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「CROSS OVER」(声劇用コメディ台本 男1不問2)

「クロスオーバー」
a「アキラ」→アラフォー男
n「ノア」→双子の弟、まだまだ子供っぽい
c「カイン」→双子の兄、ハイスペックで大人びている

n「よーし!いくぞカイン!!」

c「いつでもいいぞ!こい!!」

n「たぁっ!!!」

c「ふっ!!!」

n「っ!!今日こそ、俺が勝つからな!」

c「ちょっとはマシになったけど、まだ負けない……よっ!!!」

n「うわっ!!っとと…!」

c「ノア はまだまだ踏み込みが甘いんだよなー
だからいつも下半身鍛えろって言ってるのに」

n「う、うるさいな!余裕ぶってられるのも今のうちだからな!」

c「はいはい!ほら、続けるぞ!」

n「今日は絶対1本とる!」

a「おーーい!お前ら!そろそろ飯の時間だそー!!」

n「アキラ兄さん!」

c「はい、隙あり」

n「ぁ痛っ!!!……ずるいぞ!!!」

c「立ち会い中に余所見するからだよー」

a「はいはい、そこまで。木剣だって当たったらケガするんだから気をつけろよ。ほら、行くぞ」

c「はーーい」

n「むぅぅぅ……!明日は絶対負けない!」

c「言ってろ言ってろ」

a「あーもー、騒ぐな」
aナレ(俺はアキラ、30そこそこのくたびれたの普通のサラリーマン、だった。5年前、いつものように通勤してる途中に居眠り運転の大型トラックにはねられた。間違いなく即死だったはずなのに、気づいた時には見知らぬ草原に横たわっていた。)

n「でも!アキラ兄さんもちょっとは戦いの練習した方がいいよ!いつ魔物が襲ってくるか分からないんだから!」

c「たしかに…びっくりするほど弱いもんね。ちょっと身体動かしただけでバテちゃうし…」

a「し、仕方ないだろ…俺は戦いとかが無い平和な地域から来たんだから。いいんだよ、そういうのは」

n「えー、今の時代に平和な所なんてあるー?」

c「今はどこも危ないと思うけどなー」

aナレ(そう、俺は魔物が闊歩するファンタジー全開の異世界に転生してしまった。右も左も分からずに彷徨っていた所をこの双子の兄弟に拾われたのだ。兄のカインと弟の ノア、こいつらの両親は魔物に襲われて亡くなっている…が、どうやらこの世界では珍しい事ではないらしい。)

n「そんなんでよく生きてこれたよねー」

c「ほんとほんと!心配になっちゃうよ」

a「それはこっちのセリフだ。俺がくるまで掃除、洗濯、料理、何も出来なかったろ…」

n「えーだってやんなくても生きていけるし?」

c「そうそう!どうにかなるよね!」

a「よく言うよ…ボロ雑巾みたいだったくせに」

c「常識知らずの怪しい大人を拾ってあげた恩人に対して言う言葉じゃないと思いまーす!」

n「まーす!」

a「ほんとに仲良いなお前ら……」
aナレ(この世界に放り出された直後は自暴自棄になり、大人気なく泣き喚いたりもしたが、この兄弟とすごしているうちに少しずつ前を向こうと思えるようになっていた)

【翌日】

a「ふわぁ〜あ……(あくび)」

c「あ、アキラ兄さん!おはよー!」

n「おはよー!」

a「んぉ?随分早起きだな…ってかそれ、本…?まさか、勉強してるのか!?」

c「そんなに驚かれるとか心外なんですけどー」

n「しんがい!しんがい!」

a「お前は「心外」の意味をわかってないだろ…」

c「俺たちも来年12歳になるからさ!色々と準備がいるの!」

n「のー↑きん↓じゃダメなんだよ!」

a「はいはい、「脳筋」な。にしてもそうか……お前らも もうそんな歳だったな…。何がしたいかは決まったのか?」
(教育制度が整備されてないこの世界では12歳になるといっせいに職業を振り分けられる。主な職業は農民、商人、職人、そして…)

n「俺たちは「討伐隊」に入るんだ!」

a「…………えっ…!?」

c「だから、驚きすぎ笑。毎日2人で訓練してたし、分かってたでしょ?」

a「いや、あれは……暇つぶしか自衛のためかと……」

n「もー、子供だからって暇なんてないんだよ!そんな暇があるなら食べ物作るのとか手伝ったりするし」

c「農家の子はだいたいそうだよねー
俺達は最初から討伐隊志望!」

a(そう、この世界には討伐隊というものがある。文字通り魔物を討伐して人類の生活圏を守る為の組織だが……当然、死と隣り合わせの危険な役割だ)

