見出し画像

月の輪祭り〜アフターコロナ その3

”まつり”というものを、「奉り(祀り)」「政(まつりごと)」「祭り」の3つの要素から分析してきました。

1300年以上の歴史を持つ”月の輪まつり”にもこの3つの要素があることを、この前のふたつの記事、月の輪まつり〜アフターコロナその1,その2で考察してきました。
大切なのは、伝統的なまつりというものはこの3つの要素が必用だという事です。
そして、民俗学者の折口が述べている様に、「政(まつりごと)」が先にあるべきだと述べており、私はその考えが正しいと思っていますので、“月の輪まつり”という伝統的な”まつり”では「政」が先にあるべきだと考えています。

先日、新たに安来市よりお返事がありました。
月の輪まつりの実施については、月の輪まつり実行委員会という組織が存在しているそうです。
この組織は、安来市民の有志で構成されていて、実行委員会事務局を安来市観光振興課が担って居られるそうです。

先に述べた様に、「政」が先にあるべきであるという立場からすると、この月の輪まつり実行委員会が市政を代行する組織として存在しているのか,それとも独立した組織で、運営上事務局を安来市観光振興課が担うことになっているのかと云うことが大切な様な気がしてきます。
前者であれば「政(まつりごと)」が先にあるという事になります。しかし、後者であるとすると、「政」が先にはないのだという事になるように思います。
さて、どちらなのでしょう?
こういった疑問についても、いずれ伺っていきたいところではあります。

ともかく、この市民有志で組織される月の輪まつり実行委員会という組織であるという事にはひとつの問題点があります。
この月の輪まつり実行委員会自体が永続して存続可能な組織であるか否かという問題です。
前回の記事で書きました様に安来市では25歳〜40歳代の人口が減少していて、組織の世代交代自体に問題が起きるのではないかと考えられるのです。
特に有志という団体での世代交代というのは難しいのではないかと推測します。
市役所内部の組織であれば、組織自体が各年齢層が循環する様に採用〜定年を繰り返していますので組織自体存続が出来ます。
しかし、市民有志という組織に於いてそういった循環が可能であるかと言えばなかなか難しいものがあると考えられるからです。

市からのお返事に次の一文がありました。

「時代とともにイベントの在り方を検討する時期にさしかかっており、今までの行政主導から民間主導へのシフトをいかにしていくのかが課題となっています。」

確かに、時代とともに”まつり”のあり方は変化するところがあるのかも知れません。しかし、伝統文化を継承するという視点から言えば変化させてはならないところも在るのでは無いかと思うのです。
特に、行政主導から民間主導へシフトするという事は、「政(まつりごと)」という主体を失い”まつり”のあり方自体を変えてしまいますので、“まつり”という伝統文化は失われてしまうことになるのだと思います。

それを踏まえた上で、なぜ、行政主導から民間主導へシフトしていくことが課題となってしまったのかと云うことが疑問になる訳です。

ひとつには、”まつり”の参加者が年々減少しているとの事実があります。
まつりの参加者の減少はなにかしらの課題を感じさせるものではありますが、おそらく行政主導から民間主導へ移行する要因の本筋ではないでしょう。
1300年前の安来市の人口は,現在の人口より少なかったものと思います。
それでも続いてきた伝統である以上、人口の推移や“まつり”の参加者数などとは異なるロジックで存続してきたはずだと思うのです。

と云うことで、民間主導へと以降を目指すための要因の本筋はまだ見えてきていないように思います。
取りあえず前回予定していた安来市財政の動向を確認していくこととします。

安来市ホームページより

前回お示ししました、安来市人口の推移をもう一度ここに貼ります。

安来市人口推移

人口は徐々に減少、特に生産年齢人口が減少していると云うことが解ります。
しかし、市税の収入は、余り大きな変化は無さそうですね。平成29年から令和元年に欠けてはむしろ上がっていたりします。
市民税は、所得によって変化したり法人などにもかかってくる税金のようで、安来市においては今のところ人口と比例関係にあるものでは無さそうです。
また、全体の収支を見ると平成30年度までは収入より支出が多かったようですが、平成30年度以降は収入より支出が少なくなっているようです。
思ったより健全な状態ですね。(^^)

月の輪まつりなどの費用は、どうやら商工費から捻出されているようです。
商工費は予算が上がってきていますが、決算は少なくなっています。
その中で、平成27年度から令和2年度までは月の輪まつり振興会補助金として、800万円程度の支出があったようです。令和2年度からはコロナ禍の影響からか、こういった記載が見当たりませんでした。
月の輪まつり振興会補助金とは、平成17年に告示されたもののようです。

月の輪まつり進行会補助金

おそらく、月の輪まつり実行委員会のような組織に対する支援と云うことなのでしょう。
それまではこういった形の支援は無かったことになりますね。
と云うことは、月の輪まつり実行委員会が組織されたのがこの頃であったのかも知れません。

まだ充分調べたわけではないので、断言は出来ませんがお金のことで月の輪まつりを民間主導にしていくこととなった理由は財政的な問題というわけでは無さそうだと云うことになりますでしょうか。

とすると、なぜ伝統的な「月の輪まつり」を行政主導から民間主導に切り替えるというお話になったのかという事が気になり出しますね。
行政主導を民間主導にすれば「政(まつりごと)」の部分が欠落することになりますので、それでは伝統的な「まつり」では無くなり、ただのイベントになってしまうのです。それを押してなお民間主導にする意味とはいったい何処にあるのでしょう?
それに先に書きましたように、民間主導にすると言っても市民有志による実行委員会という組織に委託するような形では、その組織自体の若返りの流れが起きにくいと推測できますので、今頑張っておられる人たちがリタイアすれば自然消滅する可能性が高いと思います。
伝統的な「まつり」と云う文化を支えるためにはやはり行政主導となるのが正しいあり方だろうと思うのです。
おそらくではありますが、月の輪まつり実行委員会のメンバーの中にもこの様な考え方の人がおられるのでは無いかと思うのです。

以上のように現在のような形で民間主導にシフトしていくことには様々な問題があろうと考えられますので、そういった点で月の輪まつり実行委員会という組織と安来市の間でなにかしらのトラブルなどが起きた、もしくはおきている可能性もあるかと思います。

さて、今後はどのように情報を集めていこうか・・・
出来たら、こういった伝統文化は後世に残して欲しいと思うのです。
だけど、安来市行政が伝統や文化を残すことが出来ないと云っているのであれば仕方が無い、と云うことなのでしょうかねぇ。やっぱり伝統や文化が失われるのであれば、その理由ぐらいは知りたいと思うのです。(しっつこい?(^_^;))

情報が出てきたら、その4に続くかも・・・





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?