情報リテラシー論 其ノ壱

001

 横田秀珠をこんな形で知ることになったのは、思えば不幸なことなのかもしれない。初めてあのいかにも生真面目そうな教授と対面したときには、まさかこんなレポートを書かされ、それで評価を受けるような関係になるなんて思いもしなかった・・・、『関係』と言ったものの、しかし、あの教授との関係性を、ぴったり表現する言葉というのは、少なくとも僕の語彙の中には見当足らない。

 先生?敵同士?友達同士?監視されるものとされるもの?加害者?被害者?第三者?理解者?パートナー?利害関係者?敵対的保証人?弁護士?死刑執行人?

 どれもあからさまにその通りであるようでいて、事実、実際にそんな風に言挙げすることもあるけれど、しかしそれを口に出した瞬間に、てんで的外れな方向にスライドしていくようだった。

 隣にロボットがいて。メガネで。Apple Watchを両腕につけたりして。

 なにを考えているのかさっぱりわからない。

 なにを考え、なにを感じ、なにをしているのか、極めて不可解だ。

 横田秀珠とはなんなんだろう?

 僕と彼の間にはなにがある?

 とはいえそんな風に、これみよがしに思い悩むことこそ、甚だ時間の無駄である・・・、時間稼ぎと言ってもいい。いくら僕が情報リテラシー論を履修していると言っても、どうして僕と横田秀珠との関係に、しっくりくる名前をつけなければならないのか?名前なんて、識別して、呼びやすくするためにつけるものだ。

 それに僕は大抵の授業では居眠りを決め込んでしまっているのでレポートなんてそもそも書くことができないのだ。

 よってこのレポートは、僕ではなく、もっと真面目に授業を受けているであろう僕の友人たちの体験談で埋めさせてもらうことにする。

 こんな関係を築こうとしている以上、その関係性は他の生徒たちのそれを上回る複雑さになるだろう。そんな僕と彼との関係性は結局のところ、『僕達』でいい。

 この半年の付き合いが、長いお別れになるまでは。

002 『蜷局のどか』の場合

 横田秀珠との付き合いはまだまだ始まったばかりなのですが、それでも彼のことは、だいぶんわかってきました。

 見た目は30中盤ぐらい。

 イーンスパイア株式会社代表取締役。ネットビジネス・アナリスト。

 Appleユーザー。

 よくわからないロボットを置く。

 雄弁。

 情報リテラシー論の教授。

 妻子持ちで、奥さんとの関係は良好であるご様子。

 いきなりレポートをブログで書けなんて言われたときはそりゃあ面食らいましたけれど、こわごわ授講してみると、下馬評ほど意味不明な人でもないというのが、今のところの私の感想ですーーーー『わけがわからない』ことが彼のアイデンティティであるなら、あえてそれを崩そうとは思いませんけれど、もしもそうなれるのであれば、私が彼の理解者になってあげたいな、なんて、最近は思ったりもします。

 そんなことを言うと豹変して、わかったつもりにならないでと、冷たく突き放されるかもしれませんが、なんてことはありません、蛇って生き物は執念深いんですよ。

 呪いのようにね。

 かくして情報リテラシーを受けることになった私は今回林檎ヲ剥イテ歩コフ君の代わりにブログを書くことになりましたけれど、はてさて、これからいったいどうなりますことやら、

 乞うご期待。

003

 察するに世間は情報リテラシーなんて称される授業をも簡単に受け入れてしまうくらいの時代へと移行したようですが、今や技術は日進月歩。21世紀の今では朝一番の行動が『Facebookをベッドからスマホで』が全世界で一位らしいですよ。

 かたや私は両親もいまだにガラケーですし、長らく引きこもり生活を送っていた私にはまるでかかわりにないことです。偉いもので、学校に通うというのがどういう感覚なのか、人とLINEやTwitterでやりとりすらしてこなかった私は、もうすっかり忘れていましたーーーこれでは将来、学園モノのラブコメ漫画は描けませんね。

