【映画コラム】『グリーンルーム』はスリラーでありハードコア・パンク映画・アメリカン・カルチャー映画である

初出は2017年。

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2017年2月11日(土)、映画『グリーンルーム』が日本公開される。
新生『スター・トレック』シリーズでチェコフを演じたアントン・イェルチンが主演するこの作品。2016年6月19日に27歳の若さで亡くなった彼の最後の作品のひとつということで話題を呼んでいるが、実は音楽ファンにとってもきわめて興味深い作品である。
本作でアントンが演じているのは、ハードコア・パンク・バンド“エイント・ライツ”のベーシストだ。ライヴを行った後、楽屋で殺人を目撃してしまう。そしてライヴハウスのオーナーであるネオナチ集団と殺し合いになる...というストーリーだ。
エイント・ライツはワシントンDC出身のバンド。ワシントンDCといえばバッド・ブレインズやマイナー・スレット、フガジなどを輩出してきた豊潤なハードコア・シーンがあり、アントンも本作でマイナー・スレットのTシャツを着ている。ただエイント・ライツは活動がパッとせず、おんぼろのバンでガソリンを盗んだりしながらツアーしている。
目的地に着いたら主催者の都合でライヴが中止になったため、仕方なく付近のライヴハウスで振り替え公演を行うことになったが、そこはホワイト・パワー(白人至上主義)/ネオナチ御用達のクラブだった。生活のためにはライヴをやるしかない、しかしネオナチ思想には共鳴できない...ということで、彼らが演奏するのはデッド・ケネディーズの「ナチ・パンクス・ファック・オフ」。全員白人の観衆はバンドに対して敵意を丸出しにして、中指を突きつけたり物を投げつけたりする。
ライヴ後に楽屋に戻ると、バンドを迎えたのは頭から血を流す死体だった。見てはいけないものを見てしまった彼らはネオナチ集団(リーダーはやはり『スター・トレック』シリーズでおなじみのパトリック・スチュワート)に命を狙われ、楽屋に閉じこもった後、逆襲に転じるのだった。

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