おわりに

最後になって自己紹介的な事も述べます。

私は今でも特に優れた奏者ではないのですが、打楽器の演奏に取り組み始めた早い段階でフレームドラムと出会って以来、遠巻きの興味と第一印象の興味とが、なぜかずっと途切れないまま過ごして来ました。
パンデイロ、タンボリン、タール、ボーラン、タンバリン、カンジーラ、リク、パンデレータといった、それぞれに似た形で、しかしそれぞれに個性的な楽器達をなんとなく眺めながら、「これらへの愛着と、普段身の周りで身近な音楽との接点を増やせないものかなあ」という事を、やはりなんとなく考えていました。
そこで普通なら専門の先生に就いて実践を深めていくか、あるいは時間と共に興味を失っていくかのどちらかなのかも知れないのですが、私の場合はなぜか、実践は乏しいままでしかしこのドラム達への興味は無くならないのでした。何だか純愛ですね(良く言えば)。

とはいえ他の打楽器にも興味を持っていましたから、そういった楽器を使って、友人達とバンドやセッションをして過ごしていました。

その時期の途中で、ブラジル人のマルコス・スザーノさんが、パンデイロとコンタクトマイクと音響上での積極的な音作りの組み合わせを用いて、伝統的な打楽器による現代的なアンサンブルを実践されているという事を知り、その事に大変惹きつけられました(もちろん彼のご活躍は彼の音楽やお人柄があっての事なのですが、それは差し引いても魅力的な事でした)。
その後立て続けに、インド音楽やケルト音楽といった他の領域でもそういった活動をされている方々がいらっしゃる事を知り、それでなんだか当然の事だという気持ちで「フレームドラムの様な小さな音量の楽器はマイクロフォンで近接収音して音響処理するものだ」という風に考えたり、また実際に試したりするようになっていました。

本稿で述べたのは、大体その過程で経験した一般的な事ばかりで、今回急な思いつきでタイプし始めるにあたっては特に調べ直したり検証し直したりはしていない内容も多いのですが、ひとつひとつの事柄が詳しいとか専門的であるというよりも、これらの事柄が一式になっているという事が実践的であり、また、大事な事ではないかなと考えて、書き進めました。

CubeMicについては、販売開始の少し前に現ハイリーズ社の友田さんがSNSを通じて「もしこんな製品があったらあなたがどんな活用をしたいか教えて下さい」といったアンケートをされていらして、そこで知りました。
実際に発売を開始されてからもライブハウスで話しかけさせて頂くと気さくにご対応下さる方で、私が「スネアドラムの収音にあたってはスネアサイドにもCubeMicを設置するとより良い結果が得られないですか?」というような事をお尋ねすると、その後製品に反映させたりという事をして下さいました。

とはいえ私がCubeMicを入手したのは少し後で、入手してからもしばらくは、最適と感じられる使い方を見つけられませんでした。魅力を感じながらも、ちょっと気が向くと試して、またしばらくそのままにしてという事をしていました。セットドラムには良いという選択がフレームドラムには最適とは言えないという事について、解きほぐして理解するのに時間が掛かりました。エフェクターに関しては、コンタクトマイクで試していた時の感触がそのまま適用出来そうでした。

「はじめに」にも書いたのですが、時々、CubeMicをご存じながら「興味はあるけれど試したことは無い」という方とお話しする機会があります。「あれが良いという人は居るのだろうけれど、自分が使いたい場面に関しても良い効果が得られるのかが分からないからそれ以上は行動を起こしていない」というような感想を聞きます。それを聞いて私も、「それはそういうものかもなあ」という風に思っていました。

本稿は、そういう感想をお持ちの方のうち、音響のテクノロジーには明るくなく、しかしCubeMicやエフェクターをフレームドラムの演奏に活用出来たら良いだろうなあとお考えだという、たいへんニッチな対象を想定して書きました。ニッチすぎてそんな方は実際には存在しないかも知れませんが、「それには該当しないけれどCubeMicの事をユーザーの視点から知りたかった」とか「それには該当しないけれど打楽器のエフェクターによる音作りの話を気軽に聞きたかった」という方なら、もしかしたら我慢して読んで頂けるかも知れないなと少々贅沢な事を考えています。居るかなあそんな人。

ふふふ、居て下さい、お願い!
(そしてお友達になりましょう。)

各方面への感謝と共に
2015年3月

ヤマケン拝


(おわり)

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