おしるこ氏作品集

昨日ふと思い立って粒子加速器に金平糖を入れてみた。光速の99%になったときに金平糖は自壊してしまった。砕けた金平糖を口に入れればやっぱり甘く、どこか悲しげだった。僕は今、星になれなかった悲しみを味わっているのだ。

まどろみから覚醒するほんの数秒が好きだ。その瞬間だけは甘すぎる非現実とつらすぎる現実のどこにも属さない気がするのだ。
まどろみから覚醒する数秒が嫌いだ。それは自分が現実の奴隷になる合図のような気がするのだ。

首都の電波塔、高さ600メートル超から跳ねた。星屑に飛び込む様はまるで重力から逃れる宇宙飛行士のようだ。だが実際は彼が忌み嫌う重力に飛び込む他ならない。

僕は頭痛が痛いとつぶやいたらトートロジーはやめろと言われた。そんな彼は今日もボーイミーツガールをこねくり回した漫画を読んで感情だと叫ぶ。

白痴という言葉がある。古代中国から生きる古の言葉だ。意味は重度の知的障害。痴が頭の鈍さを指すならば、きっとまどろみから覚醒する数秒を好む自分は、この数秒だけは白痴でいられるのだろう。

夜は嫌いだ。
夜は-273.15℃の暖かさを押し付けてくる。
夜はつんざくような静寂を押し付けてくる。
夜は穢れなき黒を押し付けてくる。
だから朝が来る。夜の優しさを取り上げるために。

あぁ、友よ。怯えないでくれ。君と社会を隔てる帳はもう上がるのだ。仄暗い微睡みから君は覚醒しなくてはならない。決して怖がってはいけないよ。旅人からコートを奪った太陽のように、社会は君を明るく照らすのだから。

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