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かがやけ、手汚なさよ

黒くて、毛むくじゃらで、体から卵の腐ったような臭いを放っている。世界一の泥棒になりたくて、みんなに悪さをしたくて、困らせたくってたまらない。

おんぶ紐をくくっておんぶするくらい大好きで気に入っていたアライグマの人形を、2階から落とす事が好きだった。すぐ下では母が友だちと愉しげに話していて、僕はそこに目掛けてアライグマのぬいぐるみを落とした。ゲラゲラと笑いながら。

母の友だちは僕に微笑みかけたが、その奥の目が完全に引いていた。その時の母の顔は覚えていないけれど、多分キレていたと思う。ゲラゲラと笑いながら下に降りてアライグマのぬいぐるみを拾いに行って、また2階にあがり、アライグマのぬいぐるみを落とす。

はたからみたら、サイコパスだ。

兄とキャッチボールをしていた。僕はキャッチボールは苦手だったけれど、この時ばかりは楽しかった。僕の後ろには家の玄関があって、玄関の扉の両脇にはハメガラスが仕込まれていた。僕は兄のボールをキャッチできない事を予感していた。

わくわくする!

さあ、こい!

ハメガラスは見事に割れて、僕と兄は母によって押し入れに閉じ込められた。押し入れの暗闇に、反省の色はなかった。しばらくして、母からオヤツのビックリマンアイスが支給された。チョコ味とバニラ味の二層に分かれた棒アイスで、おまけにシールが付いている。どのキャラクターのシールだったかは覚えていないけれど、あの日のビックリマンアイスは格別に美味しかった。

誰かを困らせることは愉しい。困らせた相手はとても怒る。けれど、どうしたって笑ってしまう。だって愉しくて可笑しくてたまらないんだもの。すごく怒られるけれど愉しい。本気でブチ切れられる、そのギリギリがスリルで、どんどん追い求めてしまう。

けれどいつしか愉しいと思える日が終わりを迎える。

「もう、知らないからね。」

そう言われては困る。知らないでいてもらっては困るのだ。悪戯をして、いつまでも追いかけられたいのだから。

〝もう、知らないからね。”

という言葉は呪いだ。

そりゃないぜ、

たまったもんじゃない。

スティンキーは黒くて毛むくじゃらで、体から卵の腐ったような臭いを放っている。世界一の泥棒になりたくて、みんなに悪さをしたくて、困らせたくってたまらない。

ムーミン谷はいつも平和だから、警察は仕事がなくて困る。そんな彼らにとってスティンキーはとてもありがたい存在だ。

〝本当に悪いこと”を知っているムーミン達は、スティンキーをかわいいと思う。

スティンキーのマグカップを一目惚れで購入した。
なんて、かわいらしいのだろう!

僕はいつまでも、かわいらしいと思われたいと考えている。

あざといな。

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