補足部|【1】音響処理についての茶飲み話諸々|【補4】エフェクター周辺の話題

エフェクターに関して

救急車が走ったらサイレンの音が変化して聞こえるように、同じ人の声が目の前と電話とでは違って聞こえるように、教会と寺では音の響き方が異なるように、ギターの穴を塞ぐと別の響きになるように、ピアノの弦にモノサシを置くと演奏される音が変わるように、音は発音した時から聞こえるまでの間に様々な風に性格を変えるものです。そこで、そんな音の変化を積極的に活用して、電気信号を取り扱う過程で音を整えたいとして使用するのが、エフェクターと総称される音響機材です。

同じ音響機材の中でも先にとりあげたアンプという機材は、音の性質をそのままに扱うグループの製品としてエフェクターから除いて考えるのが普通ですが、実際はアンプやエフェクターのどの製品もどちらかだけの機能という事はあまりなくて、それぞれ複合的な性質を備えています。ですから製品ごとにはアンプとエフェクターとの役割の差は曖昧で、そのどちらにも音が好ましく変化するような役割が期待されています。

この「好ましく変化」については、例えば、収音したままの再生音を得たいと思いエフェクター機器を用いなかったところ実際には思うような音にならなかったという事もあるでしょうし、一方では例えば、エフェクターで整えた音こそが演奏した時の印象のままの音だったという事もありますから、一概に「エフェクターを使用しないのが元通りの音でエフェクターを使用すると変わった音」という風には言えません。
ですから、「期待する再生音を得るためには、収音した信号がどのように扱われて整えられるかの経過に注意を払えた方がずっと良い」という事になります。

ですから本稿でまず述べるエフェクターの効用や目的は、「エフェクターを使って奇抜な目立つ音を出そう」というような事ではありません。どちらかというとその逆で、「楽器の基本的な音作りとエフェクターは深い関わりがある」という事と「それをどういった要素が支えているか」という事の簡単な紹介をしたいと考えています。
特にCubeMic楽器については、同じバンドメンバーもPAご担当者も「実際の演奏音がスピーカーから再生されるまでは奏者がどんな音を出したいかわからないままだった」という事はままあるのではないでしょうか。出来ればこういったエフェクターをはじめとした音響処理分野の事についても奏者がおおまかにでも理解しておいた方が、奏者、聴衆、皆にとって良い結果を得られやすいのではないかと思います。

この事をもう少し例えると、「箱に響かせて整えた音こそがアコースティックギターの楽器の音で弦の音だけではギターにならない」ように「エフェクターで響きを整える事を含めてそのCubeMic楽器の音」だという風にも考えられそうです。これは不自然な事ではありません。
「音作りのため」のエフェクター使用は、アコースティックドラムで言えばミュートやチューニング、ドラムヘッドやスネア線の選択にもあたる音響操作です。そう考えると、奏者が積極的になっても良い分野だと思いやすいのではないでしょうか。

さてところで、あまりエフェクターに馴染みがない方を想定しておおまかに説明してみると、エフェクターの使い方には「音作りのためのもの」「派手な効果のもの」「最後に音を整えるもの」といった段階や違いがあるとお考え頂いて良いと思います。この中で、ご自身がエフェクターを使用されないような場合にも自然と馴染みがあるのが「派手な効果のもの」と「最後に音を整えるもの」ではないかと思っています。

まず、「派手な効果のもの」は、結果が「ギュイーーン」とか「ビューーーン」とかなるものの事です。「これは打楽器には関係ないし、特に自分には関係ないだろう」とお考えになるかも知れませんし、実際にその通りかもしれません。それならそれで良いのです。もしご興味が出たら、その時にお試しになって下さい。こういった「歪み系」とか「空間系」とか「その他特殊なエフェクター」と区分される様な範囲に関して、本稿では説明していません(しかし「打楽器には関係ない」と考えている訳でも無いのですが)。

つぎに「最後に音を整えるもの」については、カラオケのエコー効果などでお馴染みの、場の雰囲気作りになるような音調整の総仕上げの事です。こちらについては、それほど違和感なく触れていらっしゃる方も多いのではないかと想像するのですが、しかしご自身が操作するものとは思っていらっしゃらないかも知れません。実際的にもここは他の方にお任せした方が良い場合も多いですから、それはそれで結構です。

そんな中で見落とされがちなのが「音作りのためのもの」ではないかという事で、その点に注目する立場で本稿を構成します。
とはいえ、この項では個別の製品のご紹介や具体的な設定のご紹介までは出来ません。それぞれのエフェクトの典型的なふるまいについてご紹介するに留めたいと思います。

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