に導入することが期待されている可能性もある。

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 もちろん新疆軍区の管区内で衝突が起きてしまった責任が問われている可能性もある。いずれにしても南疆軍区の環境改善が求められている可能性が大きいのだ。

 チベットと新疆ウイグルは中印国境や少数民族地域でもあり、中国のアキレス腱的な場所でもあり、目が離せない。


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