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マンドリン弾きが眠るとき その2

マンドリンという楽器はどこで生まれてどんな音で、どのような音楽を奏でる楽器なのか。興味を示した方に説明するのはそこからとなります。そこまでで約5分。でもこれがないと始まりません。その後、4コース8弦が張られていて、調弦はヴァイオリンと同じでピックではじいて音を出す、2本の弦を一緒にはじく…などなどの説明に続きます。日本のマンドリン人口は約20万人で、世界一のマンドリン大国(発祥のイタリアを大きく上回ります)であるという現実とギャップ。(これには皆さん驚きます)

私自身、マンドリンの本性を知るのは高校時代マンドリンクラブに入部してから暫くしてからのこと。深い歴史や構造などを知るようになるのはそれから何年もしてからでした。気が付いた時には部活での特訓に明け暮れる毎日。マンドリン=部活ということは、「先輩からの伝授でいかに早く覚えて定期演奏会のステージに立つか」がマンドリンとのなれそめ時代の思い出と言えます。マンドリン人口の大多数が私と同じ経歴を持っているのではないかと思います。なぜなら、マンドリン音楽に触れるには部活動以外にはほとんど方法がないからです。音楽の時間に習うわけでもありませんし、楽器屋さんに行っても置いてあることはほぼありません。テレビで憧れの歌手やバンドが弾いていることも皆無に近い楽器です。「やってみようかな?」という気持ちにさせる場面がないのです。南米にチャランゴという弦楽器があり、インドにシタールという楽器があり、ロシアにバラライカがあるようです…、というのとほぼ同じ状態です。しかしながら奏者は20万人いる!言ってみればこの20万人という奏者は部活現役&OBOGの総計ということなのです。逆に言うとマンドリンを見そめて個人的に始めて愛奏者になる人はほんの一握りということなのです。現在では個人主義の広がりか、部活動が廃れつつある日本ではご多分に漏れずマンドリンクラブの入部者は減少の一途をたどり、廃部に追い込まれる高校/大学の老舗クラブも枚挙にいとまがありません。マンドリンという楽器の良し悪しではなく、部活動が廃れることによってマンドリン音楽、楽器マンドリンは絶滅危惧楽器になりつつあるのです。そして若年層のマンドリン愛好者の減少とともに、マンドリン奏者の高齢化が進行しています。

なんとかして部活だけに頼らず、若年層にマンドリンの良さに気付いてもらうことはできないものか。若年層だけでなく「子育て終わって何か初めてやろう!」という方にウクレレと同じように気軽に手にしてもらえるようにできないものか、、、眠りにつく前の数分間についつい考えてしまう今日この頃です。  
(tre-pick)