【解説】遊戯王OCG シングル戦10勝RTA 00:17:32【天盃龍】
はじめに
はい、よーいスタート
こんにちは。やまきゃです。
好きなRTA動画は「スーパーマリオ64 16枚RTA 14:59:33」(sm36853260)
今回走るのは遊戯王というカードゲームで10回勝利するまでの時間を競うタイムアタックです。マスタールール4。リミットレギュレーション遵守。
使用するのは【天盃龍】。たぶんこれが一番早いと思います。
【天盃龍】とは
【天盃龍】は2024年1月末に発売されたレガシー・オブ・デストラクションで登場したテーマです。
同パックでは【光の黄金棺】や【蕾禍】などが初登場したほか、【ライトロード】の新規や《幻惑の見習い魔術師》が登場し環境にも少なからず影響を与えました。
まあそれも、【天盃龍】に比べれば微々たるものなんですけどね。
【天盃龍】は登場した瞬間からその極端な人間ぶっ◯し性能の高さを評価されていましたが、研究が進むにつれてその実践的強さが明らかとなりしばらくすると大流行。単なる地雷デッキではなく、実用的な後攻ワンキルテーマとして活躍します。
記念すべき10回目となるYCSJ2024東京大会では惜しくも2位となりましたが、それでもそのシングル戦適正を証明するに至りました。
そんな【天盃龍】。具体的にはどのように強いと言うのでしょうか?
【天盃龍】の特徴・ギミック
テーマカードの特徴
【天盃龍】はワンキルテーマです。なのでテーマカードはとにかくどうやって人を殴り倒すかというのに特化しています。
基本的にテーマカードのほとんどが1枚初動であり、また1枚から過剰ともいえる戦闘ダメージを生み出すことが出来るのが特徴的です。
中でも最大の特徴として、【天盃龍】の下級モンスターはバトルフェイズ中にフリーチェーンでシンクロ召喚を行うことができ、【天盃龍】のシンクロモンスターは3回以上モンスターが殴ったターンに墓地からフリチェで蘇生します。
これによってメインフェイズに大型モンスターを並べてバトルフェイズへ…というのではなく、バトルフェイズ中にシンクロモンスターをポンポン生み出し、そのシンクロモンスターでさらに対戦相手をボコボコ死ぬまで殴れるというわけです。
メインモンスター
《天盃龍パイドラ》
1枚で人を◯せます。
NS、SS時に「燦幻」魔法罠カードをサーチします。通ったら相手は死にます。なぜなら燦幻魔法カードというものは全て命を刈り取る形をしているからです。
サーチだけではなくセット出来るということはしっかり覚えておいてください。
ドロールケアのため、フィールド魔法である燦幻荘を持ってくる場合は基本セットが無難です。
戦闘ダメージを0にする効果は地味ながら役に立ちます。【天盃龍】はテーマの動きとして相手の高打点や反射持ちモンスターにも殴りかからなければならないシチュエーションがよくあるためです。
ちなみにですが、天盃龍のシンクロ効果に同名ターン1はありません。出し直しが可能であれば何回でも使うことができます。
またこの効果はフリーチェーンのため、BP中にセットしてある《無限泡影》などを打たれても天盃ネームが横並びしていれば簡単に回避することができます。天盃の基本テクニックです。
《天盃龍チュンドラ》
1枚で人を◯せます。
【天盃龍】において”純粋な”下級チューナーはこいつだけなので、基本的にこいつが盤面に出なければ何も始まりません。
天盃龍のカードは基本的に1枚で人を◯せるとはいいますが、それはチュンドラにつながるカードであるからです。チュンドラはそれほどに大事です。
自分場に炎ドラゴンがいれば手札からSSできる効果と、戦闘するダメステ開始時にデッキからチュンドラ以外の星4以下炎ドラゴンをリクルートする効果があります。
ダメージステップにモンスターをリクルートするために《灰流うらら》を打つことが出来ず、最強の誘発受け性能をしています。
たとえば、対戦相手が召喚したこいつに無限なりヴェーラーの無効誘発をなげて奇跡的にターンが返ってきたとしましょう。
そのとき、もしチュンドラを戦闘以外で処理できない場合はめちゃヤバです。
