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水素社会へのカギ!液体水素について

今回は液体水素についてのお話です。水素社会実現のため、キーとなりうるエネルギーです。

液体水素の基本情報

液体水素は、その名の通り液化した水素のことです。水素を-253度という極低温にすることで水素は液化し、体積がおよそ800分の1になります。

今まではロケット燃料などが主な利用方法でした。最近では工業分野での利用も徐々に広がっており、注目を浴びる存在になっています。

液体水素のメリット

液体水素のメリットとしては、主に以下の3つが注目ポイントです。

  • 高い輸送効率

  • 高いエネルギー密度

  • 水素ステーションが小型化できる

高い輸送効率

液体水素は気体時と比べて、非常に輸送効率が高くなります。体積がおよそ800分の1になるため、1度の輸送でより多くの水素を運べるのです。水素社会を実現するためには、効率よく水素を流通させることが不可欠。
カーボンニュートラルが脚光を浴びる今、液体水素が注目されるのもうなずけます。とはいえ、-253度という極低温をキープするのは簡単ではないので、技術の開発が待たれます。

液体水素輸送の現状として、川崎重工さんが「すいそ ふろんてぃあ」という液体水素運搬船を実証実験中。こちらの船ではFCV1.5万台に相当する水素を運搬できるとのこと。ワクワクしますね。

高いエネルギー密度

現在の水素自動車は気体水素を用いていますが、燃料が液体水素になれば航続距離が伸びると期待されています。その理由は、液体水素が高いエネルギー密度を保有しているため。密度はガソリンよりも高いのです。(水素:142MJ/kg、 ガソリン:49MJ/kg)
航続距離が長くなれば、水素自動車のさらなる発展にも期待がかかります。

しかし、液体をキープするのは困難という事実も無視できません。2月の耐久レースで参戦予定の液体水素GRカローラは、魔法瓶方式で対応する予定のようです。

水素ステーションが小型化できる

液体水素を使用すれば、水素ステーションが小型化できるのもメリット。液体水素を使用する水素ステーションは2パターンあり、いずれも気体水素を扱うステーションよりもコンパクトになっています。
パターン①:液体水素を気化させて、圧縮機で昇圧するタイプのステーション
パターン②:液体水素ポンプを使用し、液体のまま高圧にしてから気化するタイプのステーション
小型化できるワケをお話しますね。

まずは①のケース。
なぜステーションをコンパクトにできるかというと、液体水素のタンクは縦に設置でき、敷地を小さくできるため。気体水素のカードルやローリーは横置きなので大きな敷地が必要でしたが、縦置きにできることでステーションが小型化します。

続いて②のケース。
こちらは①よりさらにコンパクトに。液体水素ポンプを使って液体のまま昇圧するため、気体用の圧縮機が不要になるのです。圧縮機分のスペースも空くため、非常にコンパクトになります。
しかし②のステーションには「液体のまま昇圧する困難さ」「水素のロスが多い」という明確な課題も。
液体のまま昇圧するとはいえ、低圧のまま気化してしまうものや、ポンプ内で気化してしまう水素も。これらは全てロスになります。

液体水素ポンプを使用しているステーションは、液体水素を気体にはできても気体を液体にする手段を持たないため、これらの水素は全て放散するしかないのです。

液体水素のデメリット

液体水素のデメリットはやはり高いコスト。
今後水素社会が実現していくと、流通を活性化させなければなりません。輸送手段も多様化するでしょう。
そうなると、-253度の極低温をキープできる優れた構造を持った運搬容器が大量に必要です。この容器はかなり高コストになると考えられます。加えて水素を液化すること自体もかなりの高コストです。

運搬における現状の対策としては、アンモニアとして水素を運搬する方法がとられています。アンモニアは大量に生産されているうえ、輸送コストも抑えられるのが大きなポイント。水素社会にとって重要になるでしょう。

コストの問題は一発解決とはいかないと思いますが、乗り越えていってくれると期待しています。

液体水素の製造

液体水素は2つの方法で製造されています。
①電気式クーラーで冷却
②液化天然ガスの冷熱を使う

①の方法はかなりコストがかかってしまうのが懸念点。

②はハイドロエッジが取っている方法で、コストを大幅に削減できています。
プロセスは次の通りです。

  • 空気から分離した酸素・窒素・アルゴンを冷却し、液化

  • -196度の液化窒素の冷熱を利用し、水素を冷却

  • ここからクーラーで冷却

冷熱で水素を冷やしていくことで、クーラーの使用時間が減り、コストを削減できているのです。なお、液体水素の製造は全て岩谷産業が担っています。

  • 岩谷瓦斯千葉工場(千葉県市原市)

  • ハイドロエッジ(大阪府堺市)

  • 山口リキッドハイドロジェン(山口県周南市)

この3拠点で国内の液体水素製造をまかなっているのです。2021年には3年以内をめどに新たな液体水素製造拠点を関東に作ると、岩谷産業が発表しています。

液体水素の利用方法

液体水素はロケットや半導体をはじめ、産業でも使用され始めています。
ですが、ここではやはり「自動車」に焦点を当てて、お話をしたいと思います。

2月に富士スピードウェイで開催されるスーパー耐久レースで、液体水素を燃料として走行する「液体水素GRカローラ」が参戦予定です。
液体水素を燃料として走行する車のメリットとしては、次のことが考えられます。

  • 環境にやさしい

  • 気体水素よりも長い航続距離が見込める

  • 連続充填が可能に

環境にやさしい

これは今更言うまでもないでしょう。走行時にCO2を排出しない究極のエコカーです。

気体水素よりも長い航続距離が見込める

先ほどもチラッと申しましたが、液体水素は非常に高いエネルギー密度を有しているので、従来のFCVよりも長い航続距離が期待できます。
ガソリンよりもエネルギー密度が高いため、スーパー耐久レースではガソリン車に引けを取らない、互角以上の走りを見せてくれるかもしれません。

連続充填が可能

MIRAIを充填しに行くと、充填できるまでしばらく待った経験はありませんか?差圧式充填のステーションでは水素を70Mpaまで昇圧する時間が必要なため、続けて充填する際には10分ほど待つ時間が発生するのです。液体水素燃料であれば昇圧が不要なため、長い待ち時間は発生しないでしょう。

液体水素を燃料にした車が街中を走る日はまだ遠いかもしれません。しかし、脱炭素に大きく役立つものであることは疑いようもありません。一般販売にむけてがんばってほしいです。販売された暁にはぜひ乗りたいですし、普及もがんばります。

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