青色

夜から朝にかけて、世界が青く見える時がある。
それはまるで精神の海の中で寝転がって遠すぎる水面を眺めてる気分だ。
そういう時はやけに鳥や雨、近くを流れる川の音が耳に入るから、なんだか豊かになった気持ちになる。

いつだって睡眠の足りない脳は熱を持っているようで、それも青い世界にゆっくり冷やされていくようで気持ちがいい。
熱を出した日の雪みたいな。
こたつの中で食べるアイスでもいいけど。

夜から朝にかけて見るこの青色は心と世界と同じ色と呼んでいたけれど、誰かが精神の色と呼んでいるのを見て、そちらの方がかっこいいな、と以来そう呼ぶことにしている。

暗く青く明るく白く、時々赤い、心と世界の色は、精神的な健全さ健康さが失われつつあるときにほどよく見ることが出来るような気がする。
それでも自分はこの青色を幸せの色だと感じている。

凪いだ心、静かな世界、頭の中の音は少なくて、僅かな空腹感が一緒にいることも多い。
ぼんやりした頭はなんだか冴えてる気さえして、それが気の所為だと分かっていてもスッキリと気分が良いから気の所為だって構わなくて。
高くなった体温を少しづつ奪う青い空気はやっぱり気持ちが良くて、いつだってこの時間が続けばいいと願っている。

青い世界に自分への敵意は無く、ただただ無関心の温かさを感じる。
水に包まれた時に安心を得る人がいるように、青い世界に安息をもたらされて、甘えるように体を委ねることが出来る。
人々の意識は無く、自分の存在も曖昧で、同じ青色になっていく気がして、目を瞑れば夜にその青色に溶けていける気がして、肺に酸素を感じることが出来るようになる。
世界の音が聞こえるようになって、煩さから解放される僅かな安息に信仰さえ覚える。
耳を塞ぎ続けなくて良い空間というのはなんと素晴らしいことかと、やっと自分の存在を認められる。

朝がやってきて、人々が動き出せばまた、耳を塞いで縮こまる。
どうか冬と夜が少しだけ長くなりますようにと、願うばかり。

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