チュンドラに殴りかかった場合当然②の効果が誘発するので、パイドラなどが出てきてリソース回収をされたり、ファドラが出てきて戦闘破壊を封じてきたりします。場合によってはそのままシンクロ召喚までされてしまいます。
なので基本的にチュンドラに対し無対策で戦闘を仕掛けるということはできません。
かといって放置すれば、相手ターンに再び殴りかかってきて②によって展開してくるのです。
そのため、チュンドラというカードはただそこに存在するだけで展開の起爆剤であり、リソースそのものであるのです。
《天盃龍ファドラ》
1枚では人を◯せません。
NS、SS時と戦闘を行うダメステ開始時に墓地から星4以下炎ドラゴンを蘇生できます。
チュンドラと違って殴らずとも横展開ができるので、メインフェイズ中にシンクロ召喚を行う場合などに重宝します。
もちろんバトルフェイズ中に使っても強力。
こいつがいると炎ドラゴンが戦闘で破壊されなくなるので、チュンドラでこいつを呼べばチュンドラは自爆特攻だろうと死ななくなりますし、そもそも純粋に壁として役に立ちます。
チュンドラと違って手札からSSする効果がなく、また展開の起点とならないこのカードは採用枚数を控えめにすることが多く、また素引きすると非常に困ります。
《幻禄の天盃龍》
1枚で人を◯せます。
完全フリーチェーンでリリースすることでデッキから元禄以外の天盃龍を呼ぶことができるので、こいつはパイドラでありチュンドラ。つまりワンキルドラゴンです。
何らかの方法で手札に加わるとSSできるいわゆるポプルス効果をもち、任意でレベルを1上げることが出来ます。これが本当に強い。
シンプルに手数を増やしてくれます。
たとえば相手ターンに《深淵の獣マグナムート》を出して、エンドフェイズにこのカードをサーチするとします。
そうすると幻禄はそのままssでき、②によってさらにデッキからパイドラをss。ヴェーラーや泡をケアしつつ燦幻荘か開門を持った状態でターンをスタートできます。
あるいは手札にファドラを抱えてしまっている場合、ファドラはそのままだと盤面に出せませんがバトルフェイズに《燦幻開門》を発動することで元禄をサーチしながらファドラを手からssすることができ、そのまま幻禄も自身の効果で出せるので、両方のssが可能になります。
なお、この方法で出すと強制でチューナーになることだけ注意しましょう。
魔法カード
《盃満ちる燦幻荘》
1枚で人を◯せます。
置いてあると、メインフェイズ1の間自分の炎ドラゴンが「相手の発動した効果を受けなくなる」と書いてあります。
そんなこと許されるわけがありませんけどね。
《半魔導帯域》とか《SPYRAL RESORT》の比ではありません。狂ってます。
貼った瞬間にパイドラに無限もヴェーラーも効かなくなるし、ニビルでリリースされることもありません。
【R-ACE】の罠カードも全部効かなくなるし、《賜炎の咎姫》で破壊することも出来ません。
《超融合》すら効きません。もう全部効きません。あなたの妨害はぜーんぶ紙くずです。
まあそれだけなら良いんですよ。【天盃龍】は殴るワンキルテーマなので絶対にバトルフェイズを行う必要があります。だったらバトルフェイズ中に除去なり打てばいい話ですから。
「バトルフェイズ中に効果を発動出来るのなら」 ね。
起動効果で天盃龍をサーチ可能、その後手札を1枚捨てます。
手札コストがあるとかないとかどうでもいいです。どうせチュンドラパイドラでキルです。
③はバトルフェイズに破壊されると、自分のドラゴン族シンクロモンスター1体の打点を2倍にする効果。基本的に《トライデント・ドラギオン》を6000打点にして3回殴らせます。とうぜん相手は死にます。
もしも燦幻荘とパイドラを両方もっている場合、燦幻荘の起動効果よりも先にパイドラを召喚して安全に効果を通すと良いでしょう。うさぎヴェーラーの2枚持ちを貫通できます。
《燦幻開門》
1枚人◯。
・デッキから星4以下の炎ドラゴンをサーチする
・手札から炎ドラゴンをSSする
この2つの効果からどちらかを使うことができ、バトルフェイズ中に発動したなら両方を使用できる速攻魔法です。
