第二部|【2】CubeMic活用研究|【2-2】フレームドラムにCubeMicを設置する際のあれこれ(つづき)

CubeMicの胴への固定方法についてのメモ

ドラム用のCubeMicは、そのマウント部材を通じ胴にねじで固定されるのが普通です。しっかりとした固定は、前述のワウや、演奏中にCubeMicが外れたりずれたりする様な事故を避けるために必要な事です。また、マウント部材と胴との密着は、胴から伝わる演奏音がコイル部周辺の磁性体に伝わり、これを収音するという事にも必要です。
一方で、これまで述べた様なフレームドラム独自の状況では、また違った活用の可能性もあるようです。
この稿では、強いクリップで挟み込んでマウント部を胴に留める方法と、コイル部を取り付けたクリップを用いて収音する方法とを後述します。

クリップを用いる方法は、共振磁性体が膜に貼付されている場合に限って適用可能な方法とお考え頂いて良いと思います。標準のアーチ状共振磁性体を備えたCubeMicを胴にクリップ留めしようとしても、膜面に対して安定した状態で共振磁性体を保持する事が難しいですから、良い結果は得られづらいと感じました。
演奏性や楽器ごとの特性に合わせた設置を第一に考える場合にはやはり、ねじで胴に固定するのが一番かなと思います。一方で、短時間に様々なフレームドラムへCubeMicを度々付け替えたい場合や、最適な取り付け位置や取り付け距離を模索するような場合には、こういった一時的な固定方法を取り入れてみるのもひとつの方法かな考えています。


CubeMicのマウント部材やハウジングの選択や検討点について

CubeMicのマウント部材を試しに他の素材のものに換装してみたところ良好な傾向の結果が得られ、胴からの音を積極的に取り入れたいフレームドラム用途には、大変試しがいのある視点であるという事がすぐにわかりました。良い結果を得るための検討点になりそうな話題について、以下にいくつか挙げます。


1. ハウジングは標準のままか

CubeMicのコイル部とハウジングは一体化していますが、工作して全く分離出来ないという事はありません。
標準ではアルミ系の金属板が採用されています。アルミは丈夫で軽く加工性も良く、また磁性体ではありませんから、収音の妨げにもなりづらそうです(導電性はありますから、ノイズ防止の一助にはなりそうです)。
もしこれを変更するとすると、どうでしょうか。ハウジングが膜の共振磁性体からの反応を邪魔しない程度に、より多くの磁性体を用いた素材だった場合はどのような結果になるでしょうか。残念ながら私自身はまだ試すことが出来ていません。
磁性体がコイル部に近すぎますから、音質への悪影響も予想されます。そのため、あまり優先して試す様な事柄でも無いかなという風に思っているのが本音です。


2. マウント部材の材質

マウント部材は、材質によって伝達される音質が異なるであろう点と磁界への影響についての点でそれぞれ考える必要がありそうです。

まず、胴から得られる響きは、このマウント部分の材質によって大きく影響されるものと考えています。
特に楽器の胴とCubeMicのコイル部とを繋ぐ箇所の部材については、ここがコイル部と至近であるために、これが磁性体であるかどうかで得られる音質への影響がある様です。非磁性体を選択する場合には、後述する補助磁性体の採用とも勘案して選択してみて下さい。


3. マウント部材の形状

この件ではまず、胴とコイル部を渡して支える役目を担う箇所の部材の形状は何が良いでしょうか。板材か棒材か中空かという事で音の響きは異なりそうに思えます。
同時に、CubeMic全体が演奏時にも揺れずに設置されるためには、演奏時の運動に対して配慮がある形状である必要があります。薄すぎる板材や長すぎる部材はこの時の揺れの原因になる懸念があります(どうしても膜の中央部付近で収音したいという場合にはいっそ、膜面に平行して胴を直径で横断するようなマウント部材を渡して、ここにCubeMicを設置するのもひとつの方法かも知れません)。

伝達される音質の事は気になりますが、一方で、マウント部材の丈夫さを優先してこれを重くしすぎると、今度は楽器全体の演奏性が損なわれるかも知れませんし、実際にはあまり気にならないかも知れません。
マウント部材についても、楽器全体のバランスを考えて選択したいものです。

つぎに、マウント部材の中でも直接に胴と接する箇所についての話題を扱います。
胴にねじ留めするにあたって、接地面積を小さくする場合と、ある程度広く取る場合とでどちらが良い結果になるでしょうか。また、胴とCubeMicとをクリップ留めする場合でも同様に、胴とマウント部材とが少ない面で接地する場合と、より多くの面で接地する場合とではどちらが良い結果になるでしょうか。

私の場合、胴を挟んでねじ留めから真っ直ぐに伸びたマウント部材(この時は高ナットを使用しました)がそのままCubeMicのハウジングのねじに接続されているという組み合わせを試したのですが、なんだか胴からの中低音成分が多いように感じられて、結局この方法は採用しませんでした。軽量で見た目がすっきりとしている点がとても好ましかったのですが。この事に加えて、胴のエッジ付近に穴開け加工する事は多くのフレームドラムで構造上不可能な事がほとんどですから、CubeMicを膜に近い位置に設置してねじ留め穴をエッジから少し離れたところに空けるためにも、胴への接地部には板材を採用するのが、汎用的には良いように思われました。

その他の場合としては、鉄の比較的薄い板材で接続してみたところ、胴からの響きは良い様に思われたのですが、マウント金具のたわみがあり演奏時にCubeMicの揺れを生じたため揺れを防止するための対策が必要という事がありました。


4. 補助磁性体について

胴からの振動をコイルの出力に反映させるためには、この振動に連動する磁性体が、コイルの至近の適当な距離に配置されている必要があります。膜の共振磁性体以外で収音結果に関係する磁性体を、本稿では「補助磁性体」と呼びます。
磁性体のマウント部材やねじやナットといった機能部材も補助磁性体の役目を果たすため、反対にこれを避けたい場合には非磁性体素材のねじやナットを選択します。手軽にアルミ、樹脂などのものが購入出来ます。取扱店は多くないようですが、真鍮のものもあります。ステンレスには磁性体の性質のものとそうでないものがあるので、どうしてもという場合には詳しく見てから購入する必要がありそうです。

一方で胴からの響きをコイルの出力に多く反映させたい場合は、磁界への影響が強く好ましい振動を受けると予想される位置に、磁性体を意図的に配置します。CubeMicの標準ハウジングにはM3とM4のねじがそれぞれ備わっていますから、この規格にあったねじでワッシャーなどを適宜配置するとか、通常の六角ナットの代わりに蝶ナットを使ってみるなどしながら、出力の変化を確認されるのが良いと思います。

マウント部材の工夫の他に補助磁性体の取り付けを様々試してみても胴から得られる音声が膜から得られる音声に比べて小さいという事があるかも知れません。その時には、コイル部をより膜から離れた位置に設置して両者のバランスを調整するなどします。また、胴から得られる音の中で例えば胴を叩く音は良いのだがジングルの音だけが小さいという事なら、楽器そのもののバランスを調整するとかして、よりよい結果が得られるようにします。

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