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民間薬と漢方薬の違い

民間薬とは、その土地の民間の人(一般の人)の間に受け継がれてきた、素朴な治療薬のことで、薬草を一種類だけで用いることがほとんどです。親が子供へ、おばあちゃんが孫へ、近所の人や、その村の人達へ、など、その地域に伝わったもので、同じ植物でも、地方で呼び名が色々だったりします。以前、どくだみについて調べた時は、別名がたくさんあって驚きました。

日本三大民間薬の一つ、センブリは、草全体が非常に苦く、千回振り出しても(センブリを入れた湯呑みにお湯を注ぎ足すのを1000回繰り返しても)まだ苦い、というのが、名前の由来です。
苦味健胃薬(くみけんいやく)という言葉がありますが、苦味には胃の働きを促進させる働きがあります。苦味を感じると、胃酸の分泌が増えたり、胃の働きが良くなり、消化が早まります。

漢方薬は、中国大陸から伝えられた漢方療法で用いられる薬のことで、何千年という長い経験の中で、有用なものが口伝えや書物によって今に伝わったもので、それを現代の我々が治療に用いています。通常は2種類以上の生薬からなり、配合の割合も決まっています。

例えば、桂枝湯(けいしとう)は、
桂皮 4g、芍薬 4g、大棗 4g、甘草 2g、生姜 1.5g
で、「体力が衰えたときの風邪の初期」に用いられますが、この中の芍薬が6gに増えると、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)という名前に変わり、「腹部膨満感のある次の諸症:渋り腹、腹痛」と、効能が変わります。
(ツムラ医療用漢方製剤の添付文書より引用)

漢方薬は、一つ一つの生薬の薬効を理解すること加えて、別の生薬を足した時や割合を変えた時の薬効の変化を理解することも必要であるため、知識を持った者が運用するもの、と言えます。
また同じ病気でも、漢方医学的に診るといろいろな原因、状態があり、個人の体質、特性によっても用いる漢方薬は変わります。

葛根湯を風邪のひきはじめに飲む、というのは、ポピュラーですが、体質的に合わない人がいたり、高齢者には注意が必要だったりするので、やみくもに人に勧めるのは控えましょう。

(今日の写真の花はオウバイモドキ(黄梅擬)。英名はジャパニーズジャスミンですが、香りはしません。)

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