n「いよいよかぁ〜〜、今から緊張するね」

c「ははっさすがに早すぎ笑」

a「そんな…だって……危険だ!いつ死んだっておかしくないんだぞ!?」

n「……??うん、そりゃね」

a「そりゃねって……怖くないのか!?お前らの両親だって魔物の討伐中に死んだんだろ!?」

c「そうだよ?でも、それが普通だから。」

a「…っ!!」

n「いつ死ぬか分からないなんて、いつもの事だしねっ!今だってそうだよ?」

c「そうそう、それなら父さんと母さんの遺志を継いであげたいなって」

a(両親の死を事も無げに話す2人。こいつらとは生まれた世界違うという事を、今更ながらに痛感させられた。今までの平和な日常はただの偶然で運が良かっただけだったと気づいていなかったのは俺だけだったのだ)

n「どう?かっこいいでしょー」

a「……」

c「どうしたの?怖い顔して……」

a「…どうしたじゃないだろ!!!」

n「ひっ…!」

a「ふざけるなよ…!!お前らみたいな子供が…!!」

n「だ、だから!子供とか関係ないんだって!」

a「そんなこと知るか!!大人はっ…大人はなにやってんだよ!!」

c「お、大人だっていっぱいいっぱいなんだよ!討伐隊ってほら、その…すぐに人手が足りなくなるから……」

a「それだけ犠牲者が多いって事だろ!お前らの両親だってそんな危険な事なんて して欲しくないに決まってる!!」

n「アキラ兄さんに何がわかるんだよ!!父さんと母さんはっ……誇りを持って討伐隊に入ったんだ!!」

c「ノア、落ち着けって……」

a「本人達はそうでもお前らには関係ないだろ!!死んだら全部終わりなんだぞ!!」

c「アキラ兄さんも…!」

n「関係なくない!!父さんが言ってた!大切な人を守れるように強くなれ。って!!」

a「だとしてもお前らが討伐隊に入る必要は無いだろ!!」

c「2人とも…もうやめてよ!」

a「もし本当に討伐隊に入らせようとしてたならそんな両親イカれてる!!異常だ!!」

n「わかったような事言うな!!!
俺達と、、血の繋がりも無いくせに!!!!」

a「ッ……!」

【沈黙】

c「い、今のはついカッとなっただけだよ!
ノアだってそんな事……」

a「それが…お前の本音か……?」

n「……知るかよ!!!」【外に飛び出していく】

c「あ!おいノア!!どこ行くんだよ!!」

a「……」

c「……」

a(大人気ない。自分でもわかっていた。それでも、湧き出る感情を止めることが出来なかった。勝手にこいつらの親の気分になって、俺よりも今はいない両親の言いつけを守る ノア に嫉妬でもしたのだろうか。本当に情けない…)

