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【秋葉原アンダーグラウンド】 第9章 9話

レンは目の前の状況に固まっているしかなかった。一体トガは何を言っているのだ。


「ここじゃ狭いな。レン、場所を移そう。」

「ちょっと待ってくれよ、トガっさん。なんでそうなるんだよ!?」

「お前はオレの一番弟子だ。先にも言ったが弟子の過ちは師が正してやらんといかん。」

「正すって・・・明らかにおかしいのはロンのほうだろ!?」

「レン、お前はまだ若い。若いが故に何も知らない。世の中は不条理に溢れている。誰かが神となって世界を作り変えるしかないんだ。」

「それこそ人間のエゴだろ!?神の真似事なんかしなくたって世界は変えられるはずだ!」

「やはり若いな。もはや説得は無用だな。着いてこい。」


嫌だとレンは答えようとしたが、トガの青い龍が体にまとわりつき身動きがとれない。それどころかトガの歩む方向へ引っ張られる。ついにはレンは研究施設の外へと引きずり出されてしまった。ただ広い荒れた大地。ここでトガと自分はやり合うことになるのか。レンは鞘に収まっている黄龍を握りしめる。


「できないよ・・・」

「何か言ったか?」


トガは颯爽と距離をとり構えてみせた。


「本当に強くなったな、レン。師として誇らしく思う。だがな、お前は決してオレを超えられん。」

「トガっさん・・・オレ伝説の黄龍を使えるようになったんだ。正直今ならトガっさんに勝てると思う。」

「では実際にやってみたらどうだ?それでオレを止められるならお前が世界を変えられる力になる。ではいくぞ。」


トガはレンの体に青い龍を這わせ、青い炎を遠当ての要領で飛ばしてきた。青天を持つトガにとってはこの青龍が最大の攻撃となる。いきなり大技を決めてくるところを見ればレンに最大の敬意を払っているのだろう。だが同じく青龍を扱えるレンにとってはそれをかわすことくらい造作もなかった。レンは蜃気楼を作り出しており、青龍のクリティカルポイントから既に離れたところにいた。


「なるほど。これをかわすか。」

「トガっさん、もうやめてくれよ!」


しかし、尚もトガは攻撃の手を休めない。今度は青い炎で朱雀を作り出す。とてつもない出力量だった。玄武では受けきれられない。レンもすかさず朱雀を繰り出した。二つの朱雀は激しくぶつかり合い互いを喰らい尽くそうとする。力はほぼ互角かと思われたがトガの朱雀のほうが押していた。レンはふとトガのほうを見ると青天とは違う刀を下げていることがわかった。


「気づいたか、レン。オレは今や朱尺の持ち主でもある。」

「くっそぉぉぉ・・・」


レンはすかさず白虎をも繰り出していた。しかし、トガの朱雀はレンのニ神を喰らいレンに激突した。レンは玄武で直撃は避けたが、その場から吹き飛ばされてしまった。仰向けになったまま動かない。


「レン、お前はそんなもんじゃないはずだ。さっさと本気を出せ。でないと次で本当に殺すぞ。」


レンはひゅうひゅうと息を吐きながらこの後のことを考えていた。目的はロンの目論見を止めることだ。そのためにはトガをなんとかしなければならない。トガは敵だ。だがそう言い聞かせるもレンの心は結論を出せずにいた。トガを救いたい。その気持ちだけが今のレンを動かした。


「覚醒領域、癒風。」


突如レンとトガを旋風陣が包み込む。レンは癒風の効果により回復し立ち上がることができていた。


「ようやくやる気になったみたいだな。張魔も十分な大きさだ。どれ、そろそろ黄龍を打ってこい。」

「オレ、トガっさんを救いたい。だから先に謝っておく。これはトガっさんを壊す技じゃなく護る術だから。」


四神!とレンは叫ぶと、レンの四方に朱雀、白虎、玄武、青龍が飛び出す。それら四神はそのままトガを目掛けて勢いを増していく。トガは玄武を繰り出すも四神の勢いは止まらない。ついには玄武が砕けトガは四神を直撃する形となった。反撃の猶予を与えず、すかさず黄龍が顔をのぞかせる。はずだったが・・・


「黄龍が、降りてこない・・・?」

「ふーっ、さすがにオレも四神を発動していなかったらやばかったな。」


何が起きているのかわからなかった。それに身体が言うことをきかない。トガは身体中に刺青のようなアザが浮かびあがり、その四方には朧げではあるが四神が座しているのが見て取れた。


「オレも四神同時発動ができるのだよ。そしてそれができるということは黄龍も扱える。今四神を台座にしているのはこのオレだ。つまりオレ自身が黄龍となったわけだ。」


トガはそのまま正拳突きを放つと金色の龍が飛び出して来た。レンは我にかえり咄嗟に刀で防御を試みる。


「言っておくがオレの黄龍は相手を破壊する技だ。」


レンはそのままトガの黄龍に飲み込まれてしまった。

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