パイドラチュンドラをサーチするカードなので当然のようにワンキルカードです。が、それよりも妨害を貫通して天盃龍を追加出力できるカードとしての価値があります。
チュンドラのSS条件に自分場の炎ドラゴンを要求しているように、【天盃龍】は基本的に着地狩りに弱いです。
なので、パイドラへの召喚権などを《神の宣告》などで潰された場合、追加の一手としてのこのカードがはちゃめちゃに重要なわけです。
バトルフェイズにつかえば実質的なリクルートカードですが、もしも手札にダブついて使えない天盃龍があった場合はそれをSSしサーチを元禄にすることで2体のモンスターを出力することも可能です。
シンクロモンスター
《燦幻昇龍バイデント・ドラギオン》
7シンクロ。
S召喚成功時に墓地の炎ドラゴンを蘇生します。つまり下級天盃龍を蘇生することでもう一回シンクロできます。
一応ドラゴン縛りが付くので気をつけてください。天盃龍のS効果はシンクロ先を指定していないのでバロネスを立てたい時とかにたま~に困ります。
3回以上モンスターが殴ったターンにフリチェで蘇生でき、おまけで場の魔法罠を破壊できます。
だいたいこいつを出すことに成功したなら3回人をどつけてるとは思います。
オマケの魔法罠破壊は結構普通に助けられることがあります。例えばユベルの《ナイトメア・ペイン》なんかはこいつに割ってもらう必要がありますし、ハードルは高いですが《超古代生物の墓場》とかもなんとかしてくれます。
《燦幻超龍トランセンド・ドラギオン》
10シンクロ。
S召喚成功時に相手モンスターを強制で縦にします。《マシュマロン》がいようと関係なく殴り倒してライフを取り切れるというわけです。
まあこれはまだいいです。
さて、大問題なのが②。
トランがいる限り、相手のモンスターは全て強制で攻撃しなければならず、相手はバトルフェイズに一切の効果を発動出来ません。
思い出してみてください。【天盃龍】は燦幻荘によってメインフェイズ1の間一切の効果を受け付けなかったはずです。
では、このモンスターがメインフェイズ1で成立してしまった場合はどうなるでしょうか?
はいそうです。何一つ出来ないんです。
メインフェイズからバトルフェイズに移行する瞬間の隙間なんてものはありません。メイン終了を了承した瞬間にあなたは何も出来なくなります。
たとえ《灰流うらら》を持っていたとしても、《燦幻開門》を止めることは出来ません。死が確定します。
《無限泡影》をセットし、手札に《灰流うらら》《増殖するG》《原始生命体ニビル》《エフェクト・ヴェーラー》などを抱えていたとしても、燦幻荘スタートからメインフェイズにこのトランセンドが成立した瞬間ゲームエンドです。
基本維持するのが良いモンスターですが、こいつもバイデント同様蘇生効果があるので、覚えておくと役に立つかもしれません。
《トライデント・ドラギオン》
レベル10シンクロ。懐かしいですね。
今更特筆することもないですが、このカードが天盃龍におけるフィニッシャーであり連続攻撃と燦幻荘の打点倍加によって合計18000の超火力を叩き込みます。
【天盃龍】の基礎キルルート
基本的にはパイドラ、チュンドラ、ファドラを揃えて大三元を狙うイメージで展開していきます。
フィニッシュにはトランセンドドラギオンとトライデントドラギオンを絡ませるよう意識し、逆算しながら展開すると良いでしょう。
パイドラ1枚
パイドラを召喚。効果で燦幻荘をサーチ。
そのまま燦幻荘を発動し、チュンドラをサーチ。チュンドラを自身の効果でSSします。
そのままバトルフェイズへ。
チュンドラで相手のモンスターに攻撃。ダメージステップにデッキからファドラを呼びます。この時パイドラファドラがいるので戦闘ダメージは0ですしチュンドラも戦闘で破壊されません。
その後、全員でテキトーにどついたらチュンドラでシンクロ召喚効果。パイドラとバイデントドラギオンをS召喚します。
そのままバイデントの効果でパイドラを蘇生。
バイデントとパイドラでどつき、その後パイドラのシンクロ効果をつかいバイデントとパイドラでトランセンドドラギオンをS召喚。これ以降相手は一切身動きができません。
