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【中国動向観察】中国「原潜の父」死去-「初代原潜総設計師」彭士禄氏 享年94歳

 3月22日午後、一人の老人が死去した。94歳という大往生だ。彼の名は彭士禄、「中国原潜の父」と称された原子力潜水艦の初代総設計師だ。

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 中国でよく知られる「原潜の父」といえば黄旭華氏で、昨年習近平から直々に表彰されたことで注目を浴びた。

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習近平は直々に席を退けて後ろにいた黄旭華氏を前に座らせた

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 しかし実は原潜の初代設計師は4人いた。つまり「中国原潜の父」は4人いたのだ。趙仁恺、黄緯禄、黄旭華、彭士禄の4人だ。前者二人、趙氏と黄氏はそれぞれ2010年、2011年に既に死去していたから、最近まで生存する「原潜の父」は2人だった。そのうちの彭氏が死去したのだ。

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 左から趙仁恺、彭士禄、黄緯禄、黄旭華

 この「原潜の父」の死去のニュースは中国国内媒体で大きく取り上げられており、もしかすると7時のニュース「新聞聯播」でも取り上げられるかもしれない。中国の戦略原潜開発に貢献した「英雄」の死去はそれほど中国社会において震撼させる出来事なのだ。

 彼の功績は単なる歴史上のものに止まらないというのが中国的である。軍事や軍需産業において輝かしい歴史を記した原潜開発は単に政治プロパガンダに止まらない今日的意義がある。それは原潜がまさに今日この時も建造が進められているということに他ならないのだ。

 彭老人の死去で「原潜の父」は文字通り一人になってしまった。彭氏の貢献について大々的に伝えられるだろうが、生きる「英雄」、黄旭華氏もメディアを賑わすに違いない。

 最後に一枚、黄旭華氏がありし日に撮影した写真を見て欲しい。

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  左上に撮影日時と場所が記されている。葫蘆島とある。遼寧省葫蘆島市。北京からそれほど遠くない渤海湾に面した港湾都市であり、中国海軍にとって切っても切り離せない戦略要衝だ。ここに海軍の試験基地が置かれ、昨年秋に衛星写真が撮られ、まさに今この時にも最新型の「093A型」原潜建造が進められていると話題になった場所である。

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  今日の彭老人の死去は偉大な貢献があった「英雄」というだけでなく、今後、中国が原潜建造を進める上での国民世論を動員し、指示を集め、プロパガンダを行い、国民に国防教育、愛国主義教育などで教育を進める上での重要な話なのである(932字)。


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