25SEP16 谷中へ尺八作り体験に行ってきました
なんとなく笛にも興味があり、最近お知り合いになった尺八奏者の方に「ヤフオクに随分安い値段のものもあるのですけれども、ああいうのどうっすかね」みたいに世間話的に相談してみたところ、「谷中で自作を手ほどきしてもらえるよ、前に参加した事があるんだけれど楽しかったよ」と別の方からのお話しが差し込まれまして、結局その3人でお訪ねする事になりました。
過日、日曜日午後。谷中。折角なので特にまとめないタイプのレポートを書いて残しておきます。ネタバレアリというやつですので、適宜ご対応願います。
さて伺いましたのは、ユニークなご営業に何度も雑誌やテレビ番組やネットサイトでも紹介されているコムソーコヤさんというところです。
01) 住所まで行きますと、入り口の目安に看板が出ています。僕は、地下鉄の千駄木駅から行って、JR日暮里駅から帰りました。
02) 看板の反対側です。
03) 必要な道具は全部貸して頂けました。民家の和室の一室で、養生シートを広げて作業しました。竹の切り屑や出っ張りが刺さったり引っかかったりしても大丈夫な程度の普段着で、ごく気軽に参加する事が出来ました。
2人は約束の時間通りに伺い、僕は少し遅れて参加した格好です(ははは)。そこに丁度おひとりで参加の方がいらしたので、すこしづつ作業のタイミングがずれながら、4人でご指導頂きました。
04) 写真は無いのですが、まず最初に材料の竹を選ばせて頂けます。現在の選択肢は5000円、7000円、10000円とのこと。長かったり根の部分で膨らみがあるなどするものは高い方に入るみたいです。以前はもっと安い値付けのものもご用意されていたそうで、検索されたネット記事などにはその事が書かれていたりするのですが、ある程度水準を維持できる様に、今はおやりになっていないとの事でした。
今回の3人はそれぞれ「ちょうど短めの管が欲しかった(尺八奏者)」「以前製作したものと違うキャラクターを狙いたい。普段親しんでいる欧州のメロディーを演奏したい(製作経験者)」「C管のイメージで、身近で簡単な合奏に使えたら嬉しい(僕)」という、初めから注文の多い者共でありましたので、それを踏まえてそれぞれにアドバイスをいただけて、嬉しかったです。
ちなみに、コムソーコヤさんのご方針としては、他の人との演奏の上手い下手の違いではなくて、それぞれの人自身の毎回の違いを味わって楽しむのが良いという事を掲げていらっしゃるそうです。だから素人がもし完璧ではない楽器を作っても、それを出発点にして楽しんだり取り組んだりすることが出来るのですよ、という風に勧めていらっしゃるようでした。それが良くて、こちらで以前に尺八作りをされた方々がその後もお訪ねになっては、一緒に演奏したり指導を受けたり皆で山に竹をとりに行ったりと、様々お付き合いを続けていらっしゃるんだそうです。良い話です。
さて竹ですが、僕には結局、まずは標準的な一尺八寸の長さ(指穴を全部塞いだ一番低い音がDの管)で宜しいでしょうというアドバイスになりました。
尺八という名前の通りの「一尺八寸」を取る事が出来る長さで、見かけの色合いも何だか良さそうなものが5000円のものの中にあり、お店の方からそれをお勧めいただきました。すっとした形で、一番上と下を入れると五節のものです。素直な感じの楽器になるのではないかとの事でしたが、楽器になったものについて同行の演奏者氏も「素直で良い」と言っていたので、その通りになったみたいです。
05) まず最初の作業として、竹の中の節を、鉄の棒で突き破ります。この時突き破った穴は、特に調整が必要なければ、突き破った時のまま楽器に活かされます。同行者はピッチや音色の調整の要求が具体的だったのであとから整える等していた様なのですが、僕のは、多分結局この時のままになっています。内側を慣らさないというのには、少し驚きました。面白いです。
(とはいえ、ワイワイと進めたので、作業の細かいところまではよく覚えていないのですが。)
ところでこういう、竹の内側に構造を作ったりせず、漆を塗ったりせず、管全体を継いだりしない尺八を、「地無し」と呼ぶのだそうです。地無し管は、合奏用の楽器として整えるのには様々難しいので、主に独奏用と位置付けられているような事を、あとからケンサクして読みました。成る程です。
06) 次に、吹く側にマジックペンでケガキをしてもらいます。寸胴に切り落とす印が節から適当な距離でぐるりと描かれていて、半円は、斜めに切り落とす部分です。
