なんだかんだ自分を特別な何者かにしたい人。

ワタシの知り合いに、自分はHSPだという人がいる。

彼女はツイッターをやっており、私生活と同様、結構ズバっと意見を述べる。彼女は割とキツい事を平気で言ったり、ツイッターで発言したりしてる印象だ。それを言われた時、受け取った時、相手がどう思うか考えてる？？　とワタシはいつも疑問に思う。

ところでHSPがなんなのか、ご存知か？

敏感で感受性が強く、敏感な気質を持った人で、正式名称はハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Personの略語でHSP)と言う。これは後天的な性格ではなく、生まれ持った性質であり、だいたい人口の10%から15%が当てはまるとされている。音や光はもちろんのこと、色々な事柄に敏感で感受性が強い。自分だけでなく他人の気持ちも考えすぎる為に、HSPでない人にとっては、たいした意味もない発言に傷ついたり、あるいは傷つけたと考えて落ち込んだり、または情報について深く考えすぎて疲れたり、その名の通り非常にセンシティブな人を指す。

上記以外にも、情報を深く考えすぎるために、情報過多に疲れたり、自己否定感が強かったりして自分に自信がなかったりと、センシティブすぎるが故の生きにくさを持っている。

果たして、先の彼女は当てはまるだろうか？　ワタシは彼女がこれらに当てはまらないと思っている。

音や光についてはよく分からないが、言いたいことをズバっと言っているし、非常に自尊心が高いのだ。自分の何かしらの才能について、とても自信がある口振りや態度で、HSPと言われても、うーん？　という感じだ。

最近、特別な何者かであろうとする人がすごく多い気がする。前職場のワタシの居た部署には彼女のような人が二人いた。

先の彼女は会話の中で「HSPだからわかるー」と言ったり、プロフィールにもHSPである事を記載している。もちろん、病院で診断されたわけじゃない。自己診断だ。

別に無理に何かしらの名前をつけなくても、ワタシにしてみれば、先の彼女は十分個性的だ。なんせ、他人に何を言われても自分を貫いているし、他人に物怖じすることもなく、自分の気持ちを発言する。自信の持ち方も、自尊心の高さも、どちらもワタシにはないもので、良し悪しは別にして羨ましい。ただ、彼女がHSPでなかったとしたら、彼女はワタシ含め、85%から90%のHSPでない無名の個性の人になってしまう。

彼女にとってHSPは、特別な何者かになる為の魔法の言葉なんじゃないか？　という気がして仕方がない。

ワタシはHSPの人を否定しているわけじゃない。そういう人がいるのも理解している。ウチの妹がそうだからだ。

妹は小さい頃から生き辛い人間だった。小学生の頃はどの学年になっても、先生が怖い(理由はよく分からない)と学校へ行くのを嫌がった。(それなのに真面目なので学校へは行く)高校生になると、友達に嫌われている、先生に嫌われている、と、悩み始め挙げ句の果てに拒食症になった。体重は一番軽い時で、35キロ。うつ病も併発し、一年、入院を強いられた。今も鬱っぽいし、食事はほんとに最低限。誰かが言ったちょっとしたこと(ワタシにしてみれば、相手は何も考えずに発言したこと)に、ひどく落ち込むし、自分が他人に言ったちょっとした一言について「嫌な言い方だったかも」とずっと悩む。昔ツイッターをやってた時期もあるが、タイムラインの情報量の多さに辟易し、疲れ果てすぐに辞めてしまった。一日五回、掃除機を掛けるし、しんどくてもクソ真面目に何事にも取り組む。人からの頼まれごとは断れない。音も光も苦手で、聞こえてる？　というくらい小さな音でテレビを見ている。絵なんかめちゃくちゃ上手い。努力と才能の結果だ。それなのに、全然、自信がなく、自尊心はびっくりするほど低い。拒食症を克服し(出来きってないけど)、子供を産み、子供を育て、毎朝3時に起きて家事も完璧にして、パートにも出ている。そんなことワタシには出来ない。十分、自信を持って良い。でも、妹は自分を否定しつづける。

ただし、妹は自分がHSPである事を、先の知人のように主張したりしないし、それを魔法の言葉だとも思っていない。ただただ、悩みながら生き辛さと一緒に生きている。

名前のある性質は、自分を特別な何者かにする為の飾りじゃない。

自分をHSPだと主張する、知人のような人が増えれば増えるほど、本当にHSPに悩んでいる人が、埋もれてしまうんじゃないだろうか？　

ワタシは彼女の自信たっぷりの発言や、自尊心の高さが垣間見える態度を見るたびに、いつもうんざりさせられるのだ。