どう考えても3回以上殴ってるので、墓地のバイデント効果で蘇生。バイデントで殴ったらファドラ効果でパイドラも吊り上げます。
そうしたらファドラのシンクロ効果で蘇生したバイデントとトライデントドラギオンをシンクロ。
トライデント効果で燦幻荘とファドラを破壊し3回攻撃可能に、そのまま燦幻荘の効果でトライデントの攻撃力を倍にすれば6000の3回攻撃。相手は死にます。
合計32700ダメージ。金満を打っても余裕ですね。
チュンドラ1枚
チュンドラ召喚!そのままバトルフェイズへ。
チュンドラで殴ってダメステにパイドラを呼びます。
そのままパイドラで開門をサーチ。そのまま開門を発動しファドラss。
白發中揃ったのであとはパイドラ1枚と同じ流れでトライデントまで行けます。3000×3パンチ。
べつに燦幻荘がなくたって人は死にます。誘発をケアしてトライデントを2回攻撃にしたとしても合計20700ダメージです。
パイドラ+開門
燦幻荘からチュンドラまではパイドラ1枚と同じですが、ここでバトルフェイズに入らずに2枚でバイデントを作ります。
バイデントの効果でパイドラを蘇生。そのままトランセンドを作るとトランセンドによって相手がバトルフェイズに効果を使えない状態でバトルフェイズに入れます。
バトルフェイズに開門からファドラ。ファドラでパイドラ蘇生。
3体で殴ればバイデントの蘇生条件を満たすので、バイデントを蘇生しそのままファドラとトライデントドラギオン。6000の3回攻撃で相手は死にます。26900ダメージです。
【天盃龍】がなぜ強いのか
1枚から人を◯せるカードが多すぎる
そうです。1枚からデュエルに勝利できるカードの枚数が多すぎます。
パイドラ、チュンドラ、燦幻荘、開門。これだけでも12枚。元禄まで合わせれば最大15枚です。
これぜーんぶ、どれか1枚引けばデュエルに勝てます。
ファドラをのぞくギミック内の全カードが1枚から対面をキルできるだけのパワーを有しており、これによって安定して後手ワンキルを可能にしつつ、それを通すための手札誘発や汎用捲り札を存分に採用することができます。しかも引きたくないギミック札というのもファドラ以外まったくありません。
これがまずワンポイントです。
構築のしやすさというのが一級品。初動を安定させる外部ギミックなんて一切必要ありません。
初動被りが手数になる
初動が多ければ多いほど良いというわけではありません。遊戯王には召喚権という概念があるからです。
【センチュリオン】というデッキは初動枚数が非常に多いデッキですが、そのうちプリメラおよびトゥルーデアは召喚権を必要とする初動であるため、手札で被ると同一ターンには手数になりません。いわゆる召喚権をケンカするというやつです。
じゃあ天盃は?というとチュンドラは手からSS可能であり、燦幻荘も元禄をサーチすれば手数になり、開門については説明不要でしょう。
そう、同名カード被りでもない限りは【天盃龍】のギミックカードを引くことは基本手数になるのです。
それ故に、体感としてパイドラやチュンドラに無効系誘発を投げて通ったとしても簡単に貫通されてしまうということが少なくありません。
再現性の高いワンキル
後手ワンキルを通すためには先行側が作る妨害を乗り越える必要があります。
後手ワンキルデッキはその課題をクリアするために、ワンキルを可能にするキーカードと汎用の捲り札や誘発をバランスよく引かなければなりません。
ですが従来の後手デッキ(いわゆる【ヌメロン】だとか【激臨ワンキル】)はその「ワンキルを可能にするカード」の枚数の少なさから都合の良い引き方をすることが難しく、その不安定さから実戦レベルの実用性という点で評価されていません。
これに対し【天盃龍】はこの「ワンキルを可能にするキーカード」の枚数が多すぎるので、「誘発や捲り札とワンキルカードを都合良く引く」ことの再現性が非常に高いのです。
このような構築が可能なおかげで、初動と誘発以外の使えないカードを引いてしまう確率というのがほぼありません。すべてが有効札です。