07) まず、寸胴に切り落とします。竹用のノコギリは竹を切り易いので、使っていて気持ち良かったです。
ここだけではないのですが、ノコギリの切り込みの最初は、すべてお店の方が付けて下さいます。滑るもんね。機能の輪郭にかかわる大事なところはもう、お任せです。安心です。
08) 次に斜めの箇所を切り落とし、そこをヤスリとのこぎりの両方のような、鬼おろしのような工具で、どんどん削り落としてかたちを追い込みます。両側で荒目と細目になっているのですが、これもまた、とても気持ち良く削れるので面白かったです。
09) ここでけずる目安は、端面の円から、一段落ちる感じで半円が現れる、この写真くらいまでです。この斜めの部分の向こうから息を吹き込んで、この斜めの部分で息が笛の中と外とに綺麗に分かれる時に、息が音になるみたいです。リコーダーとかも、吹くところのちょっとだけ下に、斜面のある小窓がついていますけど、あれと同じ役割です。笛の大事な箇所です。
10) 続けて吹き込む側も少し斜めに落とし、また、ぐるりの角も丸めます。もう笛になったお手本を横に置いて「これと同じような感じになるように整形してみてくださいね」という風でした。
これもまたおおまかな形を取る事が出来たところで、お店の方が現実的なフォローの作業を加えてくださいました。
同行の演奏者氏は筒ならなんでも吹いて鳴らす、みたいなところがあるのですけれど、作業がここまで進むと、僕でも笛として鳴らせます。嬉しいです。
(と、大きな事を書きましたが、実際は素養がないので、僕では楽器の音はしないです。ピューという事があるので、なんだかそんな気になれるっていう程度です。)
作業がこのあたりになると、もしかしたら平らで目の細かいヤスリも使って整えたりもしたかも知れません。ただ、形が変わるほど整えたりすればもちろんなのですが、穴の周辺が少し滑らかになったくらいでも笛の機能性が変わるそうなので、「今良い具合だな」と思ったらそれ以上整えないのが良い選択だという事でした。
(一方で、長期に渡っていつまでも整え続けながら追い込んでいくのも楽しいですよ、というお話もありましたけれども。)
11) さてその次に、先ほど大きく斜めに削り落としたところ(歌口と言うんだと思います)の内側すぐのところにある節を、歌口の側だけ削って薄くします。工具は円柱状のヤスリです。
これもまた、すでに楽器になっているものを指で触らせてもらいながら「だいたい同じ感じに」「2mmくらいの厚さね」という風な作業です。
とはいえ思い込みもあり、まったく平たくするのを目指して進めていたところ、節の出っ張りは少し残っているのが、ここでの尺八らしい仕様になるとの事なのでした。結果の機能としてはNGのものにならなかったのですけれども、部分の作業としてはわずかにやりすぎだったみたいです。
でも、そういうところも程々で止めて下さったので、セーフでありましたね。
この作業までは少し笛っぽい音を出せていた僕ですが、せっかく歌口が出来た途端、簡単には音が出せなくなりました。笛に笛の自覚が芽生えて、野蛮な吹き方を受け付けなくなったのかしら。もちろん、同行者達は(ご自身の製作に忙しいのですが(笑))これも軽々と鳴らしてしまいます。僕ひとりでは不安だったかも知れないですけれども、同行者おふたりが頼もしいので、そのあたりは経過に太鼓判付きの大舟感です。
音の出方は十分かな? とか、ピッチは十分かな? という時に、セカンドオピニオンサードオピニオンとありつつ、お手本の音まで聴いておけるのですから、これがもう、それだけでなかなか楽しい訳です。
つくづく良いメンバーで伺えました。僕徳、というやつです。
12) そんな訳で、ここまででももう笛の完成なのですが、ここからは更に、この竹笛を尺八に近づけていく作業が続きます。
まず吹き口側の端面から一尺八寸のところにケガキをしてもらい、その尻端部の線から測った指穴の位置に印を付けて、ハンドドリルで10.5mmだったかの穴を開けます(決まった一箇所だけ、10mmとか、ちょっと小さくするのが良いそうです)。
製作した尺八の指穴の数は、表側に4つ、裏に1つです。
あまりあてにはならないところですが、僕のメモによると、切り落とした管尻から12.285cm戻ったところに一番下の指穴の中心、そこから5.46cmごとの3箇所に残りの表の指穴の中心がきます。
また、裏側の指穴の中心は、表側一番上の指穴の真裏から更に上に2.73cmのところとメモにあります。
(それぞれの数字は、前に出てくる数字の1/2の距離なんですね。(知らんけど!))
