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【現役競走馬烈伝】世界を見据える大食いダービー馬【ドウデュース】

ーー競馬界の"レジェンド"武豊が惚れ込んだ馬

よく食べよく遊びよく走り気づけば世代の頂点へ
名手と挑む次の舞台は…

人馬一体、いざ世界の頂点、凱旋門賞へーー

【現役競走馬烈伝】
ドウデュース編

本題に入る前にデビューから彼の手綱をとる武豊騎手についてその実績とともに紹介しましょう。

実績
・JRA最多勝利数記録(中央4363勝、地方200勝)
・36年連続重賞勝利
・日本ダービー歴代最多6勝
・ディープインパクトと共に無敗のクラシック三冠達成
(2022年8月2日現在)

以上のように日本競馬界の中でも抜きん出た実績を誇り、現在も第一線で活躍する競馬界のレジェンドと評される超一流ジョッキーです。

また競馬の発展のためにも尽力していて、TVなどのメディア出演やウマ娘のプロモーターなど競馬の普及活動にも精力的に取り組んでいます。

騎乗馬確保にも積極的で、
最近ではサイバーエージェント藤田晋社長の馬主デビューのきっかけになったとの情報も。

今回はその武豊騎手に史上最多6度目のダービー勝利を贈ったドウデュースについての紹介になります。


名手のための一頭

2020年、一頭の仔馬が関西で自動車ディーラーを営む松島氏によって購入されました。
ドウデュースと名付けられたその馬は、かつて無敗の三冠馬ディープインパクトに国内で唯一土をつけたハーツクライの仔。
ハーツクライは活躍馬を多く輩出し、G1ホースも出しています。

ところでこの松島氏。
株式会社キーファーズの代表として馬主業を営んでいるのですが、キーファーズの掲げる大目標は

「鞍上武豊で凱旋門賞を勝つこと」

彼は武豊騎手の長年の友人かつ大ファンであり、
武騎手が芝レースの世界最高峰、凱旋門賞を勝つところを見届けるのが夢だと公言し、武騎手に馬を回すために馬主になったのです。

そんな夢を乗せた一頭として、ドウデュースの競争生活はスタートしました。


武豊は朝日杯を勝てない?ジンクス破りの馬

ドウデュースは2021年9月の小倉でデビュー。
もちろん鞍上は武豊。

デビュー戦を1番人気で勝利すると続けて2走目アイビーSも続けて勝利。
無敗のまま12月の2歳G1・朝日杯フューチュリティステークス(阪神 芝 1600m)に挑むことになりました。

このレース、数々の名馬と共に多くのG1勝利を収めてきた武豊騎手にとっては数少ない未勝利G1のひとつ(これと同じく2歳G1のホープフルステークスのみ)で、武豊は朝日杯を勝てないというジンクスがまことしやかに囁かれていました。

ドウデュースは当日3番人気に支持されてレース本番を迎えます。

道中は中団外目につけて追走し、最終直線に入ると大外に持ち出されて進出開始。
1番人気セリフォスが馬体を併せて競りかかるもドウデュースが半馬身差1着でゴールしました。

これにより武騎手は初めて朝日杯を勝ったことになるのと同時にドウデュースは令和生まれ初のG1馬に。

さらにキーファーズにとっても初のG1勝利。
翌年のクラシック戦線に向けて大いに期待が高まる一戦になりました。


3歳クラシック戦線 栄光のダービーへの歩み

年が明けての初戦には弥生賞ディープインパクト記念(G2)を選択。ここを叩いてクラシック第一戦・皐月賞へ進むローテーションを発表しました。

弥生賞には1番人気で出走。
道中は馬群の中を進みチャンスを伺いますが、他馬がまくってきたことでペースが乱れたこともあり2番手を進んでいたアスクビクターモアをクビ差捉えきれず2着、初黒星を喫しました。

しかし優先出走権はしっかり確保し、次戦は皐月賞に駒を進めます。
レース前には秋の凱旋門賞への出走登録も発表され、より負けられない一戦となりました。

1番人気で迎えた本番ではハイペースを読んで脚を溜めるため後方待機策を選択。
しかし逃げるはずだったデシエルトが出遅れ、ミドルペースとなったことで一転して不利な展開に。
最後は強烈な追い込みをかけるも前を捉えきれず3着でレースを終えました。

こうなるともう後がないドウデュース陣営。
満を持しての凱旋門賞参戦をかけて負けられないダービーに臨みます。


武豊6度目のダービー制覇

最高気温29.5℃の夏日の中行われた
第89回東京優駿(日本ダービー)

1番人気に共同通信杯(G3)で圧倒的なパフォーマンスを見せたダノンベルーガ、2番人気には皐月賞2着のイクイノックスがそれぞれ支持され、ドウデュースはその2頭に続く3番人気でレースを迎えました。

今回はデシエルトがうまくゲートを出て前半1000mを58秒9のペースで隊列を引っ張る展開の中、ドウデュースは狙い通りの後方待機策を選択。
流れたペースで前方の馬が疲弊していく中、後方でしっかり脚を溜めたドウデュースは最後の直線でその末脚を弾けさせました。

最後はすぐ後ろで控えていたイクイノックスの猛追をも退け、1着でゴール。前年のシャフリヤールを上回る2分21秒9のレコードタイムでした。

そしてなんと言っても、武騎手はこれで自身のもつ最多記録を塗り替えてのダービー6勝目、加えて史上初の50代でのダービー制覇となりました。

さらに馬主のキーファーズはこれがダービー初制覇。「一国の宰相になるよりも難しい」と言われるダービーオーナーの夢を見事名手と共に果たしました。

こうして劇的なダービーデーはスタンドから起こる万雷のユタカコールと共に幕を下ろしたのでした。


ドウデュースのこぼれ話的なもの

このドウデュースという馬やその周辺について、掘れば掘るほど面白エピソードが出てくるので
そのいくつかをオマケ的に紹介します。

・厩舎での愛称は「おどう」(かわいい)
・武豊のお気に入り。好きな理由は「足が速いから」
・非常によく食べる。その上太りやすい体質でもあり、ダービー後に放牧に出された際にはわずか2か月弱で+42kg
・その食い意地は大したもので、ダービー当日のパドックでは植え込みの花を食べ、ゲート裏の待機中にもコースの芝を食べようとしていたほど
・そして食事中に近寄られると怒る
・ダイエットのためにかなり頻繁にプール調教送りにされる。
・武豊愛が非常に深い松島オーナー。朝日杯を勝った際にはそのレース動画を100回以上見返したとのこと。


未だ叶わぬ世界の夢へ

ダービーの勝利を受けて、すでに出走登録を済ませていた凱旋門賞(G1)への参戦が正式に決定。

毎年10月にパリ・ロンシャン競馬場で開催される芝レースの世界最高峰とされる本レースですが、日本からは未だ勝ち馬が出ておらず、日本競馬界が渇望する称号となっています。

日本からは他にも
・タイトルホルダー
・ディープボンド
・ステイフーリッシュ
の参戦が確定しており、その活躍が期待されています。

ドウデュースに関しては前哨戦として同コースで行われるニエル賞(G2)への出走を予定。同厩舎の先輩ダービー馬マカヒキと同じローテーションで挑むことになりました。

キーファーズと武豊、そして日本競馬界の永きにわたる夢が遂に叶うのか。
ドウデュースの大いなる挑戦に注目です!



次回、世界初の白毛のG1馬。

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