満月の秘密


満月の夜は、タバコを吸う。


月に一度、部屋の電気を消し窓を開け、月明かりに照らされながらタバコに火を灯す。

誰も知らない、私一人の秘密の時間。



今の時代に紙タバコを吸うのはデメリットの方が多い。それに楽器をしている私から言わせれば、演奏にも支障が出てくる。

それでも私が紙タバコを吸う理由は、

早く死にたいから。


これはこっそりと、寿命を縮める行為。


今日も月明かりを頼りに、タバコの先に火をつけ、フィルタ越しにニコチンを吸い込む。


吐き出された煙は夜風に吹かれ、もくもくと上がっていき、空に消えていく。


街の賑わう金曜の夜だと言うのに、一人家に籠って寿命を縮めるなんて、正気の沙汰では無いのかもしれない。
けどきっと、これは満月の夜だから許される行為。


日々のお酒と月一のタバコ。
早く死ぬために、着々と進めている準備。

今日も私は、早く死ぬために、




満月の夜まで、あと19日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?