機材の小咄 ①プリアンプ編

やまれいです。

機材についての所感を言語化する場所が欲しくて備忘録を書きます。
初回として、外部プリアンプについての話をしようと思います。

1、本記事におけるプリアンプとは

大前提としてこの記事で言及するプリアンプとは何か、について明記します。
ここでは「デジタル、アナログを問わず、スタジオ常設アンプに接続し、常時オンにすることで音作りを行う機材」という前提のもとで必要性や所感をお話しします。
なので、アンプ自体に内蔵されているプリアンプについてはお話ししません。
また、特にスタジオに常設されているアンプでも、自分のイメージする音をいつでも出すために用いる、というニュアンスを多く含んだ見解です。

2、プリアンプは音色にどこまで影響しうるか

まず、これを勘違いしている人が多い印象ですが、自前のプリアンプを使えばいつでも同じトーンが出せるかと問われれば、それは違います。
Fenderのデラリバ系のプリを通したからデラリバの音になるわけではないです。
プリアンプが音色(この場合は歪みの質感だとか「音のキャラクター」といった意味合いです。おんしょく。)に対して関与できる割合は、クリーンなら思ったよりも高くないという印象です。

このサイトのキャビネットに関する検証の部分がとてもわかりやすいです。
外部プリアンプでクリーンを作ってそこに歪みを乗せると、キャビネットのキャラクターがかなり反映されます。わかりやすいところで言うとJCのバリバリ、パキパキ感みたいなのは結構キャビネット由来だと思っています。そのため、JCの音がしなくなる、とは思わない方がいいです。

では外部プリアンプを導入する意味はないかと言われれば、私は導入する価値があると思っています。

3、外部プリアンプを導入するメリット

1、イコライジングの幅が広がる

第一に、イコライジングの幅が広がります。個人的には1番のメリットはここです。
特にJCM2000などのEQを想像していただければわかりやすいと思いますが、ハイがゼロなのに耳が痛い帯域がでてきたり、ミドルを上げてもあまり変化がなかったり(望んでいる帯域が出てこなかったり)する「EQの効きが極端、もしくは悪いアンプ」は一定数あります。
そういったアンプに対して、EQの効きの良いプリアンプを導入することで、音作りがしやすくなるというメリットがあります。外部プリアンプで音色(おんしょく)に積極的に関与することは難しい場合も多いですが、好みの帯域に効くEQを持ち運べるという点は大きなメリットだと思います。

2、レンジが広がる

二つ目に、レンジを広くとった音作りができるという点です。
ここでいうレンジとは、低域から高域まで満遍なく再生することができるという意味合いです。外部プリアンプを導入することで、通常の歪みエフェクターを用いるよりもワイドレンジな音作りをすることができる場合があります。
一般的に、歪みエフェクターを追加するとレンジが狭くなります。有名どころだと、BossのOD-3やIbanezのTS9などは、低域と高域を狭めるような歪みかたをします。特にハイゲインディストーション系の音作りをしたい場合、低音弦のズンズンとしたロー感、高音弦のザクザクとしたハイエンドがしっかり出ている、ワイドレンジなサウンドが求められる場合が多いです。
それに対して、ディストーションペダルをクリーンのアンプのインプットに挿すと、レンジが狭くなったと感じることがあります。例えばクリーンの状態のアンプのインプットにディストーションペダルを繋ぎ、アンプのゲインを上げていくと、ミドルが飽和していき、ディストーションらしくないサウンドだな、と感じると思います。これはアンプ側でゲインを稼いだことによって、ヘッドルームが下がり、レンジが狭まったことによる効果です。
こうした事態を、アンプのプリアンプを介さないことで回避することができ、よりソリッドなディストーションサウンドになる場合があります。メタルゾーンのリターン挿しが良い音がする、とかはこの辺の恩恵を受けているからなのでしょう。ハイゲイン系のワイドレンジの音作りをしたい場合には、おすすめの手法です。

4、プリアンプを導入することによるデメリット

レンジが狭くなる

前項でプリアンプのメリットとしてレンジが広いことをあげたので矛盾しているように感じると思いますが、前項は、クリーンアンプにディストーションペダルを繋いだ際の話、本項では純粋なクリーントーンにおけるレンジ感の話です。
一般的にアンプのヘッドルームの大きさは、電圧によって大きく変わる場合が多いです。ざっくり言えば、高電圧をかけると歪みにくくなり、その代わりに音量とレンジが広がる、電圧を下げるとよく歪むようになり、コンプレッションがかかるようになります(ヴァンヘイレンのサウンドとかはこれです)。
この点を踏まえると多くのアナログプリアンプやデジタルプリアンプは、一般的なエフェクターと同じ規格で作られているため、ほとんど9Vの電圧で動作しています。それに対して、チューブアンプの電圧は100V以上がほとんどです。そのため自ずとチューブアンプの方がレンジが広くなる傾向があります。ワイドレンジな音作りを求めている方には、元々のアンプの方が向いている局面も多いでしょう。
ですが、プリアンプの中には200V以上の高電圧で真空管を動作させているものなどもあるため、一概に外部プリアンプのレンジが狭いとは言い切れません。そもそも、バンドの中で合わせるにあたっては意図的にレンジを狭めた方がいい曲面も多いため、一概にレンジが広い=バンドで使える良い音ではありませんのでその点は理解しておいて欲しいです。

5、まとめ

以上を踏まえて最終的にどのような人に外部プリアンプがおすすめかと言われれば、

・スタジオの常設アンプのEQに不満がある人
・レンジの広いハイゲインサウンドが欲しい人

に向いていると思います。逆に言えば、

・JCの特徴的な癖のある音が嫌い
・漠然と良い音が出したい

といったタイプの人には向かないです。
JCにリターン挿しをしてもJCのままだし、自分の求めるトーンのレンジ感がわからない状態でプリアンプに干渉すると思ってもない方向の音になってしまう可能性があると思います。現状のスタジオ常設アンプの何に不満があって、何が自分の理想のトーンにとって必要なのかを考えた上でプリアンプ選びをすると、良い結果につながると思います。

最後に私が今まで使ってきたプリアンプを一部ご紹介します。よければ参考にして見てください
①HX STOMP内蔵プリアンプ
モデルは÷13やMESA Lone starなんかを使っていました気がしますが定かではないです。

②HTJ-works /Valve crystal
John MayerのシグネチャーアンプであるTwo rock traditional cleanのプリ部を抜き出したもので、真空管を内蔵したプリアンプです。今も使用中です。

③Little wing electronics/hamming bird
Eddie Van Halenのファーストアルバムのトーンを再現することにのみ特化したプリアンプです。ハイゲインサウンドに特化しています。


それでは皆さん良い機材ライフを。





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