第二部|【2】CubeMic活用研究|【2-1】CubeMicの構造

オフィシャルなものではありませんが、私が見たまま思ったままを書いて挙げるという風にして、CubeMicの構造を紹介してみます。

現在のCubeMicは、大体以下の様な部分で構成されています。
1. コイル部
2. 共振磁性体部
3. コイル―端子間ケーブル
4. 端子部
5. ハウジング部
6. マウント部材

ひとつずつ紹介しながら見ていきます。


1. コイル部

磁石とコイルといった要素で構成される、マグネティックピップアップ機能の主たる部分です。CubeMicの名前通り立方体に近い形をしています。発音する膜に対して垂直になる方向に鉄芯がありそのまわりに同心円状のコイルが配されているものだと想像されます。
これらが黒くシーリングされて、金属板製のハウジング部で囲われて一体となっています。


2. 共振磁性体部

標準のドラム用CubeMicでは、磁性体の薄板がコイル部の膜側の面を覆う形でアーチ状に取り付けられています。このアーチ部が適切にドラムの膜面と接する様にCubeMicを設置します。また現在のバージョンでは、コイル部とアーチ状の共振磁性体との間を、金属製の小さなコイルバネが支えるようになっています。ハイリーズ社からは「この金属バネの導入によって、CubeMic性能のセットドラムの膜面に対しての最適化が大きく進んだ」という内容のアナウンスがされています。

各部分が担っている役割について述べます。
発音体に共振した磁性体の動きが、発音体の周波数(:どんな音か)と運動の大小(:音量)をコイル部周辺の磁界変化として伝えます。
コイル部では磁界変化に対応した電気信号を出力します。標準では共振磁性体の薄板はコイル部を包むハウジングにアーチ状に固定されていますが、固定部から信号を伝えているという事ではありません。コイルの至近で磁性体の位置が変化するという事が、コイルからの電気信号発生の原因になっています。
また、標準のシンバル用CubeMicでは、共振磁性体の取り付けはアーチ状ではなく、薄板の片側をCubeMicのハウジングに、もう片側をシンバルにそれぞれねじ固定するようになっています。

CubeMicのコイルは磁性体が発音体に対応して振動する事で電気信号の出力を得ますが、それ以外の、例えば取り付け不備などを原因とする他の振動が同時に収音されると、ワウと呼ばれるような不要の音量・音質変化が生じるので、好ましくない収音結果に繋がります。
設置にあたっては、コイル部と磁性体との距離に関して発音体の振動以外の変化をしないように、留めねじの緩みやマウント金具のたわみといった原因を排除するように注意します。


3. コイル―端子間ケーブル

原理上、コイルは2本の細い電線を出力として持っています。また、電気信号をCubeMic外に伝送するためのケーブルは市販の規格品で、一般に2本もしくは3本、あるいはそれらにノイズよけの構造が加わった構造が、取り回ししやすい1本の製品になっています。現在のハイリーズ社標準は、3本線の伝送線に対応したキャノン端子(XLR端子)が採用されていますから、コイルからの2本の出力電線を端子部で適宜配線します。コイルに生じる電気信号は2本の細い電線間で主従関係はなく、同等です。


4. 端子部

現在のハイリーズ社標準は、キャノン端子と呼ばれる、抜けに対してのロック機構が備わった端子が採用されています。市販のマイクロフォンに多く採用されている端子と共通ですから、対応ケーブルは入手しやすいと言えます。
一般には導電体(:電気を通すもの)である事と磁性体である事は別の観点ですが、端子部やその固定部材には多くの場合で部分的に磁性体が含まれており、またそれらはコイルの至近に配置されますから、演奏などによる端子部の振動はコイル部周辺磁界の反応として出力電気信号に含まれます。つまり、端子部の構成を選択する事も、CubeMicで収音される音質などに関係があります。


5. ハウジング

コイル部をびったりと包む金属板の構造に、M3規格とM4規格のねじが取り付けられています。現在は、金属板の構造には磁性体ではない素材が採用されており、また、ねじには磁性体の素材が採用されているようです。
M3のねじがふたつ備わっている事で、共振磁性体をアーチ状にしてハウジングに固定する事が出来ます。
M4のねじがひとつ備わっている事で、マウント部材とコイル部とをしっかりと固定する事が出来ます。
ハイリーズ社標準の部材を用いないという場合には、このM3のねじを活用してCubeMicをマウントしても特に問題ないです。


6. マウント部材

ハイリーズ社では取り付け楽器に合わせて何種類かのマウント部材が用意され、それぞれ別のCubeMic製品として販売されています。これらをそのまま用いて運用に丁度良い場合にはこの点についての話は終わりなのですが、本稿で話題にしている様なフレームドラムなどの楽器では更に工夫をして楽器に取り付ける方が良い結果が得られやすいようです。

工夫が必要な場合とは例えば、あるフレームドラムのチューニング機構や発音機構が膜のすぐ側に備わっているためにCubeMicを楽器の設置するためには標準の物とは長さや大きさの異なるマウント部材が必要とされる場合かもしれませんし、マウント部材を伝わる振動がよりその楽器の音らしいものになるように、異なった素材が必要とされる場合かも知れません。

素材に関して言えば、今のところはアルミ系の部材よりも、鉄系の素材の方がフレームドラムの収音向きではないかなという感想を持っています。アルミは軽量で丈夫で加工性も良く、また磁性体でないためにコイルの磁界への影響が無いといった風に利点が多い素材ですが、これらは選択の決定打というものではなく、どうやら楽器ごとの特徴に合わせた総合的な判断が必要になりそうです。
ちなみに既製品でねじ穴の用意がされた金属部材としては「表面加工された鉄」「ステンレス」「アルミ」あたりが種類豊富で手に入りやすく、一部で「真鍮」や「銅」などもあります。その他となると板やパイプ、棒といった素材を用いた自家工作という事になりそうですが、私はまだこの分野での知見は多くないです。

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