c「あ、あのさ…ノアも本気で言ってる訳じゃないよ!あいつ、昔は父さんと母さんにベッタリだったからさ……」

a「……そりゃそうだよな…。親を失って辛くないはずないのに…わかってたのに…俺は……」

c「アキラ兄さん……」

a「みっともないよなぁ…勝手に勘違いして、勝手に熱くなって、自分勝手に八つ当たりして……」

c「そうだね……アキラ兄さんは俺達の親じゃないし、親になる事も出来ないよ……」

a「ははっ…そう、だよな……」

c「だって大人っぽくないし!」

a「は?」

c「出会ったばっかりの子供相手にみっともなく泣きじゃくるし、すぐムキになるし、ノアと同じレベルで言い合いするし。」

a「うっ……」

c「大人ぶろうとする意思は感じるけど結局行動が追いついてないよね。大人として尊敬できる点はほとんど無いかなー」

a「はい……」

c「でも、その分俺達に寄り添って考えてくれる」

a「…!!」

c「子供の俺たちにも、同じ目線で真っ直ぐに向き合ってくれる。俺も ノアもアキラ兄さんのそういうとこが好きなんだよ」

a「でも…俺は……」

c「大丈夫。ノアだってアキラ兄さんが優しさでそう言ってくれてる事くらいわかってるよ」

a「そうなのかな……」

c「そうなの!まぁお互い様とはいえ、言い方は酷かったけどね!反省してちゃんと謝ってください!」

a「はい…反省します。」

c「ふふっ、やっぱり親じゃなくてお兄ちゃんって感じだね!父親って器じゃないけど、その分俺達と距離が近い」

a「ふっ…それ、褒めてんのか馬鹿にしてるのかどっちだよ」

c「さぁ?どっちだろうねっ笑」

a「生意気なガキンチョだな笑」

c「そういえばさ、出会ったばっかりの
時の ノア の事、まだ覚えてる??」

a「あぁ。めちゃくちゃ人見知りしてたよな…。まともに喋れるようになるまで1年近くかかったのに…今ではあんなになってさ笑」

c「ん。その事をゆめゆめ忘れるな!」

a「はぁ?なんなんだよ…」

c「なんだろうね!それじゃ、俺は反抗期真っ盛りの困った弟を迎えに行こうかなー」

a「場所の心当たりがあるのか?だったら俺も一緒に…」

c「ダメ!アキラ兄さんは少し後からついて来ること!」

a「はぁ?なんで……」

c「返事は!?」

a「わ、わかったよ……」

a「よろしい。それじゃ、また後でね」

【場面転換 外 郊外】

n「はぁ……」

c「やっぱりここにいた」

n「カイン……」

c「嫌な事があるといつもここに来てたもんな」

n「うん、変だよね。父さんと母さんが本当に埋められてる訳じゃないのに」

c「いいんじゃない?お墓って気の持ちようだしさ」

n「…………あのさ」

c「んー?」

n「嫌われちゃったかな……?」

c「どう思う??」

n「絶対無い。今頃自分で自分のことを責めてそう」

c「正解。どうする?謝りに行く?」

n「……」

c「嫌ならいいんじゃない?」

n「……謝る。でも!俺だけが悪いみたいになるのは!…なんか、やだ……」

c「大丈夫だよ、アキラ兄さんもめちゃくちゃ凹んでたからさ」

n「そっか……ならいいかな……」

c「うん」

n「……あのさ」

c「んー?」

n「やっぱり、俺討伐隊に入りたいよ」

c「そっか」

n「最初はさ、嫌だったんだ。父さんと母さんが死んだのも討伐隊に入ったせいだし」

c「まぁ、そうなのかもしれないな」

n「でもさ、今は父さんの言ってた言葉の意味わかった気がするんだ」

c「大切な人を守れるように強くなれ。ね」

n「うん。守られるだけじゃ嫌だなって思えるようになったんだ」

c「アキラ兄さんと出会って?」

n「……うん。アキラ兄さんって、何か危なっかしいし」

c「ものすごく弱いしね笑」

n「うん笑 だからこそ、何かあった時にはきっと自分が犠牲になろうとすると思うんだ……」

c「そうだね、きっとそうすると思う」

n「だからさ、俺が強くなって守られる必要が無いくらい…守ってあげられるくらいにならなきゃって…!」

c「それで4年くらい前に急に稽古つけてくれー、なんて言い出したんだ笑」

n「……うん」

c「ふーーん……だってさ!!どう思う??」

n「えっ……?」

a「そっか、そうだったんだな」

n「あ、アキラ兄さん!?!?今の話全部聞いてたの!!??」

a「ああ」

c「どうだった??「本音」、聞いてみてさ」

a「……」

n「……」

a「……決めたよ」

n「何を……?」

a「俺も討伐隊に入る」

n「はぁ!?!?ちょ、な、何言ってんの!?」

c「はぁ……まーた変な事言い出し始めた……」

n「ムリムリ!アキラ兄さん弱いもん!!クソザコナメクジだもん!!」

a「変な言葉覚えるな!!別に、戦うとは言ってないよ」

c「じゃあ、何する気なの?」

