NFTアートの売買と税金~個人に対する課税の場面と方法
■NFTアートの唯一無二性と市場の形成
2021年はNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)が大きな注目を浴びました。NFTはブロックチェーン上で偽造不可能な証明書を付すことにより、デジタルデータの唯一無二性を確保し、その資産価値を担保することで、売買などの取引を可能とする技術です。デジタルデータは容易にコピーや改竄が可能であるため、現物のアートのような資産価値を生み出しづらかったところ、デジタルアートがNFT化され、高値を付けたNFT作品がしばしば業界の話題をさらいました。現物とデジタルアートを組み合わせて販売する方法等様々な形態も登場するなど、市場が活発化しています。
■NFTアートで損益が生じる3つの場面
① NFTアートのプライマリマーケットにおける購入
NFTアートを購入する際、ETHなどの暗号資産で決済した場合には決済時の損益を認識します。ここで生じた決済損益は当事者が個人の場合、雑所得に区分して確定申告を行います。
(例)NFTアート作品を1ETHで購入する。
ETHの取得時レートは1ETH=30万円、決済時レートは1ETH=50万円
★決済損益・・NFTの購入額50万円ー決済に使用した暗号資産の取得原価30万円=20万円
② NFTアートのプライマリーマーケットにおける販売
NFTアートを販売する際、ETHなどの暗号資産を取得した場合には、販売時の暗号資産の時価で収益を認識します。
(例) NFTアート作品を1ETHで販売する。販売時のETHのレートは1ETH=30万円 ★売却収益・・NFTの時価30万円
NFTはアートの販売収益は、当該販売活動が当事者個人の本業であれば通常事業所得、その他であれば雑所得に分類するものと考えます。NFTアートの制作の他、ETHのガス代など発行に必要な支出はNFTアートの販売と関連して費用化が可能なものと考えます。
NFTアートの販売で得た暗号資産を円転した場合、時価変動に伴う損益を認識します。この損益は雑所得に区分して確定申告を行います。
(例) 1ETHを円転する。ETHの取得時のレートは1ETH=30万円、円転時のレートは1ETH=50万円
★決済損益・・円転時50万円ー取得時30万円=20万円
③ NFTアートのセカンダリーマーケットにおける転売
NFTアート転売時に取得した暗号資産とNFTアート取得時に支出した暗号資産の差額を売買損益として認識します。この売買損益の所得区分は2021年12月現在の制度上取扱いは定まっていません。暗号資産の取扱い同様、原則雑所得扱いになるのではないか?といった説もありますが、私は以下の理由で原則譲渡所得(総合課税)扱いが適当と考えています。
(理由) 非代替性という性質を併せ持つNFTアートには、唯一無二の一点物としての性質があり、この性質は現物のアートの性質と類似するため、現物のアートの売却時の税金の取扱いと同等になって然るべきと考えられるからです。
参考:【現物のアートを売却する際の税金について 】
※ただし上記取扱いに関わらず、反復継続的な売買がある場合には事業所得または雑所得として取り扱いますので、注意が必要です。
(例)1ETHで購入したNFTアート作品を2ETHで転売する。購入時レートは1ETH=30万円、売却時レートは1ETH=50万円
★売買損益・・売却額2ETH(100万円)ー購入額1ETH(30万円)=70万円
■ NFTアートと消費税
消費税法上、暗号資産の譲渡は支払手段等の譲渡に該当し、非課税とされています。しかし前述の通りNFTと暗号資産は性質が異なるため、別個に考える必要があります。消費税法においては、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等(資産の譲渡および貸付ならびに役務の提供)に対して消費税が課税されます。NFTアートが現物のアート同様、一点ものの資産としての性質を持つ以上、国内で販売・購入されたものは、上記の資産の譲渡等にあたり、課税取引として考えるのが自然だと考えます。
(注)あくまでNFTアートの性質理解に基づく筆者の個人的予測であり、こちらは国税庁が公表している取り扱いではない点にご留意ください。また、 今後公表される取扱い内容を保証するものでもありません。
※アートコレクター向けサービス Yamauchi Accounting Office