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2023年3月28日のジャクソン・ブラウンの公演に思うこと


公演パンフより

全盛期との比較で歌唱力や演奏力が低下した老いたミュージシャンのあるべき姿をそこに見る事ができました。

若い頃の作品については、ほぼ、キーを下げて歌っているのは、近年のJBのライブではおなじみ(確か2000年代に入ってすぐのソロアコースティックツアーのときから下がっていた)なわけです。

以前の僕はそれに不満を抱いていました。だって、曲全体が沈んだ印象になり、世界感が違って聞こえるからです。

昨晩もキーは下がっていましたが、違った印象を持ちました。歳を重ねたがゆえの肩肘張らない自然体というのでしょうか。サポートミュージシャンの、いぶし銀というか、落ち着いた演奏もJBの自然体を下支えしています。

アーティストの中には、老いても能力を維持するためにトレーニングしたり、医学的な処置を施す人もいます。それはそれで素晴らしいことですし、どしどしやっていだければいいと思います。

でも、近年のJBを見ていると、衰える能力に抗わず、成り行きに任せ、その時々のベストを尽くせばよいという姿勢を垣間見ることができます。

十代の頃から追いかけていたアーティストの老いをライブを通じて感じながら、自分も素敵に老いていく(可能なら)ということの素晴らしさを感じた昨晩のジャクソン・ブラウンの公演でした。

余談:キーボードのジェイソン・クロスビーという人のピアノが素晴らしかった。「The Pretender」だったかな?(記憶曖昧)では、曲途中からJBに替わりピアノを弾くのですが、そのときの和音の使い方(ボイシング)が、これまでのサポートミュージシャンやJB自身が弾くピアノの世界とはまったく異なる独特の風味を出していました。おなじみの曲が安定的に続くなかで、爽やかな新風が吹いた瞬間でした。

で、ジェイソン・クロスビーを調べたら、最新のピアノソロアルバムでJBの「Colors of The Sun」(『For Everyman』に収録)をインストでカバーしていました。ただこの人、Hammondオルガンは、あまり得意ではないみたい。2017年来日時のサポート、ジェフリー・ヤングがオルガンの名手だっただけに、そこは不満かな。

余談その2:ジェイソン・クロスビーが、「The Long Way Around」では、デジタルメロトロンM4000Dを弾いていました(写真向こう側の白いキーボード)。テープを逆回転したような、ふにゃふにゃした感じのパッド系音がそう。あと「The Pretender」のチープなストリングスのメロディもそうかな。メロトロン好きとしては、外せないポイントですね。

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