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日本人のほとんどが知らない ルーツ・ヒストリー・ポリシーから熱狂的支援者をつくる 本当のブランディング戦略

※この記事は、ブランドプロデューサー久々野智 小哲津(くくのちこてつ)を一人称に書いています。

「売れないのは、お前がブランドってものを分かってないからだ」

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20代前半、営業バリバリの業界でトップセールスになった。20代後半にIT業界で起業したときには、マーケティングを学んで広告をフル活用し、30億の会社をつくってニッチな分野で日本一にもなった。

でも、当時のぼくは「今のビジネスに将来性はない」と考えて、「広告に頼らずとも、ずっと売れ続けるものって何だろう」と思いながら、次のビジネスを探していた。

そんな中、ぼくが目をつけたのは、ヨーロッパから高級チョコレートブランドを日本に持ってきて売ることだった。

これまでマーケティングで会社を大きくしてきた自負もあったので、「デパ地下に入れたら売れるだろう」と思ってやってみたら、見事に売れず、3年ぐらいで7〜8億円もの赤字を出してしまった。ある意味、初めての挫折経験だったかもしれない。

そこで、売り方を変えるための情報をもう一度堀り起こすために、仕入れをしているヨーロッパのチョコブランドの名家のところに出向いて、当主にインタビューをした。そのときに、言われたのが「売れない理由は、お前がブランドってものを分かってないからだ」という言葉。そして、そのあとに言われたことが、自分にとってはさらに衝撃で…。


ブランドプロデューサーという仕事をしています。

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はじめまして、久々野智 小哲津(くくのちこてつ)といいます。上に書いたように、ぼくは元々は起業家として一つの会社を経営していましたが、いろんな経緯を経て、現在はブランドプロデューサーという仕事をしています。

これまで、海外ブランド、国内の人・もの・企業・番組・イベント・TVCM・広告など、130以上のプロジェクトを担当し、現在も上場企業や業界トップ企業のブランド顧問を務めていますが、この仕事をはじめるまでは「ブランディングとは何なのか」を全くわかっていませんでした。

今回は、営業やマーケティングに頼って、事業拡大をしてきたかつてのぼくのような中小企業経営者の方々に、ぼくがブランドづくりについて知ることになったきっかけについて、少しお話できたらと思っています。


「美味しいか、美味しくないかは重要なのか?」

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ぼくが扱っていたチョコレートは139年の歴史のもとに4代続く直系一族のチョコレートでした。

日本人って、さらに美味しくなりましたってことが好きじゃないですか?性能とか、何とか成分配合とか。「こういう原材料をこれだけ使ってるから、すごく美味しいんです、ちょっと食べ比べてください」的な。

だから、ぼくもどうやったらこのチョコレートの美味しさをうまく表現できるだろうと模索して、上に書いたようにヨーロッパの当主に再度売り方のアイデアをもらいに行くことにしました。その当時、日本のコンビニで売れていた人気のチョコレートを持って。

早速、当主に日本から持ち込んだチョコレートを試食してもらい、「これらに勝つためには、味の説明はどう打ち出すのがいいんでしょうか?」と聞くと、「結構美味しいじゃん!で?」みたいな反応。(笑)

しまいには、「美味しいか美味しくないのかは重要なのか?」みたいなことを言い始めて、はじめはまったく意味がわかりませんでした。

「大事なのはそっちじゃないだろ?」とまで言われ、まったく話がかみ合わない。すると、当主はこんな話をはじめました。



うちは創業139年で、戦争のときにドイツが攻め込んできたときに・・・

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「うちはこの商売を139年やっているんだ。ドイツとフランスが戦争したときに曾祖父ちゃんが工房でチョコレートを作ってたけど、ドイツ軍が攻めてきたときに、戦争の途中でも逃げないで作ってきた場所でまだやってるんだよ」と。

「日本のチョコレートもなかなかだけど、うちは”そのチョコレート”だ。”その製法”だ。だから”このプライス”だ。お前にはそれがわからないのか?」という感じで、やや怒り気味に、不思議なものを見るような目で、こっちをまっすぐ見て話してきたんです。

そのときに、ぼくは気づきました。日本人はものに魂が宿ると思っていて、それはそれで素敵でいいけど、彼らは「もの」を売ってる気がまったくないんだなってことに。

「なんで美味しさのことを言わなきゃいけないんだ」って、彼がぼくに言ってきた意味は、「説明説得をやめて、背景だとかポリシーだとか、スタンスだとかを伝えて、それが合う人に売りたいんだ」って話だということが徐々にわかってきました。

