■コラム21|リミッター

この項の最後に、「リミッター」的な、最大音量を意識するという事についても触れます。

普段から一定の音量ばかりで演奏している場合にはそれほど関係がないのですが、CubeMic収音によって安心して小さな音での演奏も収音再生出来るとなると、好ましい事に、フレームドラムを使って小さな音量から大きな音量まで様々な音量で演奏するという事が現実的になります。この時に、PAシステムからの要求として「今は小さな音で収音されているものの次にどれだけ大きな音が入力されるかわからない」という事は歓迎されません。この事でまずいのは、「どんな大きな音が入力されるかわからないから大きな音が事故の原因にならないように程々の音量からリミッターをかけよう」という対処をされるとか「大きな音として演奏された収音が小さな音として再生されてしまう」といった、演奏者の意図しない様な結果になる事です。これでは演奏者が小さな音量と大きな音量との差を活かした演奏効果を得たいと思っても、再生音では両者に期待ほどの差がなくなってしまいます。
この事への対応として第一に重要なのがPAご担当者とのコミュニケーションです。どれくらいの音の幅で演奏する事になるのかとか、大きな入力はどのように再生される想定でいるのかという事について、演奏者とPAご担当者が共通理解を持っておく事が肝心な事です。しかしそれを試みたものの「そうは言っても実際は無理だよ」などという風に受け止められてしまうなどして、いざという場面では事前の期待とは違った再生音になるようなPA操作になるのはどうにかして避けたいところです。

そのために演奏者が音作りとして出来る事はあるでしょう。それには前述のようなコンプレッサーを用いた方法などで音量にたよらずに迫力のある音質を得られるようにしておく事とか、やはりコンプレッサーを用いる事で実際に楽器で出る音量差よりも出力される音量差を小さく整えておきながらも音楽的な不自然さを生まないようにしておくとか、その他には、音楽的に不自然にならない範囲を見極めて自分でリミッターを設定しておくといった事などがありそうです。そういった工夫の上で「最大音量の演奏ではこういう効果があるようにこれ位大きく再生して欲しいが、それ以上の入力信号は出ないので安心して欲しい」とお伝えする訳です。

ここで肝心なのは「あらかじめ調整を奏者の意図で行う事で、あとから過度の制限を受けない様にする」という事です。しかし幸いにも奏者がどんな音で演奏したいかを良く理解してくれているPAご担当者がおいでの場合には、こういった事は無しにしてすべてお任せする方が更に良い結果が得られるかも知れないという事も言えます。線引きの難しい所ではあるのですが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?