2024年3月7日 藤巻健史議員 質疑 文字起こし

藤巻:NO.3.  現在、日銀が様々な理由をつけて利上げを先延ばししているのは、日銀の債務超過が怖いせいではないのか?

植田:日本銀行、現在、財務への配慮から必要な政策の遂行が妨げられるというふうには考えてございません。私ども2%の物価安定目標を持続的安定的に実現するということを目指しています。この先賃金と物価の好循環の強まりを確認し、物価安定目標の持続的安定的実現が見通せる状況に至ればマイナス金利政策やイールドカーブコントロールの枠組みなど様々な大規模緩和策の修正を検討していくことになります。基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていく見通しが実現する確度は引き続き少しづつ高まっていると考えています。この点、賃金と物価の好循環という観点から現在進行しているしんきの様々な動向に注目しております。

藤巻:NO.4. 植田総裁は金融緩和からの出口となるストラテジー(戦略)をすでに見つけられたか?

植田:・・・政策対応の具体的な順序や内容については、その時々の経済物価金融情勢に応じて異なり得るものであるというふうに考えております。が、物価安定目標の基で出口戦略を適切に進めて行くことは十分可能であるというふうに考えております。

藤巻:NO.5. 2000年末の日銀の長期国債保有額と今の長期国債保有額を教えて欲しい。

正木局長:2000年末における長期国債保有残高は27兆円、2024年2月末時点の保有残高は596兆円でございます。

藤巻:2001年3月19日の日銀政策金融決定会合、当時審議委員だった植田総裁はですね、量的緩和をするには普通の短期金融資産ではおそらく無理になってくるだろうから、長期国債買い置きの増額等もそれで期待インフレ率が上がって金利が上がっていたり景気が良くなっていくなら良いが、ならないと地獄になるとおっしゃってるんですね。それから23年経ちますけれども、確かにおっしゃった通り国債爆買いして20倍になったわけです。昔は約束手形とか短期国債という短いものだったが、今は長期国債を爆買いしているわけですけども、ちっとも金利は上がっていないし、当時に比べて景気がめちゃくちゃ良くなったわけではありません。そうなりますと当時の植田総裁は地獄になるとおっしゃってますが、これから地獄がくるんでしょうか、それともあの時の審議委員であった植田さんの発言というのは誤りだった杞憂だったと反省されてるでしょうか?

植田:様々な理由から基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まって行く見通しが実現する確度が少しづつ高まっている状態でございます。

藤巻:今のお答えですと長期国債を20倍にして大丈夫だ、地獄は来ないという回答になってないと思いますが今日はこれ以上追求しないで次回以降にお話をしたいと思っています。

藤巻:NO.9. マイナス金利を解除すると実態的にマーケットの金利の世界が変わるんでしょうか?

植田:市場金利については当然短期の政策金利のその時の水準、及び、その先行きに対する見方、予報ですねそれぞれ市場での需給環境を反映する形で形成されていくと考えられますし、近々では貸出金利は市場金利動向を踏まえて各金融機関の判断において設定されることになると考えます。

藤巻:NO.13. マイナス金利政策を解除すると上がって精々0.1%ですよ、それを利上げと言っていいんでしょうか、金利が上がった、だから円高になるということを期待して間違った印象をマーケットに与えているのが日銀じゃないかというふうに考えなくもないですが如何でしょうか?

植田:私ども、仮にそういう事態に至った場合に政策金利をどのような水準に設定するか、或いは利上げをどの位の幅でやるかということはその時点の経済物価金融次第であるというふうに考えます。

藤巻:NO.14. マイナス金利政策解除後に、ゼロ金利から0.5%に引き上げたら、1.0%に引き上げたら、米国のように5.5%引き上げたら日銀の支払い金利額はどうなるか?

正木:付利金利の引き上げにより日銀の当座預金の支払い利息は増加するものと考えられます。そういう局面では経済物価情勢の好転とともに長期金利も上昇すると考えられますので日銀の保有国債が利回りの高い国債に入れ替わって行くことで受け取り利息も増加していくものと見込まれます。支払い利息の金額のみに注目することは必ずしも適当ではないと考えます。バランスシート及び日銀当座預金も長期的には縮小していく点も留意する必要があります。
その上で、仮に超過準備額を現在の約500兆円のまま横ばいと仮定した場合の支払い総額を機械的に試算いたしますと、付利金利が0.5%の時2.5兆円、1.0%の時は5.0兆円、5.5%の時は27兆円程度になる試算でございます。

藤巻:NO.16. 日銀は債務超過になっても大丈夫か?日銀と円の信用は保たれると思うか?

