天秤

つまらない生活、不健康で病だらけの体。
全てが己の怠惰からなるものだとしてもその全てから目を逸らし身を投げたいと願う。

起き上がることを諦め、光を浴びることを諦め、動くことを諦め、怠惰のみで過ごす。
楽を手に取り、豊かさを捨てる、そして周りからもじわり奪うように命をゆっくり溶かしていく。

体も脳みそもとうの昔に腐らせた。
それでも私はまだここにいて、生きている。
人らしく生活など出来てはいないが、生存だけはしている。

人から逃げるように存在を忘れさせるように引きこもり、それでも寂しさからネット上に薄く浅い繋がりを求める。
煩わしさと怠さの中でも、人から得られる刺激を捨てきれず、化け物が人間のフリをするみたいに言葉を練る。

数日間の旅行では、朝に起き運動をして朝昼晩と食事を取り夜に眠るという、いわゆる普通な、健康的な生活をした。
陽の光も浴びたし医者に言われたビタミンD不足も多少マシになったはずで、自宅へ帰ってからも夜に眠気が来て午前には起きるという生活リズムになった。
今までのリズムが崩れた不便もありながら、普通にひとつ近付いた気がして、こうして普通になることができればいいのにと望んでみる。

日々を過ごしているインターネットが煩わしく思えて、しかし離れることなど不可能で、配信なんかで人と繋がっている気分になってみたりして、誰も見ない140にも満たぬ文字を垂れ流す。
人の配信を見て楽しくなったことにする。
人を好きになったことにして応援していることにする。

普通の形をなぞって、どこかでつまらないと思う気持ちを視界に映さないまま日々を過ごす。

夜の眠気に、あまりに穏やかなそれに、恐怖すら感じる。
これが崩れた時、今度はどうなるのだろう。

狂ったように暴れ叫んだこともあった、ただただ静かに絶望したこともあった、どこまでも深く諦めた感覚に眠り続けたこともあった。

嵐の前の静けさと言うけれど、この穏やかさは嵐の前兆のような気がして、本当に眠っていいのだろうかと恐れながら、やはりこれからも目を逸らして、今日も私は穏やかなフリで眠るしかないのだろう。

約束も果たせずつまらないまま、死ぬのだろう。
命の重さと怠惰の乗った天秤がゆらゆらと揺れている。
一度余計なものが乗って大きく傾き、その余計なものが退いて、再び穏やかに揺れ始めた。
緩やかに傾き始めているのにも、目を逸らす。

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