スタンスが合わなかったら買わなくていいんだ。このスタンスとかセンスとかポリシーがわかんないのか。おとといきやがれこのやろーって感じなんです。(笑)



利益をたくさん乗せてもぼったくりと思わない理由

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売り方の発想が180度違えば、値付けをはじめとして、商売に対する考え方もまったく違いました。

日本人って、商売やるときに、たとえば革小物を売りますってなったら、革の原価と自分の作業賃に利益を1割ぐらいのせるって感じが多い。積み上げ原価計算という考え方です。

革の原価と作業賃で8000円ですってなった場合に、日本人は1万円で売るのがいいってなる。なぜなら、それ以上取ると暴利貪ってる、ぼったくってるって感じるので、大きな利益を乗せることがメンタリティー的にできないから。

でも、ヨーロッパブランドってそもそもの考え方が違っていて、彼らは8000円の原価と工賃だったものを10万円で売る。92,000円利益取れっていうのを当たり前のように言ってくる。それがブランドだと。

ぼく自身も、最初は「えーそんなの納得させられるのかなー」って思ったんですけど、「うちはここまで30年やってきてるんだ。ここまでくる中で、こういう人も買ってくれた、王族も買ってくれた。そういう方々の信頼が乗ってるだろう。だから、製造原価とか関係ないんだ」って話なんですよ。

さらに彼らの考え方は過去からの歴史の積み重ねに限らず、未来のことにまで及ぶ。信頼を大事に売ってきてるから、例えば革小物を売ってたとしたら、「革小物が壊れたら直すだろう?でも壊れてうちに来るのが、30年後になるもしれないから、30年後も技術残さないといけない。そしたら孫にお金あげないといけないだろう。だから、孫の代までのお金を乗せさせてもらってるけど何がわるいんだ」って感じなんですよ。

日本人のもってる常識とかカルチャーとか強さはその真逆。日本人の、自分で手で作って頑張ってる方って、あんまり利益乗せすぎると暴利貪ってるっていわれるから、利益薄くする。だからクオリティもあんまりあげられない。死ぬほどがんばって働く、のサイクル。


”ルーツ・ヒストリー・ポリシー”を中心に据えることで競争から抜け出す

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ぼくもそのときはまだ言語化できなかったんですが、あとあと分かったのは、ヨーロッパブランドは、ルーツ・ヒストリー・ポリシーを説明して、それを付加するからこの価格で買ってねっていう考え方にもとづいているということ。この考え方が一番大事なのは、機能説明とか用途説明とか、便利とか便利じゃないとか、いわゆる相対比較競争軸に乗らないってことだと気づきました。

実際に、何度か当主のもとに通ってアドバイスもらったことを売り方に反映して、139年なんでやったかとか、古い道具つくって、いかに非効率か、とかをブックとか、いわゆる顧客とのタッチポイントといわれる接点を、全部そっちの方に変えました。そしたら、今までのうんともすんとも言わず売れなかったのが嘘のように売れるようになりました。

だから、誤解を恐れずに言えば、ヨーロッパブランドって、ブランドの名前をつけることで、楽して利益をいっぱい取ってる。ただその分クオリティに絶対戻そうと思ってるのと、30年後もそれをやろうと思ってるので、われわれのプライドとクオリティを守るっていう約束賃を、顧客に払わせろって考え方だし、それを払えって顧客にいうんです、対面でも。原価っていう考えがないっちゃあないから、クオリティもあげられるんです。


「本当のブランドとは何か?」

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宣伝とか、デザインを変えるところと、ブランディングをイコールにして話されることが多い。だから「うちの会社はブランディングに力を入れるぞ」ってなると、ウェブサイトや商品パッケージをかっこくリニューアルしたり、TVCMを打って認知を高めようとする。

でも、ブランドって本当は、「これじゃなきゃダメだ」ってものと自分との関係。これよりも高級なものや逆にコスパがいい安いものが出てきても、性能比較とか、金額比較とか、数値化比較できるものを超越して、「自分にとってはこれじゃなきゃダメだ」ってのがブランド。

なので、比較を超えてずっと買い続けてくれる、熱狂的支援者やファンを作れるかが、ブランドづくりのキモだと思っていて。広告を多く打ったり、見せ方を今風に変えても、それがファンの熱量をあげることにはつながらない。

では、強いブランド作りを、自社の戦略としてやっていくときには、具体的にどうすればいいのか?

