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鉛筆削り

鉛筆削りが欲しかった。

最高級は電動鉛筆削り。
シルエットよし、仕事よし、コンセントがついて電気で動くスマート感がいい。
次に良いのが手回しの手動鉛筆削り。
大体の小学生は持っていたが、うちにはなかった。
でもうちで買うのは認められない感じだった。
手でできることができなくなってしまうから、といった理由だったと思う。
ある日、優しい親戚の文房具やさんに、遊びに行ったとき
お父さんをそそのかして、妹と一台ずつもらって帰ってきた。
その時のお母さんの怖い顔といったら。忘れられない。

手動の鉛筆削りのシルエットは、電動と遜色なくかっこいいのだが、
滑り止めのツメの痕が、傷になって鉛筆についてしまいボコボコになる。
正に玉にキズで美しくない

色鉛筆などについてくる携帯用のくるくる回す鉛筆削りは好きじゃなかった。
削ったあとの木の部分が短くて不格好。
さらに力強く削ってしまうと芯が折れて、最後詰まってしまう。
芯も短く削れるから、書いているとすぐに太くなってしまい、持続性が低い。

小学校低学年、手回しの鉛筆削りが来るまでは、ナルビーナイフでお父さん、お母さんに削ってもらうのが定番だった。
でも丸くなった時、すぐに削ってもらえるわけではないので、むむむっーって感じ。
なかなかタイミング合わずに、筆箱の中の鉛筆が全部丸くなっていると
「なんで早く出さないんだ」っとおこられるし。

でも、今あらためて一番好きなのは、ナルビー似のナイフで削ること。
いまだに削っても削っても上手くは削れないけれど。
目指すは電動鉛筆削りのシルエット。木の部分と芯の部分のラインがつながって美しい。
木の部分をはじめに丁寧に、まっすぐ削ってみる。
次に芯の部分も木のラインにつながるように、丁寧に静かにナイフを動かし、
芯をとがらせていくが、最後は木の部分がボワッと膨らんでしまい不格好。今のところ永遠のテーマのように感じている。

ある日、離れて暮らす父がうちに来た時、何気なく鉛筆を削ってくれた。
よく削ってもらっていた小学生の頃から、三十数年後、私も母になった頃。
父の削った鉛筆は思いのほか美しかった。
数本並んだ鉛筆は優しく、美しく、そっと並んでいた。

それ以来、父のように鉛筆を削れたら、と思って時々削るがやはりそこには届かない。
電動鉛筆削りの美しさを目指しながら、ナイフで削る。

削られた鉛筆を見るのが好き。
削った分、何か書いて、描いてるから。
その証として短い。
何か書いたんだな、残したんだな、と思う。
その何かしたあとの証が感じられるのがいい。
削られた短い鉛筆。
そしてそれが手で削られたものなのがなおいい。

父の日に何気なく鉛筆を削ったら出てきた、つれづれ。

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