 困った困った。

 しかしそれは漫画家になるという夢が叶ったと仮定した将来の展望であって、今の困りごとは、スランプという贅沢なゴールに到達するための道路工事です。

 せっせせっせ。

 端的にいうと高校を卒業して、大学に入学した私がリアルタイムに直面している『現実』があろうことか友達作りなのでした。

 確かに夏休みも終わってしまったというのに友達が一人もいないというのは問題です。世間ではブログにコメントくれた人へメールしたことから発展してゴールインした人もいるとかーーーいえ、それはあまりにも18歳の娘にはハードルが高すぎましたか。

 まずはTwitterからですよね。そうでしたそうでした。入学前にTwitterで検索してLINEで交流を深めるなんてことは遅いですけれども。スマホが普及した今では簡単に人の投稿をリアルタイムで追うことができるそうです。ネット人口は世界40億人ですから、NID生は全員やっているとみて概ね間違い無いでしょう。

 ちなみにアイフォンとかスマートフォンという言葉よりも『スマホ』というキーワードの方が遥かにグーグルで検索されています。

 さらに40代から50代のスマホ所有率もどんどん上がっているとか。携帯電話はどんどん駆逐されていっていますね。今まで散々お世話になった携帯をガラケーとか・・・まるでガラクタと言われているようで寂しいです。

 「そうやって半端に理解を示すところがガラケー勢を付けあがらせるんだと思うけどな。ぶちのめすしか無いんだよ。」

 林檎ヲ剥イテ歩コフくんの分析はこうでした。

 友達がいない私が言うのもなんですが、彼、私以外に友達いるんでしょうか。

 何はともあれTwitterでNID生を片っ端からフォローした私はこのブログを書き始めました。

 ずっとスマホのことを考えていたからかパソコンに少々違和感を感じます。今では確かWebサービスもブラウザ上じゃなく専用のアプリがほとんどになっているとか。スマホは知っての通り、パソコンとは操作が大幅に異なりますよね。縦向きの小さい画面。指を使った操作。スマホにあったデザインがこれからは普及していくんでしょう。

 スマホの普及の影響は全人類共通に様々なところへ現れています。スマホ一台で必要なくなるものはいくらでもありますからね。世界はスマホに侵されていっています。それはより正確にいうと、私であり、あなたであり、彼であり、彼女であり、人々であり、全人類でしたーーーいえ、大仰なレトリックを駆使して、論点をずらそうとしているわけじゃ、決してなくって・・・。こうしている今も、世界では戦争で多くの命が失われているというのに、こんな一室でブログを書くことにいかほどの意味があるのかーーーなんて言い出しません。

 言いたいのは衣食住こそ、全ての人間に通じる営みであるということです。その衣食住の中にスマホが侵食していくことで、使う側の意識が今まさに」問われているのでしょう。だからこそこの情報リテラシー論なのです。

 と、私は納得しました。この大学に来て、ようやく現代に踏み込んだ私自身、思うところがあったからでしょう。

 あまりにも自分本位で、他社の迷惑を顧みない呪いの動機に、誰あろう、私自身を見てしまったからでしょう。

 呪い呪われし蜷局のどかにも、とうとう挑む時が来たのかもしれないのです。

 そして林檎ヲ剥イテ歩コフ君はこう言います

「ナイスな心構えだ。笑顔の絶えない学内においてその心構えは大切だよな。じゃあ次は何も聞かずに、かつて君をいじめた昔のお友達に会って、旧交を温めて来てくれ。」

 

「ほほう。」

 わあ、かるーい。HUAWEIぐらいかるーい。

 どういう所以あって私が彼に従っているのか謎めいていますが、それじゃあ、まあ・・・、トゥー・ヘヴィ・オア・ノット・トゥ・ヘビィ。

生きる蛇か!死ぬ蛇か!


 

 

 


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