歪な鳥。


その鳥は片翼がなかった。


大空を自由に飛ぶことも
風を感じ、優雅に舞うこともできぬその鳥は
歪で、しかし美しかった。

贋作。
自らをそう呼ぶ鳥は、己の無力さを知っていた。


願っても届かぬもの。

走っても追いつけぬもの。

どれほど熱く焦がれても
辿り着けない輝きをその鳥は知っていた。

どこまでも無知で、どこまでも醜悪で
どこまでも歪でありながら
無力を悟った鳥は、羽ばたくことをやめた。


両方翼があったなら。

飛び立つ力があったなら。

どこまでも高く舞い上がることができたのに。


飛べぬ鳥。

歩くことしか知らぬ鳥。

しかし、だからこそ。
歩みを止めぬからこそ。


その片翼は、美しかった。

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