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映画ルックバック初見雑感

観てきた。漫画は無料の小学生編まで読んで後は未読だったけど、逆に良かったかも知れない。取り留めもなく感じた事を書いてみる。

※言い訳しておくけど作品の背景とかモチーフとか、作者や監督の事とか何も詳しくないので浅っさい事言ってても温かい目で見てやって下さい。



これはタツキ流のまんが道なのかな…

藤野はイヤなガキで、最初は「こいつが苦しむところを見れば良いんだな」と思ったらわりとすぐ分からされるので許してやって欲しい。
ムキになってのめり込むのは子供らしいけど2年もひたすら努力できるのは凄いな。友達も家族も引いてるものの、そこまで酷い扱いされなかったのは根が悪い奴じゃないのかな?いや田舎のコミュニティがそんなヌルはずないからそこはファンタジーだとは思う。

ファンタジーと言えば京本はホントにファンタジーな存在で、藤野に憧れて「私なんかやっちゃいました?」するわけだけど、あれは京本なりのアプローチだったんだろうな。藤野はずっと京本をライバル視して猛練習してもそこまで上手くなってなくてコンプレックスはずっと消えなかったけど京本が従順でバランスが取れたから奇跡的なコンビになったんだな。
漫画を描く上で必要なものは持ってたしね。

中学生編から本格的にまんが道になってずっと一緒に漫画描いて持ち込みに行って吹雪のコンビニ行って、街に出て藤野が手を引いて振り返った京本がキラキラしてて…知らなくても絶対ヤバいと思うじゃん。タツキだぞ?
離別するか死別すると気づいてしまった。どっちもだった…

藤野は京本を離したくないんだよ。自分のアイデンティティを預けた存在だから。人質を取られてるとも言えなくない。初の週刊連載で苦労しつつ軌道に乗ってアニメ化まで決まって、それでも藤野は京本が戻ってくるのを待ち続けてるんだよな。アシスタントを雇ってもどうしても京本に及ばない。
その京本を永久に失ってしまう。

最初腕だけで済ませてくれとか思ったけどタツキは許さないわけで…
モチーフがあれだから当たり前か。だから京本って名前なんだなって気づいた。
そもそもこれがタツキの描きたかった事なのかなと思う。
憧れも嫉妬も創作してる人間として痛いほど分かるけど、壊して奪ってしまう事だけは絶対に許さないという意思表示なのかな。

藤野は漫画を描いた事も京本を連れ出した事も呪ってしまうわけだけど、ファンタジー京本が並行世界から手を差し伸べてくれる。一瞬まさかこのままの世界線で進むのか!?と思ったけどそんな事はなかった。
この展開に関しては諸説ありそうだけど考察するだけ野暮だと思った。藤野にとっての現実はそのまま続くわけで、もう奇跡は起きないと思う。

藤野というキャラは不遜も不遜でホントにイヤなガキなんだけど、負の感情の処理がすごく前向きなんだよね。外じゃなくて自分に向かう。虚勢を張っても卑屈にならずに実現するよう努力するし、無理だと思ったらスッパリ諦める潔さがある。
この辺が犯人との対比というかタツキなりの解答なのかも知れない。
まあ藤野は上手く行きすぎてる気もするが。

分かるよ。自分は何かできるはずだとコツコツやって、でも誰も見てもくれない褒めてもくれない。しまいには先を越されたり自分より上手くやって賞賛を浴びてるヤツが許せないっていう気持ち。
自分を支えるものがそれしかない人間にとっては死活問題で、でもやっぱり自分で自分を救う事はできない。ましてや人の命を奪って満たされる事なんて絶対にない。

映画としてはホントにタツキの漫画がそのまま動いてて、アニメーションのこだわりが半端ない。音響も素晴らしく無音を無音として演出するセンスの良さがホントに良かった。

ルックバックというタイトルは「後悔」とか「過去に縛られる」ような後ろ向きの意味を含みつつも「背中を見る=追い掛ける」という前向きな意味を込めてるんだろうね。
手を引きつつも背中を見続けてた京本を今後も見続けるんだよな藤野は。

藤本は。

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