【音楽コラム】動乱の時代のロック:「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」と「ルイ・ルイ」

副題:“ケネディ暗殺、湾岸戦争〜ヘヴィ・ロックは動乱の時代のBGMだ!”初出2001年。9.11直後でした。


「ルイ・ルイ」という曲をご存じだろうか。太川陽介の曲ではない(若い人はご存じないかも)。オリジナルは1956年、リチャード・ベリーによるヴァージョン。それ以来数多くのアーティストにカヴァーされてきたこの曲はモーターヘッドやイギー・ポップなども録音しているが、最も有名なのは1963年にザ・キングズメンがレコーディングしたものだろう。彼らのヴァージョンのギター・リフはキンクスの「ユー・リアリー・ゴット・ミー」に先駆ける史上初のヘヴィ・メタル・リフのひとつと言われているが、もうひとつロックの歴史において重要な特長があった。何を歌っているか分からなかったことである。

「ルイ・ルイ、オー・ベイビー〜」というコーラスで始まるこの曲の歌詞の内容は、今聴いても完全に聞き取ることが困難なもの。一説によると「ファック」という卑語が含まれていると言われ、その真偽を確かめるべくFBIが2年半に及ぶ調査を行ったというが、結局判定不能だった。1963年といえばビートルズやローリング・ストーンズが「不良だ」として社会問題になった年。「ファック」などと歌うのはもってのほか、という時代だったのである。

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