【ライヴ・レビュー】シャルルマーニュ・パレスタイン/2012年1月25日 渋谷WWW

初出はヤマハサイト。素晴らしいライヴでした。もうすぐ10年経つのですね...。

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ミニマル・ミュージックを代表する作曲家・演奏家、シャルルマーニュ・パレスタインが去る1月、来日公演を行った。ピアノ・ソロ作『Strumming Music』(1974)など数多くのアルバムを発表、40年以上第一線で活躍してきた彼だが、来日はこれが初めてだ。元映画館のライヴハウス『渋谷WWW』で座布団を敷いて座って観賞という変則的なスタイル、限定120人という形式で、”生ける伝説”の生演奏を体感するべく、会場はほぼ満員となっていた。

開場時間となり、観客が場内に入っていくと、ステージ上にはグランド・ピアノとMacBook、ホテルの受付などにある呼び鈴が十数個。MacBookからはドローン風のサウンドが流れている。その周囲にはぬいぐるみが幾つも置かれている。そしてそこには、コニャックのグラスを手にした男性がいた。誰あろう、シャルルマーニュ・パレスタイン本人だった。

まだ開演予定時刻まで1時間あるというのに、何故かステージにいたパレスタインは、微笑みながらコニャックを口にしたり、観客をビデオで撮ったり、その場の空気を楽しんでいるようだ。そして19時ちょうどになると、観客2人に大きめのコニャック・グラスを渡し、グラスの口を指でグルグル触るように指示する。2つのグラスが出す音がハーモニーを生み出し、まだ彼がピアノに触れてすらいないにも関わらず、荘厳な空気が拡がっていく。

「これは私が公演の前にやる儀式なのです」という解説を挟んで、彼はピアノに向かう。その演奏は最初は穏やかに奏でながら、徐々に激しさを増していく。まるで打楽器のように鍵盤を叩き続けることで、両手の指が出す音が共鳴しあい、弾かれざる”第三の音”が聞こえてくる。『Strumming Music』の世界が再現される70分に、観客は固唾を呑みながら、聞こえる筈のない音に聴きしれるのだった。

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