つまり【天盃龍】は「都合の良い引きをしている」確率が非常に高いデッキなのです。
「引きが強い」というのはカードゲームにおいて最強であり、特にターンを跨がずドローする機会の少ない現代遊戯王においてはそれが顕著です。
誘発耐性が良すぎる
例として、燦幻荘は貼るだけでパイドラやチュンドラなどに対する無効誘発をケアしてしまいます。
そしてチュンドラはダメージステップにデッキから天盃龍を呼ぶため、うららを打つことができません。
また呼ばれたのがパイドラの場合、パイドラのサーチもダメステに発動するのでここにも打てません。
パイドラチュンドラが揃った場合、バトルフェイズ中にシンクロすることでバイデント→トランセンドまで確定するため、結局パイドラでサーチした開門に打つこともできません。
このように、ある一定のラインまで通ればそれ以降は誘発や妨害というものを一切気にしなくても良いというのが【天盃龍】最大の強み。
誘発で展開を止められても手札に抱えた誘発でターンを返してもらえるというのが現代遊戯王あるあるですが、それをさせてくれません。
よく「バカでも使える」と評されるのはこういうこと。アクセルの踏み方さえ知っていれば止められる心配が一切無いのです。
増殖するGも無視できる
よーく考えてみてください。
燦幻荘さえ貼ればヴェーラーやニビルは効かないし、これらはバトルフェイズに入ってしまえば撃てません。
トランセンドが立てばビーステッドなども投げれません。
例え何枚ドローされてもライフポイントを削りきれば問題ありません。
じゃあ《増殖するG》を打たれても止まる必要はないですよね?
そう、これも【天盃龍】の強さの一つ。Gなんてどーでもいいんです。
何枚引かれようが誘発は全部効かないし打てないし相手のターンなんて帰ってきませんから何枚引かれても構いやしません。
出来ることにも幅がある
【天盃龍】。実はあんまり縛りがつきません。バイデントのドラゴン縛りくらいです。
シンクロ先も必ずトランセンドである必要はなく、ワンキルが阻止されるというのならバロネスやディスパテルで蓋をすることだってできます。
リンクモンスターも好きに使えちゃいますから、別に《次元障壁》を受けてもリトルナイトは使えますし咎姫ジーランティスとかもできちゃうわけです。下手したら誘発だけで咎姫を作られて殺されます。
【ヌメロン】や激臨ワンキルと違い重い縛りもなにもないためにやることは単調ではなく、ただのワンキルデッキだと思っていると痛い目を見ます。
構築段階で既に優位である
遊戯王OCGというものは基本的にマッチ戦です。シングルゲーム3本のうち2本先取で勝利。1本目のみじゃんけんで先後を決定し、2本目以降は直前に負けた側が先後を決定する権利を得ますが、その際にサイドチェンジという概念があります。
メインデッキとは別にサイドデッキというものを15枚用意し、これをマッチ戦の2本目以降対戦相手のデッキや先後によってメインデッキのカードと入れ替えることができるのです。
「さっきのゲームは負けて次は先行になることが確定しているから、先行展開を補強する《神の宣告》をサイドインしよう」とか「さっきのゲームは勝って次は後攻になるだろうから、手札誘発をたくさんサイドインして備えよう」といったことが可能なわけです。
実は【天盃龍】は最初からこのサイドチェンジを行っています。
なぜなら後攻を取ることが確定しているからです。
遊戯王においてメイン戦というのは先後どちらをとるかわからないため、先行でしか使えない罠カードや後攻でしか使えない捲りカードを採用することにリスクがあります。
でも【天盃龍】は関係なく後手専用の手札誘発や捲り札を積みまくれます。どうせ後攻だからです。
対戦相手は先後どちらを取るかわからないという理由でみんながメインデッキを丸い構築(悪い言い方をすると半端な構築)にしているのに対して、【天盃龍】はどうせ後攻をとるからという理由でデッキを極端に尖らせています。その分天盃側が有利をとっているのは言うまでもありません。
そして当然、この要素はサイドチェンジのない一発勝負であるシングル戦で大いに活きてきます。
結局【天盃龍】とは?
