見出し画像

2024-03-11 四弦のリラ

●LEAF 0806 四弦のリラ

カンブリアンゲーム(ニューイヤーカンブリアン2024)

昭和49年(1974年)、NHK鶴岡放送劇団の定期公演で「祝典喜劇 ポセイドン仮面祭」というのが上演された。今日の画像は、この公演で使われた小道具のリラです。詩人が掻き鳴らした。

[ キャスト]
総督:伊藤宏
警察長官:佐藤正一
詩人:梅津芳春
道化:小池健治
白馬亭の主人:齋藤喜美雄
総督の秘書官:河田 豊
行政官:木村康博・木材英俊・佐藤富雄
議長:佐藤礼次郎
前鉱山監督官:齋藤喜美雄
抗夫:木村英俊・石沢長英
ジジ:庄司恵子
ミナ:小菅ふみ
乳母:奥泉美栄子
イポリッタ:佐藤よし子
[ スタッフ ]
演出:佐藤正一
舞監:齋藤泰広
装置:木村康博
照明:高橋朗
音楽:山沢昭彦
効果:河田豊
小道具:粕谷由紀子
衣装:斎藤カンナ
メイク:大塚二枝子
制作:清水三都子

このものがたりは
 みなさんようこそ私たちの住む島においで下さいました。今夜はちょうどこの大海原を司る神ポセイドンの怒りを静め、航海の無事を海の幸の豊饒を祈る年に一度のポセイドンの祭りです。島の住民たちは夜が明けるまで仮面をとってはなりません。この宵に恋をした若者は、身分違いであれ、何であれ、結婚がゆるされるしきたりです。それに言伝えによれば、この祭りの夜に結ばれた男女は、うまくいった場合、信じられぬ程の幸福を得るといいます。しかし不幸な場合だってずい分と多いのです。たとえば翌朝、仮面をはずして人違いとわかっても、その年は恋人をかえるわけにはいかないのです。
 総督の娘ジジと乳母の娘ミナは、乳姉妹、この2人も恋に恋するお年頃。
 賑やかな笑声と喚声のこだまする海神ポセイドンの祭り その夜、小さな島をゆるがす、 二つの事件! 策略にみちた 婚約、鉱山のクーデター・・・。
 華麗な仮面祭の光と闇のなかに、陰謀と野心の渦! さて、恋の行方は······。
 みなさん、この島の住人たちの浮かれよう、とくとごらん下さい。
 どうか、星の王子様のかわりにろばのような殿方を抱きしめたりしないよう、しっかり祈ってやって下さい。


辻邦生により書かれた「祝典喜劇ポセイドン仮面祭」は、1973年に新潮社から刊行され、翌、1974年1月に劇団四季により上演された。この時の演出は浅利慶太で、音楽は武満徹が書いた。

武満徹全集、第5巻、「舞台音楽」


昭和49年といえば、勤務地も山形になり、翌年稼動させたオンラインシステムの設計をやっていた頃で、音楽制作に割ける時間は無かった(公演が終わると、プログラムの作成のために東京に行くことになる)と思うんだけど、私は、この公演で使うための音楽を引受たのだった。ちょっと古風なメロディの曲を作り、リコーダーや打楽器を全部自分で演奏して、オープンリールに多重録音した。まー、よくやったもんだ。制作に使える時間は深夜のみ。全シーンの音楽が完成したのは、公演の前日だった。夜中に山形まで車で迎えにきてもらい、録音テープとオープンリールデッキを積んで鶴岡に向かった。なんとかリハーサルには間に合ったんだけど、この時に飲んだコーヒーの味は今でも忘れられない。疲れた時の甘い珈琲はことのほか美味い。

当時、劇団四季の公演のための音楽を、武満徹が書いたことは知らなかった(と思う)し、武満徹の曲がどんな感じの音楽だったのかは今もわからない。おもえば、私にとっては、かなり無謀なチャレンジだったような気もする。

そもそも「NHK鶴岡放送劇団」というのが過激だった。目標は劇団四季(を超える)だったんだと思うけど、劇団四季がやったものと同じものを同じ年に上演するなんていうところに、そのチャレンジ精神が表れている。

そんなことで、この「NHK鶴岡放送劇団」には、当地の過激な若者が集結していた。すべてが手作りだったから、大道具から小道具、音楽まで自分たちで作っていたのだ。

小道具のリラ(当然リラのような音は出せない)は、キャストやスタッフに名を連ねる河田くんが作ったものだ。私が、リラというのは、こんな感じの楽器だと説明したら、本当に作ってしまったのには驚いた。彼は、どんな大道具でも製作してみせたのだ。


実験音楽のアルバムを制作していた10年ほど前、演劇の音楽を作っていた頃を思い出し、古楽風の舞曲を作ってみたくなり試作した音源があります。演奏には「リコーダー」「プサルテリウム」「フィドル」など、中世ヨーロッパの民族音楽のような音色の楽器(SoundFont)を使いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?