もし友達の結婚式の乾杯を任されたら(小林編)

えー、ただいまご紹介に預かりました小林くんの友人の山本と申します。

大変僭越とは存じますが、ご指名によりまして、乾杯の音頭をとらせていただきます。

小林くんは昔からリーダーシップがある方で、いつも僕たちを引っ張ってくれました。

あれは高校2年生の時のことです。

あの日僕たちは友達8人ほどで学校の近くのジャスコに遊びに行きました。

みんなでお好み焼きを食べたあと、僕たちは男だけでしたが、記念にプリクラを撮ろうということになり、その前にトイレに行くことになりました。

プリクラを撮るということで、鏡で髪を直してる人もいましたが、僕は普通にトイレで尿をしていました。

するとトイレの洗面台を使おうとした怖そうなジジイが「お前ら邪魔だ!」と言って、僕たちの中の1人の瀧本くんのことを蹴ってきました。

そのままトイレを出てこうとしたジジイに対して、僕たちはなにも言わず、え……とびっくりしてただただ困惑するだけでした。

そんな中、小林くんは「なにすんだよ!!」とただ1人ジジイに噛みついたのです。セリフはうろ覚えですが、たしかにジジイに反抗したのです。

するとトイレから出て行こうとしたジジイは
クルッとこっちを向き直し、ズンズンこっちに向かってくるのです。

それを見て僕は、あーこれは面倒臭いことになったなと隣にいる小林くんの身を心配しました。

そのままジジイは小林くんに真っ直ぐ向かって行くのだと思ったら、なぜか横にいる僕の方に来て、僕の胸ぐらを掴み、壁にドンドンと僕の身体をぶつけ始めたのです。

ジジイは自分に噛みついたのが小林くんではなく僕だと勘違いしていました。

全然意味がわかりませんでした。

僕はただトイレで尿をしただけだからです。

僕は状況が全く飲み込めず、胸ぐらを捕まれ壁とジジイの間をバウンドしてるだけでした。

だれか止めろよと思いながらバウンドしていると、僕がジジイに襲われて8秒くらい経過した後に、やっと小林くんが「ちょっと、やめてください!」と僕とジジイの間に入って止めてくれました。

その時僕は小林くんが止めてくれて良かった、本当に大切な友達だ、とても勇敢な男だなーとは全く思わず、「ちょっと、やめてください!」じゃないだろ。お前だよ。お前のせいで俺はジジイにボコボコにされてんだよ。

お前が言うべきセリフは「僕が言いました」なんだよ。「噛みついたのは僕です」って言え。あなたがボコボコにしてる男は逆らった男でも、洗面台を占領した男でもなく、ただ尿をしただけの男なんです!と言えよ。

争いを仲裁してる奴感を出すな。お前なんだよ。油を注いだのは。

というか止めるの遅いんだよ。なに8秒間ジジイを野放しにしてるんだよ。さっきまでの楽しい気分が台無しだよ。なんでジャスコのトイレでジジイにボコボコにされなきゃならないんだよ。

僕はそう思いました。

結局、小林くんは最後まで噛みついたのが自分であることをジジイに言いませんでした。

小林、結婚おめでとう!

乾杯!

サポートしていただいた分は次の記事のために使わせていただいたりは全くせずにお寿司を食べるために使います。