暑い日

夏はどうしても暑いから、風にしばらくここで吹いてくれと頼んでみる。
すると風はここだけにいることは出来ないよと風らしく去っていく。
空に浮かぶ雲に向かって雨や降る気は無いかいと尋ねてみる。
雲が今日は雨さん乗ってないよと答える。
私はそうかいそりゃ仕方ないと窓の前で次の風を待つ。

部屋を満たす湿気に空へ上がって雲にならないかと提案してみる。
空気に漂う水たちがさすがに無理だと答える。
私はそりゃあそうかと床に寝転がる。

再びやってきた次の風にやっぱりここでしばらく吹いていってくれないかと頼んでみる。
やはり風は風を望むのは君だけじゃないから君だけのためには居られないと言う。
それならばここらをなるべく通り道にしてくれないかと頼んでみる。
風はここらは通るが道は選べないから入り込みやすいよう工夫をしておいてくれよと言って去っていく。
私は承知したと家中の窓を開けに行く。

しばらくすると先程より高頻度で風が音を立てて吹き込むようになるから忙しそうに行く風たちにありがとうと感謝を送る
風たちは近道をしているだけさと去っていく。
部屋に満ちた湿気たちは楽しそうな声を上げながら風を追いかけ去っていく。
空には雲がいなくなっていて怖いくらいの青色が広がる。

ようやく動けるだけの涼しさになると、私はじりと喉が張り付くような渇きを思い出してお茶を取りに立ち上がる

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