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【中国軍事動向】兵役拒否者にこれでもかというほどどぎつい処罰・中国各地で頻発

 中国各地で「兵役拒否事件」が頻発している。最近、安徽省出身の一人の大学生が新疆軍区に派遣されてから、兵役はやはり嫌だとして、兵役拒否をした。これに対し、政府当局は彼を処罰したのみならず、2年間の復学禁止も言い渡した。彼には罰金5万元(約80万円)が課され、かつ「信用喪失者」としてリスト登録されてしてしまった。

   兵役拒否者に対する処罰など厳しい措置は別に目新しいものではないが、それでもその苛烈さは目を見張るばかりだ。地方においては兵役拒否者が名指しで処罰対象者として通達されるのだ。

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 安徽省の合肥市蜀山区政府は4日、新兵だった劉帅が昨年新疆軍区に派遣された際に2日目にして兵役が嫌になり、退役を求めたことを通達した。新疆軍区では彼を除隊処分にしたが、戸籍には永久に「懲役拒否者」として登録されることになった。また元々在籍していた安徽農業大学への復学も2年間は禁止されてしまった。

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 通達では劉君は昨年9月に身体検査や政治審査に合格し、兵役前訓練を受け、そして入隊審査を経て自分から入隊希望者として兵士になったのだった。しかし、続く11月に新疆軍区傘下の南疆軍区規律委員会の除名決定により、当該地の義務兵優待金基準の倍に当たる、46866元が罰金として課されることになった。

 劉君は「国防義務を履行する際の信用喪失者」の名簿にリスト入りし、3年以内に信用貸付優遇策や利子優遇を受けられない他、3年間はビジネス禁止、蜀山区の公務員応募禁止、国有企業・事業単位での就業不可、生活保護受給資格喪失といった処罰を受けることになった。

 このところ中国では兵役拒否者が少なからず出ており、こうした青年たちはこのような厳しい処罰を受けている。2018年から2019年にかけ中国各地で兵役拒否者が出ているが、2018年に黒竜江省で兵役拒否で処罰を受けた人は26人、陝西省では15人、吉林省吉林市では17人となっていた。

 新疆軍区は中印国境紛争の最前線であり、特に南疆軍区は昨年6月の中印衝突の犠牲者を出した国境警備隊(辺防団)が所属する軍管区であることから、任務を忌避したくなるのはよくわかる。フィリピンやベトナム、欧米、日本と島礁や海域をめぐる領有権をめぐる紛争が高まり衝突も囁かれるようになっている。こうした紛争は戦争勃発の可能性を予期させるもので、兵役拒否者はそのような兆しに敏感なのだと反中共系メディアは騒いでいるが、それは少し誇張しすぎであろう。

 とはいえ中国当局は必死だ。プロパガンダを強め、功績者を表彰してなんとか人心を掴もうと必死である。そして現役兵士や退役軍人には待遇の大幅改善でその功労を見舞っている。中国共産党の一党支配を支える軍隊が崩れることがあってはならないのだ。それゆえ兵役拒否者にはこれでもかというほど厳しい処罰を課しているのだろう。中国共産党政権の脆弱さを窺わせる一側面から目が離せない。


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