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オバァ自慢のゴーヤチャンプル

沖縄以外の土地でも、最近はゴーヤチャンプルが一般的になってきました。
私が幼い頃は、ゴーヤではなく苦瓜と呼び。
祖父などは、味噌煮にして佃煮の様にして食べていました。
私のイメージは、祖父の大好物だったゴーヤの佃煮でした。
今も、時々自宅で作ることもあります。

しかし、今我が家で一番良く作るのはゴーヤのサラダと何よりもタイトルにあるゴーヤチャンプルです。当然ですが、私が夫の転勤に伴われて宮古島に赴任した20年程前にはゴーヤチャンプルというメニューは聞いた事があるけれど。実態としては「沖縄料理でしょ」レベルの認識が一般的な時代でした。

沖縄に赴任した20代後半、前の記事にも書いたとおり宮古島のオバアに可愛がって貰っていました。そう、その日もオバアから電話が入ったのです。

「ゆきさん、今日はゴーヤが沢山採れました食べますか」
ゴーヤは、余りにも普通に食べられていて、色々な所から貰う物です。
もしかすると、要らないかも知れない。
オバアはそう思ったのか、いつもより押しが弱かったのを覚えています。

「ゴーヤですか、そんなに沢山要らないですが貰いに伺って良いですか」
「あら、良かったです。誰も欲しがらないので困っていた所ですよ」

受話器を置いた後、バイクに跨がり早速オバアのお宅にお邪魔しました。

「こんにちは!」
玄関を入ると「まあ、早かったですね」と満面の笑みで向かえてくれました。座卓の上には新聞紙が広げて敷かれており、大量のゴーヤの山。

確かに・・・これは、貰って貰えないと困るだろうな。

私は心の中で、苦笑いしたのです。

「何本貰って貰えますか」
大きなスーパーのレジ袋を手に、台所から出て来たオバアは答えを聞く前に5~6本素早く入れてしまう。
「あっ、そんなに必要無いです。今入れてくださっただけで、十分です」
焦る私に首を傾げると
「ゴーヤは嫌いですか」
「いえ、好きですけれど。チャンプルーを連続で食べるのはちょっと・・・」

私がそう言うと、楽しそうに笑い飛ばして座卓の前に座ると座布団を自分の横に置き、ポンポンと座布団を触ってニッコリ笑います。

ここにいらっしゃい、という意味です。
どうやら、今日はゴーヤのレシピを教えて貰えそうです。

「ゆきさん、貴女のちゃんぷるーは、どうやって作りますか」
「えっと、ゴーヤを半分に切って。ワタと種を取り除いて、薄く切って焼く。お肉と、彩りに人参を入れて火が通ったら塩胡椒をして。味付けに麺つゆを使います。最後に、鍋端から香り付けに醤油少々。
溶き卵を回し入れて、有る程度固まったら出来上がりです。
ゴーヤ苦そうなら、砂糖かみりんも足すこともあります」

オバアは、眉をひそめてため息を付く。
「あの、何か変でしたか」
「ゆきさん、それはごーやちゃんぷるー違いますね。単なるゴーヤの野菜炒めでは無いですか。沖縄はそんな、トンチンカンな味付けはしませんよ。
内地の炒め物は、そういう味にするのですね」
「は、はあ・・・」
「だいたい、麺つゆなんて物は沖縄ではありえません。日本蕎麦は食べないのは、ゆきさんもご存じですよね。沖縄そばは食べますけれどね」
「ああ、そう言われれば」
「最近の若い人は、ごーやちゃんぷるーの素などという『謎な物』を使っている方が多くなりましてね。それが普通になってしまうと、貴女の様な味付けが普通になる可能性はありますね。
普通というのは、大多数が認識する物のことですから。ごーやちゃんぷるーの素には、色々な物が入っていて私には理解ができませんね。きっと、私たちの年代は同じ様に感じると思います」
「じゃあ、私の味付けみたいに作る人もいるってことですか」
「居ないとは言わないですね、私はそれはちゃんぷるーとは思いませんが」
「じゃあ、オバアはどうやってチャンプルを作るのですか」
「貴女は、ナイチャーですし。ちゃんぷるーを知らなくて当然です。他のゴーヤのレシピも知らないでしょう。では、今日はゴーヤお料理教室にしましょうか。少し待ってくださいね」
オバアは立ち上がると、台所の新聞の山の横から裏が白い広告を取り。電話の横に立てられてペンを取り私に手渡しました。

さあ、オバァ自慢のゴーヤチャンプルと、ゴーヤレシピのお料理教室開始です。このレシピ、今でもそのままお料理しています。
オバアのレシピは、基本分量はありません。
少しだけ工夫すれば、味は再現できますよ。
皆さんも、お試しくださいね。では参りましょう。

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