a「お前らを見てて思ったんだ。多分討伐隊に行く奴らってろくに身の回りの家事とか怪我の手当とかできないだろ?」

n「う、うーん……まぁ確かに……?」

c「苦手な人の方が多いかも…?」

a「だから、俺がそれを担当するんだよ。衛生兵ってやつだ」

c「なるほど、衛生兵……確かにそれなら……」

n「なんか凄そうだね!えーせーへー!」

a「……ま、まぁとにかくだ!お前らだけ危険なとこに行かせる訳にはいかないからな。俺も一緒に行くよ。」

c「こうなったら聞かないんだよなぁ…」

n「変なとこで頑固だよね、アキラ兄さんって」

a「お前らだって人のこと言えないだろ」

c「ふふっ、そうだね」

n「それじゃ早速!今日からアキラ兄さんも訓練に参加ね!」

a「いや、だから俺は衛生兵として…」

c「いくら直接戦闘しないからって、今のままじゃさすがにダメだよ。絶対に入団試験 通らないもん」

a「え!?試験とかあるのか!?」

n「はぁ…僕達が何のために毎日訓練してたと思ってるの?」

c「あと、少しだけど知識を見る試験もあるから常識知らずなアキラ兄さんには勉強も必要かもね」

a「筆記試験まであるのか!?じ、自信なくなってきた……」

n「もしかして、もう諦めるのー?」

c「あれだけ大口叩いたのにー?」

a「…ぐっ!わかったよ!やるよ!」

n「よーし!じゃあまずは体力作りからだね!」

c「さーて、どんなトレーニングにしようかなー」

a「お、お手柔らかに頼む……」

c「それは保証できないかなー!」

n「できないよねー!」

a「お前ら本当に仲良いな……」
a(翌年、俺達3人は討伐隊に所属する事となる。多くの人と出会い、死別した。辛い事ばかりだったが、それでも3人で過ごす日々を幸せに感じていた。そんな生活を始めて3年が過ぎた頃、別れは唐突に訪れた。)

n「くそっ!!まさかアキラ兄さんに乗り移るなんて!!!」

a「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!
サンバのリズムでミナゴロシダァァァアア!!!」

n「クソクソッ!!どうする!?カイン!!」

c「いやこっちが聞きたいよ!!ええぇぇぇぇなにこれ!?どゆことぉ!?」

n「なんやかんやあって魔王みたいな奴がアキラ兄さんに乗り移ったんだよ!!」

c「なんやかんやってどんなもんや!!!
なんなんや!!なんやかんやってぇ!!!」

a「サンバァァァァァァアア!!!」

n「言ってる場合じゃないだろ!魔王サンバデビルは待ってくれないよ!!」

c「ダッセェ!!サンバデビル!!?サンバデビル!!??」

a「サンバキャノン!!!」

n「ぐわぁぁあああ!!」

c「あいつサンバのくせに遠距離攻撃できんのかよ!!」

n「心に隙がないと乗り移られる事はないはずなのに!!どうして!?」

a「キニシテル……」

c「えっ?」

a「血が繋がってないって言われたのズット ネニモッテルゥゥゥ!!!!」

c「ちっさぁ!!器ちっさ!!」

n「そんな……俺のせいで……!!」

c「いや、俺めっちゃ頑張ってたじゃーん!!間に入ってエモい感じにしたじゃーん!!返せ!!俺の努力返せ!!」

a「ジンルイ サンバでミナゴロシィィィィ!!!」

n「クソっ!!このままじゃ世界が!でもアキラ兄さんを攻撃するなんて……どうしたらいいんだ!?」

c「いけよ…」

n「えっ?」

c「行けっつってんだよぉぉぉ!!!!」

n「えぇ!?俺が!?」

c「元はと言えばお前のせいやろがぃ!!!!」

n「ぐっ…!わかった!俺の手で引導を渡してくる!!」

c「待て!!」

n「なに!?敵は待ってくれないよ!!」

a「サンバァァァァァァ!!!」

c「うるせぇぇぇぇぇ!!!!」

a「サンバ………」

n「黙らせた!!凄い…!!」

c「これを持つんだ」

n「??これは……?」

c「お守りだ。お前に力を貸してくれる」

n「カイン…!!ありがとう!!
って重っ!!!?」

c「よし、行け!!!」

n「ねぇこれなに?小さいのにめちゃくちゃ重いんだけど…」

c「はよ行けぇ!!お前のせいだぞ!!!!」

n「わ、わかった!!!
うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

a「サンバインファイト!!!!」

n「ぐふっ!がはっ!!や、やっぱり1人じゃ無理だよ!カイン!助け………っていない!?」

c「スイッチ・オン」

n「え、なんかお守り光ってない??」

a「サンバ??」

n「え、これなんかやばくな……」

【大爆発音】

c「俺たち……一体どこで間違えたんだろうな
…………さようなら。」

〜fin〜

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