12MAY16: 変わりフレームドラムの皮張り替えの件

知り合いの方の、ちょっと変わった仕様のフレームドラムの皮(ファイバークラフト紙のもの)が破れたところに立ち会ったのですが、ちょうどうちにそれくらいのサイズなら間に合うくらいのファイバークラフト紙が残っていたので、張り替えを請け負って、持ち帰ってきて、特急仕上げしました。

この楽器は、楽器本体のフレーム製作とドラム部の製作指導は音鼓知振の久田さんによるもので、その他のキューブマイク楽器関連の部分は、ハイリーズ友田さんの手によるものです。

作業の進行を途中から撮影しておいたので、まとめます。全体としては同じ様な楽器をお使いの方もなかなかいらっしゃらないでしょうけれども、部分的には他と同じ話なので、もしかしたらご活用なさって頂けるかもしれないです。

 ■

01)
まず、ネジや半田ごて作業が必要な部品を取り外しました。飾りのリボンもついていましたが、簡単に外れる作りになっていましたから、これも取り除きました。
破れた皮が張られたままの楽器を、しばらく水に浸して良く湿らせます。


02)
 次に、さっと水気を拭いただけの状態で、皮の貼り付け部分にアイロンをかけて……と進めようとしたのですが、なんとアイロンが故障の様でした。仕方がないので、ドライヤーを使って温めながら、また、すっかり乾いてしまったらまた湿らせながら、破れた皮を少しづつ取り除きました。


03)
これまでの運用されていた間に金具などが楽器を痛めてしまっていたので、ここで簡単に養生します。パテではなく、今回はタイトボンドです。タイトボンドはよく乾くとしっかりと硬くなり、カンナをかけたりもできるほどなのですが、少し黄色がかった色味やもとの木の質とは異なったツヤが残ります。写真はまだ全く乾いていない状態の時のものなので、特に黄色味が目立ちますが、重ねた量が薄い部分から、透明になっていきます。
乾燥には多少はドライヤーも使ったのですが、あまり温めるとグツグツとしてしまって気泡が大きく残ります。気長に、硬く透明になるように乾かしつつ、重ね塗りをしました。
しばらくかかりますが、タイトボンドを塗ったところが中まで十分乾いたら、ボンドで埋まってしまったネジ穴に再びドリルをかけたり、ささくれになっている部分が剥がれてこない様に削ったりまた埋めたりして、シェルの養生はひとまず終了です。


04)
シェルの径よりも余裕を持って大きく、ファイバークラフト紙を切り出します。今回は二枚重ね(2プライ)の皮に仕立てる計画です。同じ様な大きさで二枚用意します。これを風呂桶やバケツなどを利用して、しばらく水に浸します。ファイバークラフト紙は、十分水を吸うと柔らかくなり、また、大きさが少し大きくなります。その状態で楽器に張ると、乾いた時に縮み、鼓面がピンと張った結果が得られます。



05)
このあたり、写真を残す余裕があまりなかったのですが、一気に箇条書きにします。

・まずシェルの上部に、最上部数ミリを残してぐるりと一周、垂れない程度の量で帯状にタイトボンドを塗り

・丸く切り、十分湿らせておいたファイバークラフト紙の中央部を合わせてシェルにのせ

・(片面太鼓の場合には)クリップなどで向かい合わせの二カ所を、皮の皺がある程度均等に分散するようにしながら一周すべてを留め


・皮の上から強く紐で縛って、シェルの上端と皮とがぴったりするように、皮の端を引っぱったりしながらその隙間をなくし

・また、軽く指で鼓面を叩いて、シェル付近でそれぞれの音程がほぼ均等になるようにも気をつけながらやはり皮の端を引っぱって整えます。


この締める作業に普段使っているベルトが見当たらなかったので、今回は荷造り紐で代用しました。やり易くはなかったです(笑)。


05)
場合によりますが、今回は補強を旨としたく、ステープラーでぐるりと一周留めます。そのあとで、紐とクリップとを外します。この時点ではまだ皮は湿っています。薄い皮での作業の場合にはここまでの間に皮が乾き始めてしまう場合もあるので、その時には、スプレーやぬれタオルを使って湿り具合を維持しながら作業します。


06)
今回は特急仕上げなので、ドライヤーで少し乾燥させます。ここではまだ、本乾きではなく、全体が少しだけ、均等に乾く程度です。


07)
カッターナイフを使って(シェルに刃が触れてしまうのですがそれで良いです)皮の余分を切り落とします。軽く何度もなぞって切るのが良いようです。この時点では皮は完全に乾いおらず、まだ湿り気があります。タイトボンドもまだしっかり固まっていないので、皮とシェルとに隙間がある箇所については、押さえるなどして整えます。ステープラーが浮いている箇所は、叩いて納めます。


08)
さて、ここが少し珍しい行程です。今回は、二枚の皮の間にワセリンを挟み込む事にしました。広く塗り伸ばします。


09)
では、二枚目の皮も同様にして、貼る(/張る)作業を進めます。今回は、一枚目の(内側になる)皮の端を二枚目(外側)の皮の端が覆って留めるように、広くボンドを塗りました。


10)
一枚目と同様にして、二枚目も張ります
(ところで今回は、乾いた時にあまりハイピッチにならないように、張りすぎないようにしたいと思いながら作業しました。)


11)
紐とクリップとを外したところ。


12)
断ち切ります。まだ少し湿り気がある状態での作業です。

今回は高強度化を図りたいので、ステープラーを二枚目の皮だけの部分に関してもう一周させる事にしました。断ち切る長さには、そのための余分を確保します。


13)
ステープラー二周目実施

濡れタオルで皮の範囲の外のタイトボンドを拭って取り除きます。また、皮の浮き、ステープラーの浮きなどを整えます

このまま、良く乾かします


14)
しっかり中まで乾いたところで、飾りのリボンを巻きます。今回は、バラしの前の手法にならって、両面紙テープで一周留めました。また、リボンの末端に関してだけ、ステープラーで留めました。

ここまでで、フレームドラム本体部分に関しては完成です。


15)
ハイリーズ仕様の部分に関して、部品を取り付けます。写真はマウント金具と、スネア線装置。


16)
キューブマイクと(その皮側の影になって写っていませんが)共振磁性体も取り付けます。この作業には、配線の都合で半田付けが必要です。


17)
一応完成です。
音を聴いて、共振磁性体とキューブマイクの設置位置を微調整して、それで本当に完成です。



 ■

少しだけ、指奏と撥奏、ブラシ奏で試したところ、音量は抑えめで、スネアの音色には音量に応じた変化があり、ピッチは(まだ数日落ち着かせてみないとわかりませんが期待通りに)高くなりすぎない所に収まりそうで、全体としてはなかなか良い音でした。(ただし、スネアの機構の調整に関してのスイートスポットは、狭いです。)

こういうような仕様で、撥奏リムショットのためのリム部付きにした太鼓を作ってみようかなと、以前から思っていたのですが、今回近い仕様のものを確認出来た事で、実際にやったら良い物が出来そうだなと思いました。壊れてしまうのであまり強く叩く事は出来ませんが、すごく軽くて音量が抑えめな、可搬ドラムセットが出来ますよ。


本稿は以上です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?