あーだこーだ言ってても仕方ありません。
百聞は一見に如かず。見てください。
はい、あなたの勝ちです。
これもだいたい勝ち。
これが【天盃龍】です。
3~4誘発受けた上で展開できる相手なんてものはそうそういません。
しかるべき箇所に誘発を当てて、相手を0妨害まで追い込んで、天盃カードをプレイするだけ。あとは綺麗に展開すればこちらの勝ちです。
覚えがありませんか?誘発4枚投げてきたあとに《クシャトリラ・ユニコーン》登場。そんなん勝てるわけないだろと思ったことでしょう。同じことです。ワンキルされるかどうかの違いしかありません。
もちろん毎回そんなに都合よくはいかないでしょうが、それはどのデッキも同じです。お互い引きの良し悪しは必ず発生します。
ただその中で、【天盃龍】が最も構築上「都合の良い引き方をする確率が高い」デッキだということ。
その上で、燦幻荘やトランセンドによって対戦相手には誘発を打たせないことが可能。誘発を最も打てるデッキでありながら、誘発を最も無視できるデッキでもあります。
【天盃龍】の強さの本質はこれです。
手札誘発によって環境をメタる側でありながら、燦幻荘をはじめとした各種テーマカードによってメタ耐性というものを獲得しています。
遊戯王というゲームが手札誘発によって定義されている限り、【天盃龍】の立ち位置はずーっと良いままです。
この「勝てるゲームが生まれる確率の高さ」と「メタゲーム上での立ち位置のよさ」が【天盃龍】の本質なのです。
【天盃龍】の弱点とは?
バトルフェイズ依存度の高さ
ワンキルテーマなのだから当然ですが、それにしても【天盃龍】はバトルフェイズ中に展開することがとても多いのでなおさらバトルフェイズが重要です。
極端な例を出せば、《威嚇する咆哮》のような攻撃を行えないカード1枚で天盃龍のワンキルは失敗しますし、《バトルフェーダー》を持ってれば耐えます。
とはいえ、このへんはただのターンスキップなのでまだマシです。もう1ターン手札誘発で凌げばいいですからね。
その一方で《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード・ネオテンペスト》のように、バトルフェイズに効果を封じるカードが直立しているのはかなりイヤです。
メインフェイズに《月華竜 ブラック・ローズ》などを作って対処すること自体は可能ですが、それを行うことでキルラインが大幅に下がりますし、チュンドラというリソースを失うことで次のターンのキルも狙いにくくなります。
他にも《No.41 泥酔魔獣バグースカ》などはシンプルにきつく、リトルナイトを立てるしかありません。
ネオテン同様、メインフェイズに処理しなくてはいけないモンスターというのは全員天盃にとってはつらい相手です。
誘発を上手く投げないといけない
そうなんです。
手札誘発にも上手い下手があります。
うららとヴェーラーを持っている場合、ポプルス召喚に対してどのように誘発を切りますか?
ニビル+無効と持っている場合、展開の最初に無効系を切りますか?それとも最後にニビルと一緒に投げますか?
