【音楽コラム】爆走ロックンロール魂は永遠に ピーター・パン・スピードロック『Buckle Up & Shove It!』

初出は2014年のヤマハサイト。この後に来日が実現して嬉しかった!

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20世紀の終わり、ひとつの爆走ムーヴメントがあった。メタルもガレージもパンクも猛スピードで吹っ飛ばし、歌う内容はセックス!アルコール!ケンカ!ロックンロール!デリカシーも何もあったものではない粗暴なサウンドが、世界を席巻したのである。
“爆走ロックンロール”に明確な定義があったわけではなく、その音楽性と同じくきわめて大雑把なジャンル分けだったが、ひとつの基準となったのが、自らが“爆走系”だったエレクトリック・フランケンシュタインのサル・カンゾニエリが編集したコンピレーション『A Fistful Of Rock’n’Roll』だった。全13集からなるこのコンピレーションだが、収録するべきバンドが多すぎて、最後の『Vol.13』は在庫一挙放出の3枚組となってしまったというテキトウさ・過剰さも、音楽性にマッチしていた。
収録されたのは全321組、それぞれ1曲ずつ。ヘラコプターズやターボネグロ、スーパーサッカーズ、ジーク、ドワーヴズ、グルシファー、アンティシーン、パフボール、フレイミング・サイドバーンズといった定番爆走系バンドから、フー・マンチュー、セラピー?、ジェフ・ダールなどジャンルの枠を押し広げるアーティストまで、全編血湧き肉躍るロックンロールの殴打連発で、入門編と呼ぶには消耗度が高すぎる超巨編だった。
1997年から2007年、5つのレーベルを跨いで発表されたこのコンピレーションは成功を収め、カンゾニエリも第2弾シリーズ『A Fistful More Of Rock’n’Roll』を出す!と息巻いていたが、爆走シーンは急激に失速。シーンを代表する大物バンドが登場せず、有望な新人バンドも減り、『A Fistful〜』参加バンドも次々と解散していった。

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