穴あけの時の写真はありません。残念。
13) そして最後に、一尺八寸の印の長さで切り落とします。
内径が均一でない事の他にもいくつものユニーク要素があるので、ちゃんと測ってちゃんと開けたからといって、なかなか均等な機能には結びつかないそうなのですが、今回の僕のは、最初にお勧めいただいた竹が要望と良く合っていたのか、この時点で「まあ良いんじゃないの?」という音程機能があるみたいでした(サードオピニオン判定)。
他のお二人は要求がはっきりしているので指穴を開けてからも随分、ヤスリや棒を差し込んでは内径や指穴などを少しづつ色々整えていた様子だったのですが、僕は「触らぬ神に祟りなし」的なアレで、この後は自分では、少しヤスリをかけた程度でほとんど何もしていません。ザザーッという感じでお店の方に微調整作業をしていただいて、そのままだったと思います。
もうお一人の方も僕と同じ一尺八寸をお作りになっていたのですが、やはりそれほど困っていらっしゃる様な事もなかったので、標準サイズには標準サイズの利があるのかもなー、という感じでもあります。
(ところで「偶然テレビ番組で紹介されているのを観て」フットワーク軽くいらしたというもうお一人の方なのですが、全くご経験がないとおっしゃるのですが、音を出せる様になるのも良い音になるのもすごく早くて、吹く姿も様になっていて、僕は「わー才能があるというのはこういうのか! 楽しんでいらっしゃるみたいだし、ぜひお続けになって欲しいなあ。有名になったらサインもらお」って思いました。
もともと「きっと僕は音はちゃんと出せないぞ、そのつもりで行くぞ」「同行のおふたりは経験者だから僕だけ音が鳴らないぞ」という構えで出かけていたのでこの日は大丈夫だったのですが、もしそうでなかったら、隣でおおいに焦ったんだと思います。けれど、この方の馴染みの良さには横で拝見しているだけでウキウキしました。立ち会えて、ラッキーでした。)
14) 途中十分に写真が揃っていませんが、完成は次の写真のとおりです。翌日に少し音が出る様になってきたのでチューナーで計測したところ、丁度442HzでのC#管という感じでした。吹き方が安定してくると、また違うかもしれません。指穴の方の音痴加減については、まだうまく吹き分けられないので、よくわかりません。全体の音程は管の長さですが、指穴の大きさを大きくしたりすると、指穴ごとの音程が変わるそうです。
とはいえこの笛は、あの人達が大丈夫と言っていたので、おおいに大丈夫なんだと思います。やったぜー。
さて、最後に演奏動画を載せるところですが、まだ吹けません。
持ち帰って、初めはつい金管楽器の吹き方をしてみたりして遊んでしまいましたが、一日経って、だんだん尺八だな!という音がする様になってきました。嬉しいです。
普通は、何も押さえないところから音を出し始めるのが良いそうです。僕は今、全部押さえるところから始めてみているので、これを少しずつ広げて行きたいと思います。
面白いです。
ご報告おわり。
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