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私が愛する看板建築について / 住まない部屋の間取りはなぜ楽しい?~「間取りはどれにする?」を読む~ / 腰痛との戦い

【週刊ヤマサキシュンスケもくじ】

【ロシュツ】今週のメディア掲載情報

6/17 日経新聞電子版:「人生を変えるマネーハック」
「マネーアプリ」をマネーハック(3)
買い物・ポイント・転職も マネーアプリどこまでお得
6/17 講談社 マネー現代
1000万円「貯まる人」になりたいならこのマネーアプリ10選
6/22 日経DUAL
「老後に二千万円」の誤解と対策 共働きの強みとは

【オススメ】私が愛する看板建築について

私は看板建築マニアのひとりである。かつてみちくさ学会のHPでは看板建築担当でコラムを連載していたこともある(このコラムは抜粋して電子書籍化もされている)。

(今でもログは読めるのでよろしければ)
http://michikusa-ac.jp/archives/cat_66484.html

看板建築というのは、建築様式のひとつである。簡単に言えば
 「関東大震災から終戦直後あたりの築」
 「基本的には木造(一部コンクリもある)」
 「正面(ファサード)を洋風にフラットに仕上げる」
 「装飾は銅板やモルタルで洋風にする」
 「でもなぜか和風のデザインも混在する」
といった感じか。

たぶん文字だけみてもピンとこないだろうから、メルマガのトップ画像と下記の画像あたりをみて「ああ、こんな感じね」と分かっていただければと思う。

この様式、基本的には2階建てだ。屋根裏を広く取って実質3階建てにしていることもあるが、当時の建築基準に従えばなかなか3階建ては建てられなかったことが理由だ。

そして個人商店によく見られることもあり、幅はそれほど取らない。3間くらいが多いと思う。コインパーキングになったとき2台がぴっちり、という感じだ。

看板建築を定義したのは、江戸東京博物館の現館長であり、かつては路上観察学会や建築探偵をしていた藤森照信氏による。本人のコラムによれば学会に発表したときは大荒れだったそうな。

看板建築 https://amzn.to/2J2lybW
建築探偵の冒険〈東京篇〉 https://amzn.to/31Q0xty

庶民建築がゆえに様式がいい加減で(いい意味で)、定義も曖昧になり、だからこそ議論にもなったが、一方で保存が難しいという問題もあった。ところが江戸東京たてもの園がいくつかの貴重な看板建築を移築保存することができ、私たちは今でも看板建築をまとめて一望することができる。

看板建築のオーナーは、昭和初期に自分の店を持っていた個人商店主とその子なので、世代交代がなければ廃業のリスクと常に向き合っている。

藤森氏の著書ではバブルの地上げが看板建築をなくしたと嘆いていたが、むしろ今看板建築を失わせているのは商店主自身の引退や死去である。

私がみちくさ学会に書いていたころより今のほうが看板建築の消失は早い。それでも古い建物を愛する人たちが写真集や画集でその様子を切り取ってくれている。

2014年に写真集として発売された「看板建築・モダンビル・レトロアパート 伊藤 隆之 (著)」は同潤会アパートメントなども合わせて収録していて、読み応えがある。
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画集「東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ (著), サイドランチ (編集)」は外国人の目線で、かつイラストの形式で日本の古い店構えを多数収録している。もちろん看板建築もたくさん載っていて、作者も看板建築の様式に興味のあることがうかがえる。
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そして今年はさらに看板建築愛の溢れる本が一冊増えた。「看板建築 昭和の商店と暮らし 萩野正和 (著)」だ。
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本書は、消えてしまった看板建築を多数収録するとともに、現存している看板建築のいくつかについては店主のインタビューを載せ、時代の息吹を伝えてくれているところがいい。様式の分類もしていて、看板建築初心者には絶好の入門書でもある(というか、私も頭の整理ができた項目がいくつかあった)。

さて、自分は看板建築マニアを自称しながらもここ数年、仕事は忙しくなる一方だし、子育てという日常がさらに追加されてしまったため、看板建築を撮影してコレクションしたり、看板建築愛を語る機会がめっきり減ってしまっている。

一昨年は看板建築サミットというイベントが石岡であったのだが、子連れがゆえに講演会は途中退席となってしまった(まちあるきはなんとか付き合ってくれたのだが、講演は子どもが30分ももたなかった)。

今回の本を読んでいて、また看板建築に対する愛情がよみがえってきた気がする。私は看板建築についてはあまり保存運動の興味はない(当人の経済的合理性と保存の愛情がバランスしなければ外野がとやかくいうことではないと考えているので。また残されている看板建築は知名度が高いいくつかを除けば小粒の作品が中心になっているため)。

今はバブル期のように放火するような無茶な地上げはない。更地をひとつコインパーキングにし、隣地がまたコインパーキングなるまで開発側は何年も待つ時代だ。

団塊世代は70歳を迎えており、お店をたたんでしまった看板建築も多い。また空き家となって親族が手放す時期を待つ建物もたくさんある。敷地をまとめてマンションやショッピングビルに建て変わる時代に抵抗することは難しいだろう。

でもせめて、iPhoneを向けてそのたたずまいを保存しておくことくらいはしておきたい。もっと街を歩いては記憶と記録(写真)には保存しておければと思う。

【オススメ】住まない部屋の間取りはなぜ楽しいのか~「間取りはどれにする?」を読む~


引っ越しを考えることができるのは賃貸暮らし最高の娯楽である。今の部屋に飽きたとか、周辺環境が悪化したとか、自分の年収が少し増えてとか、いろんな理由ですみかを変えることができるのは、持ち家暮らしにはできないことだからだ。

それこそ「彼氏(彼女)と分かれたから心機一転」のような引っ越しだってできる(まあ独身で持ち家の人はあまり多くないが)。

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