絶対的な正解はありません。対戦相手のデッキタイプや初動の動き方に大きく左右されますし、自分のほかの手札にも依るでしょう。
でもこの正解のない問題を正確に答えなければ勝つことはできません。なぜなら【天盃龍】は後攻だからです。
先行を取るデッキは最悪先行展開が通れば誘発を投げなくても勝ててしまいますが【天盃龍】は絶対にこの問題から逃れられません。
そして誘発の上手さとはすなわち、現代遊戯王の上手さ。
【天盃龍】を使えば初心者でも勝てますが、【天盃龍】で勝ちきるには遊戯王が上手くなければいけないのです。
後攻を取るということ
後攻をとるのはデメリットです!あったりまえです。ゲーム全体の優先権を相手に委ねているのだから当然のことです。
たとえば、どれだけ手札誘発を引こうとも相手に《スキルドレイン》《センサー万別》1枚貼られるだけでワンキルできません。
どれだけ捲り札を引こうとも、【ライトロード】などに先行ワンキルされる恐れだってあります。
極論MDならメタビにパキケゴルゴンダ神神神されて終わりです。(実はファドラで耐える説があるが)
どう取り繕うとも、先行を対戦相手に渡すという行為は現代遊戯王においてデメリット。
勝つために後攻をとるのに、後攻をとったから負けるのは本末転倒です。
【天盃龍】はそうならないように普通のデッキとは異なる構築思想・事前プランニングが必要になるのです。
【天盃龍】の倒し方
では、ここまでの話を踏まえた上で【天盃龍】に勝つにはどうしたらいいかを考えましょう。
想定としてはオーソドックスに誘発を20枚前後積んだ天盃龍を仮想敵にしてみます。
ターンスキップ系はやめとこう
先に言っておくと、先程例に挙げた《威嚇する咆哮》とかはぜーんぜんオススメできません。
なんでかっていうと、あれは所詮1ターン待ってもらうだけのカードだからです。
もしも手札誘発をたくさん食らってノーガードでターンを返した場合に《威嚇する咆哮》で1ターン耐えたとします。
その1ターンを貰っても初動が引けるかは確定ではなく、しかも引けたとしてもう1誘発天盃側が引いてたら今度こそ終わりですよね?
しかも天盃側もシンクロやリンクモンスターできっちり妨害を残してターンを返してきます。
ダメ押しならともかく、苦し紛れのターンスキップは勝利に貢献してはくれません。それはしっかり認識しておいてください。
チュンドラを出させない
まず持っておくべき意識は、チュンドラを盤面に出させてはいけないということ。
チュンドラは【天盃龍】唯一のチューナーであり、またデッキから仲間を呼ぶ展開効果も持っている最重要カードです。
このため、妨害を切る時にはチュンドラにアクセスさせないよう意識すると良いです。
そのためには…
・面から炎ドラゴンを消してチュンドラを自身の効果で出せなくする
・開門や元禄のリクルートを止める
これらを念頭に妨害の切り方を考えましょう。
素引き罠で妨害
まあ当然のことなのですが、手札誘発に対しては素引きの罠カードが効果的です。
ただし【天盃龍】には燦幻荘があるので、《無限泡影》《ドラグマ・パニッシュメント》などの通常の罠カードは打てるかどうか怪しいです。
そこで効果的なのはやはり、《スキルドレイン》《サモンリミッター》などの永続カードになってきます。
【天盃龍】はメインギミックでこういった永続系をすり抜けたり回答する術に乏しく《大嵐》などの汎用に頼る他ありません。
召喚権潰し
たとえ燦幻荘があってもモンスターの召喚自体を止められてしまうことは防げません。
なので召喚権に対してそれを無効にできるカードも天盃には有効です。召喚権さえつぶしてしまえば手からチュンドラが出てくることもありません。
《神の宣告》などのカウンター罠や《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》などがこれにあたります。
燦幻荘の解体
燦幻荘は誘発避け以外にもシンプルに手数追加の側面も持っており、さらに過剰打点を作るキーカードにもなっているので非常に重要。それ故に燦幻荘への妨害が強く刺さります。
汎用なら《コズミック・サイクロン》などを伏せておいたり、《幽鬼うさぎ》などで割ったりすると良いでしょう。
蘇生潰し
意外と【天盃龍】の展開はギリギリです。ワンキルするときに遠回りをする余裕が全然無かったりします。
なので実は《ディメンション・アトラクター》を打つと【天盃龍】の最終火力はだいぶ下がったりします。
バイデントの蘇生先に《墓穴の指名者》や《D.D.クロウ》を打つといったことも無駄にはなりません。トランセンドが成立できなくなり、開門にうららを打つことも可能になります。
蘇生をつぶせば【天盃龍】には勝てる!とまでは言えませんが、それでも蘇生を潰すことで隙を作ることは可能になります。
誘発を受けても残る妨害モンスター
分かりやすい例を挙げましょう。
《ファントム・オブ・ユベル》はたとえ誘発を何枚投げられようとも見えているところにユベルと攻守0の悪魔がいれば関係なく出すことができます。
そして当然パイドラ1枚ではこれを越えることはできません。0妨害と1妨害では天地の差です。
このように、手札誘発というものを無視して妨害モンスターを作ることができるデッキは【天盃龍】に対しても立ち回りやすいです。
【センチュリオン】や【粛声】もユベルほどではないですが誘発を受けても妨害を残しやすいです。
天盃ミラーを理解しよう
もしも天盃龍ミラーであることがわかっていたとしたら、あなたは先行後攻どちらを取りますか?
