補足部|【1】音響処理についての茶飲み話諸々|【補6】オーディオインターフェイス周辺の話題(つづき)

フィジカルコントローラー

コンピューターを演奏に使用する場合の機器の拡張性は、多くの場合にMIDI情報のやりとりをもとにしています。共通規格を仲立ちとしているので、ハードウエアについてもソフトウエアについても、個別の場合に合わせて様々なメーカーの製品同士を適宜接続することが出来ます。
これは、奏者の需要に適した環境をつくりやすいという事です。また、システムを部分的に他の製品に入れ替えるという事もしやすいです。

MIDI情報をコントロールする外部機器の例として、先にペダルやボタンを挙げました。これらは「フィジカルコントローラー」というカテゴリーで呼ばれています。ボタンやペダルの他にも、鍵盤楽器として使用出来るフィジカルコントローラーや、打楽器として使用出来るフィジカルコントローラー、オーディオ機器のノブやフェーダーといった操作子を備えたフィジカルコントローラー、DJ機器として使用出来るフィジカルコントローラーなど様々があります。

フィジカルコントローラは、例えばミキサーの音質調整ノブとして使います。例えば、ペダルエフェクターのオンオフボタンや、音質切り換えボタンとして使います。また、楽器持ち替えの間の消音ボタンとして使います。場面に合わせて用意した音色や楽器に合わせた音作りのセットに切り換えるボタンとして使います。

これらをあらかじめ決まったボタンと機能の組み合わせとして準備しておくことで、現場ではスムーズな操作を実現できます。コンピューターの画面をずっと操作しているというのが似合う演奏家もいますが、生打楽器の奏者もそうとは限りません。また、演奏会場の照明下では存外に操作しづらくいっそう見栄えがしないという事もあるかも知れません。しかし適切なフィジカルコントローラーが用意されていればそういった点は心配無くなります。
フィジカルコントローラーには、ボタンが多いもの、ノブが多いもの、足の操作で多くの事をまかなえるもの、小型で持ち運びしやすいもの等、用途に合わせて様々な製品が販売されています。打楽器奏者というのはとにかく荷物が多くなりがちですから、自分に合ったコンピューターとオーディオインターフェイスとフィジカルコントローラーのシステムを選ぶ事で、楽器用エフェクターを組み合わせて用いるよりもずっとコンパクトかつ使いやすいシステムを実現できるかも知れません。
もちろん、コンピューターとオーディオインターフェイスだけのシステムならさらにコンパクトなのですが、必要な機能をすぐに目の前の操作子で扱えるというのは、比べられないくらい便利で、また安心感がある事ですから、もうひとつ機器が増えたとしても「これが無いとあるとでは大違い」という事になると思います。コンピューターのシステムには、おすすめですよ。


プラグイン(VSTやAU)

DAWに楽器機能やエフェクター機能を付加するための規格があり、その中でWindows環境で有力なものがVSTで、Macintosh環境で有力なものがAUなので、同様の規格は他にもあるものの、ここではこの有力なふたつの名称だけ挙げておく事にします。
機能を付加するためのソフトウェア製品の事を「プラグイン」と呼びます。VSTもAUも、先の項で述べたMIDIと同じように、機能と機能とを繋ぐ仲立ちとなるプラグイン規格の名前です。

先にDAWの紹介をした項で「DAWのパッケージにはアンプやエフェクターや楽器が含まれている」という事を述べたのですが、こういったVSTやAUといったプラグイン規格に対応しているDAW製品では、更に他のプラグインエフェクターやプラグインアンプを付加して、より目的に合わせて拡張したシステムを使用する事が出来ます。

例えば、あるベースギター用の総合的な音作りをするためのプラグインエフェクターを用いると、太鼓の音作りが簡単な操作で良い結果を得られるという事があるかも知れません。

例えば、収音されるリアルタイムの演奏に合わせてあるプラグインのシンセサイザーやドラム音源が音量や音質変化を伴うようなノイズ音を演奏するとしたら、サワリのついていないドラムでまるでサワリついたドラムのような演奏を実現出来るかもしれません。また、フレームドラムを演奏する事で、ホワイトノイズの様な音色を演奏する事も出来るかも知れません。

例えばあるドラム音源のプラグインを使って、実際の演奏に強く甲高い成分が含まれる時だけ同時にスネアドラムのような音を演奏するようにしたら、フレームドラムひとつでまるでセットドラム奏者と一緒に演奏しているような効果を得られるかもしれません。それがシンセドラムの音なら、またちがった風な効果にもなりそうです。

もちろん、より基本的な音作りという意味でも期待出来ます。
もともとのDAWパッケージのものよりも、より細やかで強力な調整が可能であるイコライザープラグインを取り入れる事も出来ます。他の人と同じイコライザーを使用していれば、ノウハウの交換もしやすくなるかも知れません。また、イコライザーでの音作りを補佐するためにアナライザーという、音の振る舞いを視覚化するプラグインを導入すれば、作業が進めやすくするという期待も出来ます。

こういった基本から応用までの拡張性は、コンピューター環境で運用する強みと言えます。

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