そのことについて、お話する場をもたせていただくことになりました。

ぼくも元はベンチャー企業の経営をしていて、マーケティングで広告費をいっぱい使って、事業を成長させてきたので、マーケティングの重要性はすごくわかっています。

でも、実際にやったこそ分かるのは、マーケティングとか広告って、ドーピングみたいにやり続けないといけないということ。

だから、長く続く事業をつくろうと思ったら、マーケティングとは別に強いブランドを作りを戦略としてやった方がいいことが多い、と今は感じています。

ブランディングを抽象的な概念論としてではなく、売上に直結し、広告競争から抜け出す強い会社作りにつながる、「ブランドの本当の作り方」について、お伝えさせていただきます

■今回お話すること
・本当の「ブランド」とは何なのか?
・日本の常識とは真逆のヨーロッパのブランドづくりとは?
・ヨーロッパブランドが原価にどれだけ利益を乗せても愛される理由。
・値下げ競争の中で頑張り続ける負のサイクルから抜け出す方法。
・500億の地方スーパー売上を2倍近くに伸ばしたリブランディング戦略。
・比較競争から脱却し、無条件に選ばれ続けるブランドになるには?
・「ファン」ではなく「傍観者」を増やし続ける企業の失敗パターンとは?
・デザインやきれいな見え方にこだわってもブランドになれない理由。
・キラキラブランディングを今すぐやめた方がいい理由。
・「品質を高く」は思い込み、ブランドになるために手放すべきものとは。
・自社の本当の強みや特性を見つけ、おいしく調理し、世に出す方法。
・ブランドを誰よりも熱く支える「熱狂的支援者」を増やす方法。
・歴史がない新興企業が這い上がるためにいま必要なこととは?
・業界外から新規のお客さんを巻き込む、フロントエンドの作り方。
・大自然に囲まれた裏山に100人以上が殺到した企画の裏側。
・なぜ老舗盆栽屋さんが業界の枠を超えて引っ張りだこになったのか?
・空席だったアフリカンダンス教室の生徒数が3倍になった理由。


■ゲスト

ブランドプロデューサー
久々野智 小哲津さん(くくのちこてつ)

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「新しい時代をつくる」をテーマに、商品やブランドや企業の魅力を高め、世の中に届ける仕事。対象は、海外ブランド・国内の人・もの・企業・番組・イベント・TVCM・広告など幅広く、現在も15社の上場企業や業界トップ企業のブランド顧問などを務める。27歳で起業した会社の社長として15年で年商25億円、累計売上300億円企業に育てるが、さまざまな出来事がありその会社が他の人のものとなった逆境をきっかけに、ブランディングプロデューサーの道に進む。

◼️リブランディング事例のゲスト
東京裏山ベース代表
ジンケン (Kenji Jinno)さん

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東京の裏山遊び発明家。秋川渓谷の仮想テーマパーク「東京裏山ワンダーランド」プロデューサー。1978年生まれ、愛媛県出身、東京都檜原村(ひのはらむら)在住、2児の父。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を10年かけてドロップアウト。大学講師、MTB(マウンテンバイク)ライダー・バイシクルメッセンジャー・iPhone動画作家・エコツアーガイドなど多彩なバックグラウンドを持ち、2016年JR武蔵五日市駅前に「東京裏山ベース」(地域観光とアウトドアアクティビティの拠点となる店舗)をオープン。多摩川の支流・秋川渓谷エリアを「東京の裏山」と呼び、自然の中で手軽に楽しめるイベントや各種「遊び方ガイド」を揃えた仮想テーマパーク「東京裏山ワンダーランド」を夫婦でプロデュース中。主宰する「東京裏山大自然ナゾトキ」は初回にして参加者100人が集まる大人気イベントに。

■インタビュアー

ビジネスタレントプロデューサー
山田研太

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ビジネスタレント事務所を経営。ある分野で突き抜けた実績や技能をもつ人の天才性を編集し、メジャーにしていく仕事。これまでは女性起業家を中心に延べ1万人以上の個人事業主の経営支援にたずさわる。2020年秋にビジネス書の処女作となる『天才のつくり方(仮)』を、KADOKAWAから秋頃に出版予定。やまけんと呼ばれています。


■イベント概要

日時:3月13日(金)
 セミナー 14時〜17時
 懇親会  17時〜19時(同会場にて)

場所:TIME SHARING 渋谷青山通り3F
(渋谷区渋谷2丁目14−13 岡崎ビル)

参加費:15,000円(税別)
懇親会付き:18,000円(税別)
※オンライン参加も可能です 
定員:40名

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