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【中国動向観察】微博元社員が中国のネット監視体制を暴露ー「網絡審査」の欺瞞暴く・語られた新型コロナ下での監視社会の強化

   英国のBBC放送は20日、長年中国のネット「審査」作業に携わってきた劉力朋氏のインタビューを放送し、中国のネット監視状況を暴露した。劉氏は作業していた際の作業日誌をつけており、これを外国メディアに提供した模様だ。 

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     米国に居住している劉力朋氏

  劉氏は新型コロナが流行する最中、ウイルスの蔓延をめぐる北京当局の監視を恐れ、中国を離れ、米国に赴き、自身の日記を後悔し、中国でのネット「審査」の内幕を暴露した。以下はその報道内容だ。

「なぜ『審査員』をするのか」
 劉さんが応募した職種は当初、Weiboの編集作業のはずだった。しかし、応募者は政治的な敏感さを理解せよ、ということだったので仕事の内容はなんとなく想像できたという。ただ当時は「審査員」の具体的内容は分かっておらず、好奇心を持って仕事を始めたという。 

 始めてみると作業は審査「工場」の流れ作業のようだった。仕事はあまり良いものではなかったという。まあ「汚れ作業」のようなもので、自分がなんか悪いことをしていたかのような後ろめたさが付きまとったという。それでも他の人はあまりそのような気持ちを抱いていない様だったという。多くの同僚は自分が社員だったため新浪微博Weiboをあまり使わず、自分と友人は例外的に使っていたという。自分を表現したいという気持ちがあったこともあるという。

 「研修やマニュアルはなかった」
 
劉さんは、正式な研修を受けることなく、実際にそんな研修などはいらなかった。中国で生まれ、育ち、基礎教育を受け、大学卒程度の学歴のある人はみな中国版の「政治的妥当性(political correctness)」は理解している。何が敏感な言葉かをみんなが理解している、という点では洗脳教育は成功していると言える。マニュアルがなくても敏感な言葉やコピペをできるかできないかについて上司から命令がきたり、政治的な問題が起きたかが知らされ、関連文字が消去されたりした。

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 日本が尖閣諸島の国有化をした際に検索サイト「百度」に登場したバナー

 劉さんが「ネット審査員」をしていた2011年〜2013年の間、指示が来て消去するコピペは毎日、10数個で、のち数十個が消去され、さらには消去される敏感な言葉は増え、1日に200を超えるようになったという。この仕事のために多くの内容を読み込まなければならず、その文字数は数十万字にもなった。毎日の作業日誌は増えていき、のちに外国メディアにその情報を提供してアメリカに来てから「中国Digitaltimes」(https://chinadigitaltimes.net/)などのサイトにこの内容を整理して発表するようになったという。

 審査日誌を書いている時はそれほど怖いと思わず、危険な仕事であるとも思わなかったが、それは自分が裏方的に作業をしていたからで、VPNで自分の身分が隠されれていたこともある。しかし、後になって貯めてきた資料をみた時にやっと事態の深刻さに気づいたというわけだ。

 昨年、中国を離れ、アメリカに来たが、自分の身の安全が恐ろしくなったために中国を離れ、外国メディアにネット審査の内容を提供したことで、この一点において自分が面倒に巻き込まれることを悟ったのだ。

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 飛行機の離陸時からずっとあたかも映画「アルゴ」(イランアメリカ大使館人質事件を題材にした2012年の米国映画)のように心配は募り、飛行機が離陸しても落ち着かなかったのだ。

新型コロナ疫情:中国公式メディアのプロパガンダが民衆の怒りを呼ぶ
 劉さんが中国を離れたもう一つの原因は、新型コロナの疫情が広がってから中国では国内での統制が厳しくなってきたということがある。あらゆる場所にチェックポイントが設けられ、あらゆる場所で携帯をかざして個人のQRコードをかざすことが求められた。こうした中でいかなるプライバシーもなくなったという劣悪な状況下で脱出することを決めたのだった。

 審査日記の記録が逮捕されることで失われてしまうことは望んでいなかったから米国にやってきて内容をネットで公表し始めたということだ。

 ファイアーウォールがあるために中国では国内のネットコンテンツをうまくコントロールできており、近年まで外国に対する世論の攻勢を強め、対外的にプロパガンダを行い、五毛ネット軍団を使って大々的に宣伝してきたことはあまり欧米では知られていないだろうと劉さんは語る。

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 劉氏はこのように述べているが、日本でもある程度のことは知られている。とはいえ、新型コロナ疫情下での社会コントロール、監視の体制が強まっているということには理屈では理解できても、劉さんの話を読んで肌感覚の体験として恐怖を感じずにいられない。そして、こうしたネット審査員制度の導入は新浪微博Weiboだけでななく腾讯微信Wechatも、そして字節跳動TikTokも同じであるということを記しておきたい。

 そうそう最後にもう一つ。Lineのデータ管理作業が中国に下請けに出されていた話。皆さんはこの記事を読んでLine社の業務管理についてどう思われるだろうか。(2109字)


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