植田:管理通貨制度のもとでは通貨の信認は適切な金融政策運営によって物価の安定を図ることを通じて確保されるというふうに考えております。そうした前提のもとで中央銀行は長い目で見れば通益を確保出来る仕組みとなっておりますし、また、自身で支払い決済手段を提供できるということのため、債務不履行に陥ることはなく、一時的に赤字、債務超過になっても政策能力に支障を生じないというふうに考えます。ただし、中央銀行の財務の悪化が着目されて金融政策を巡る無用の混乱が生じる場合、そのことが信認の低下につながるリスクがあるため、財務の健全も留意しつつ適切な政策運営に努めていく方針でございます。

藤巻:NO.17. 日銀保有の国債の平均年数はweighted Averageで何年くらいか?2024年中に来る国債の満期額はいくらか?そのうちの長期債はどのくらいか?

正木:日銀の保有する国債の平均残存年限は2024年2月末時点で6.51年でございます。2024年中の償還予定額は67.1兆円でございます。この内10年利付国債は28.2兆円でございます。

藤巻:NO.18 シニョリッジ(通貨発行益)に頼って債務超過を解消するのは可能か?

植田:私どもが政策を引き締め方向に転換した場合にバランスシートが縮小する局面では付利金利の引き上げによって超過準備に対する支払い利息が増加し、通益を下押し致します、ただその後は超過準備の減少にともない支払い利息が減少し利回りの高い国債への入れ替わりにより、受け取り利息が増加する中でシニョリッジ、・・・保有する国債等からの利息収入があるため通常収益は回復していくと考えられます。
付け加えますと委員がおっしゃいましたように、そういうシニョリッジも限界があるかも知れない、或いは債務超過の解消に時間がかかるかもしれないという可能性は確かにございます。しかし、引き締め政策を付利金利の引き上げによって行い得るいうふうに考えておりますので、それを発動することによって物価の安定を維持するということは可能であって、そういうことを通じて中央銀行に対する信認は保たれるということは可能であるというふうに考えております。

藤巻:NO.20  中央銀行が国債買いオペを継続し長期国債保有額を拡大させると、日本銀行の信認だけでなくて、日本の信認にかかわってくると懸念されるが、総裁は懸念していないのか?

植田:私ども国債買い入れはあくまでも2%の物価安定の目標を実現するという金融政策運営上の必要から行っています。

藤巻:NO.21.  昨年の日本国債発行額はいくらで日銀の国債購入額はいくらか?

正木:2023年中の国債の買い入れ額は117.2兆円でございました。なお、国債発行額につきましてはこの2023年暦年ベースで見ますと日本証券業協会が公表している統計によれば209.4兆円と承知してございます。

藤巻:NO.22.  日銀が長期国債の購入を辞め、ランオフも始めたら、どこまで長期金利は上昇すると総裁は考えるのか?

植田:この先物価安定目標の持続的安定の実現を見通せる状況に至れば様々な大規模緩和策の修正を検討していくことになります。その際イールドカーブコントロールの枠組みを撤廃するにせよ、残すにせよ、長期国債の買い入れは続くことになるというふうに考えております。見直す前後で不連続な動きが生じることがないよう適切に対応する方針でございます。

藤巻:NO.23.  直近の数字で国債の評価損額、評価時点の10年物金利を教えて欲しい。長期金利がその時点より1%、3%、5%、10%パラレルシフトして上昇した時の債権評価損がどのくらい増えるか教えて欲しい。

正木:2023年度上半期末における私ども国債の評価損は10兆円、この時の10年もの金利の水準は0.76%でございました。仮にこの時点のイールドカーブがですね、全体としてパラレルに上昇したと仮定した場合における評価損の拡大幅、こちらを機械的に試算いたしますと以下のような結果になります。
1%の上昇で29兆円程度、3%の上昇で77兆円程度、5%の上昇で114兆円程度、10%の上昇で180兆円程度となります。

藤巻:NO.25. 日銀が内部留保と株式評価益の合計を超える大きな債券評価損を出しても日銀と円の信認は保たれると思っているのか?

植田:日本銀行では保有国債の評価方法は償却減価法を採用しておりますために評価損が発生或いは拡大したとしましても決算上のきかん収益には影響致しません。その上で通貨の信認は適切に金融政策運営により物価の安定を図ることを通じて確保されるものです。先程、申しましたように当座預金に対する付利の金利を引き上げて行くことにより適切な引き締め政策は実行可能でございます。日本銀行としては引き続き財務の健全性にも留意しつつ適切な政策に努めていく方針でございます。

藤巻:総裁は償却原価法を使っているから大丈夫だとおっしゃっいましたけれども日銀を評価するのは日銀自身ではなくて相手方だということをご理解頂ければと思います。
NO.27. もし一度でも日銀が保有国債を売れば、日銀も全保有国債に時価会計が適用されるとの理解でよろしいか?そうなると巨大な評価損が巨大な実現損に変わるわけですけども日銀は大丈夫ですかお答え下さい。

植田:国債につきましては過去、政府からの要請に応じて売却したケースなど一部の例外を除きますと売却を行っておらず、こうした点も踏まえて償却原価法の採用が適切であるというふうに考えております。

以上


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