後攻?え〜。
ほんとかなあ。
ではこちらをご覧ください。
盤面には特に意味のない燦幻荘と、《天球の聖刻印》、そしてトランセンドです。
これ、どうやって超えますか?
まずもって、トランセンドによってバトルフェイズに効果が使えない→メインフェイズ中にトランセンドを除去しなくてはいけません。
しかしトランセンドを高打点で戦闘破壊しようとしても天球で阻害されます。
よしんばブラックローズなどでこれらを除去したとしても、天球から出てきたファドラとファドラで蘇生したチュンドラの並びを突破するのは至難の業です。
さらに言うと、この盤面はパイドラ+もう1枚で作れてしまうのでのこり3枚はおそらく手札誘発。
それも含めて、越えなくてはいけません。
それでも、本当に後攻をとりますか?
プレイングで差をつけろ
まあそんなわけで、【天盃龍】ミラーは後攻側が有利とは言えません。とはいえ、先行側も脳死で勝てるミラーマッチでもありません。
妨害としては天球ファドラだけでもかなりの効力があるので、ニビルを打たれるトランセンド成立をあえてしなかったり、そもそも天球にうららを打たれてしまうとファドラが出ないため、「《燦幻開門》は先行で使わずに伏せる」「元禄は盤面に残す」という選択肢も。
これは後攻側も同じで、展開を止めるためにうららを使うか?天球を止めるために使うか?という判断を迫られます。
ターンを渡しても、燦幻荘を貼られた場合は天球で相手のアクションに触れるかが不明瞭になるため、「使えなくなる前に天球効果を燦幻荘のサーチ効果に対して使うか」という選択肢が発生します。
天球効果のあとにファドラ+チュンドラが揃ってもまだ相手のアクション次第でバトルフェイズの動きは変わります。
下手なことをすると1手が致命的になります。先を見据えたプレイは必須です。練習しましょう。
マスターデュエルの【天盃龍】は?
強いに決まっとるやろがい
やばいです。今回ばかりは本当にやばいです。やばいです。
冒頭で話したYCSJ東京大会は2日間に分けて行われましたが、実質的な決勝トーナメントとなる2日目における【天盃龍】の分布は201名中72名だったそうです。3人に1人が天盃です。
これは2位の炎王スネークアイの分布数28と比較しても異常な数値だとわかります。
この数値が示すところはすなわち、「YCSJのようなシングル戦の大型大会には【天盃龍】を持ち込むのが正しい選択である」と考えたプレイヤーが多く存在し、そして実際にその多くが勝ち上がったということです。
このような恐ろしい事実がある以上、天盃龍がシングル戦であるマスターデュエルを破壊するという未来は避けられません。
絶対に規制しろ
なにがあっても燦幻荘だけは規制すべきです。
一応2024年10月現在のOCGでもチュンドラおよび燦幻荘が制限カードになってますがそれでも依然として【天盃龍】は環境レベルの強さを維持しています。
他のカードは最悪構いませんが、燦幻荘だけは引かれた瞬間に多くの誘発や妨害を無意味なものにされて何もできずに敗北する最悪のゲームになります。
運営さん、お願いします。
おわりに
今回はここまでとなります。皆さんご拝読ありがとうございます。
【天盃龍】はシンプルなゲーム性故に初心者でも勝つことができ、また手札誘発の打ち方というプレイングを学ぶことができるという点では良いテーマです。
しかし一方で燦幻荘というゲーム性を著しく破壊するカードのせいで非常にヘイトを買っているテーマでもありますね。
とはいえ、メタゲーム上で強いというだけでメタゲームそのものを歪めるわけではないのでまだマシとも言えますか。
【天盃龍】自体は手札誘発が増えれば増えるほど強くなるので、将来性という意味でもオススメできます。
使う側に回るか、倒す側に回るか。皆さんはどちらを選びますか?
それではこのへんで。
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