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これで、裁判記録が少しは残るようになるかな?

 1月30日に、最高裁で裁判記録の保存に関する新ルール「事件記録等の特別保存に関する規則」が施行され、合わせて「事件記録、事件書類及び少年調査記録の特別保存の要望について」が公表されました。

 「事件記録等の特別保存に関する規則」は、1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件などの重大な裁判の記録が相次いで捨てられていた問題を受けて作成された新ルールです。
 第1章第1条に「国民共有の財産として保存し、後世に引き継いでいくことを目的とする」とされています。
 また、第2条第6条では、公文書等の管理に関する法律に 規定する「歴史 公文書等として内閣総理大臣に移管することとされた記録等は、最高裁判所の指示を受けて独立行政法人国立公文書館に送付する」と規定されました。
 本来は、「民事・少年事件などの記録について、保存期間が過ぎれば廃棄する一方、必要があれば「特別保存」すると規定」されていて、「92年の通達で、世相を反映し、史料的価値が高い」や「全国的に社会の耳目を集めた」といった事件を特別保存の対象として示していたにもかからわず、「特別保存にあたるかを誰がいつ、どう判断するのかが不明確で、重要な事件だという認識が無いまま廃棄され」てしまっていたので、新ルールが作られたことで、重要な裁判記録が少しは残るようになってくれることを期待したいですね。

 「事件記録、事件書類及び少年調査記録の特別保存の要望について」は、「事件記録等の特別保存に関する規則では、裁判所の事件記録、事件書類及び少年調査記録(以下、併せて「記録等」といいます。)のうち、史料又は参考資料となるべきものは永久に保存する(特別保存)」と定められ、さらに「史料又は参考資料となるべきものに当たる記録等については、どなたでも特別保存を要望することができ」ることになりましたというものです。

 また、一般からの要望の有無にかかわらず、最高裁判所長官が、記録等を特別保存に付する認定を行う事件もありますが、要望があった場合には、要望の理由を十分に参酌し、選定委員会に意見を聴いて、特別保存に付するか否か認定を行」うということです。
 なお、要望の有無にかかわらず、特別保存に付する認定を行う事件は以下の通りです。

ア 「最高裁判所判例集」又は「最高裁判所裁判集」に判決等が掲載された
  事件
イ 主要日刊紙(地域面を含む。)のうち、2紙以上に終局に関する記事が
 掲載された事件
ウ 事件担当部から上記3アからキまでに該当するとして申出があった事件

 また、特別保存に付する認定を行う事件は、以下の通りです。

ア 重要な憲法判断が示された事件
イ 重要な判例となった裁判がされた事件など法令の解釈運用上特に参考に
 なる判断が示された事件
ウ 訴訟運営上特に参考となる審理方法により処理された事件
エ 世相を反映した事件で史料的価値の高いもの
オ 全国的に社会の耳目を集めた事件又は当該地方における特殊な意義を
 有する事件で特に重要なもの
カ 民事及び家事の紛争、少年非行等に関する調査研究の重要な参考資料に
 なる事件
キ 少年保護事件の調査上特に参考になる調査を行った事件

 特別保存の要望方法は、特別保存要望書に所定の事項を記入して、第一審の裁判所の訟廷記録係宛てに提出することになりました。
  「第一審の裁判所において当該事件記録等を特別保存に付すると認定された場合は、要望の有無に関わらず、高等裁判所の判決及び最高裁判所の判決についても特別保存に付する認定がされ」、最高裁判所に特別保存要望書を提出する場合は、最高裁判所裁判部第二訟廷事務室記録保存係宛てに、持参、郵送、ファクシミリのいずれかの方法で提出するとのことです。

 なお、「要望があった事件を裁判所が特別保存しない場合、新たに設ける第三者委員会が判断が適切かを検討する」こととなり、「記録の保存の在り方に関する委員会」が設置されました。この委員に、法政大学の高橋滋教授や国立公文書館の中島康比古専門官ら6人が30日付で任命されました。
 3月25日に初会合が開かれて、具体的な事案の議論は今秋以降に行う見通しとの情報が、1月29日付けの朝日新聞デジタル「裁判記録の廃棄問題、最高裁が新運用の詳細を公表 全国で一律運用へ」に出ています。

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