暮らしの薬学【家庭用洗剤・除菌/漂白編】~②除菌/漂白成分の種類と性質
家庭で使用する漂白剤の除菌効果とは?
漂白剤とは汚れやシミなどの色素、有機物を酸化反応によって分解させるはたらきがある成分のことをいいます。衣類の汚れやシミに使用する漂白剤については、暮らしの薬学【衣類用洗剤・漂白編】で紹介しますが、ここでは、住空間で使用する漂白剤についてどんなものがあるか、またそれを使って除菌をするということについて説明します。
住空間で使用する漂白剤には、品名にもあるように“台所用”“トイレ用”“カビ取り”などがあります。衣類用の場合も、その成分は共通して「塩素系漂白剤」「酸素系漂白剤」の2つに大別することができます。
塩素系漂白剤で一般的なのが「次亜塩素酸ナトリウム」という成分です。この成分は細菌類の繁殖を抑える力が強く、プールや水道水の消毒にも利用されています。また、ノロウイルスなどの感染予防対策にもよく用いられています。
酸素系漂白剤の主成分は「過炭酸ナトリウム」です。茶渋の汚れ落としや除菌作用もありますが、その効果は(除菌効果、漂白効果、カビ取り効果)、塩素系漂白剤に比べると劣ります。塩素系漂白剤は、その強力さゆえに、柄もの衣類の柄色も消失させることもあるため柄物には、酸素系漂白剤の方を使います。また、メラミン樹脂製食器(給食などで使われているプラスチック製の食器)では次亜塩素酸ナトリウムで漂白すると黄ばんだ状態になるためこちらも酸素系漂白剤を使用します。
以上の性質から、トイレ用やカビ取り用では塩素系漂白剤が主流で、台所用では塩素系、酸素系の両方が使われています。塩素系は液体タイプ、酸素系は粉末タイプになっているので見分けやすいですね。
Q. 「次亜塩素酸水」は「次亜塩素酸ナトリウム」と違うの?
「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」は、名前が似ていますが、異なる物質です。「次亜塩素酸ナトリウム」は、アルカリ性で、酸化作用を持ちつつ、原液で長期保存ができるようになっています。「次亜塩素酸水」は、食塩水または塩酸水を電気分解することで作られる酸性の水溶液で、同じく酸化作用により除菌に用いられます。比較的刺激が少ないので、肌が荒れやすい人や強いにおいが苦手な人には使いやすいでしょう。
また、「次亜塩素酸水」のことを「pHを調整した次亜塩素酸ナトリウム」と称して販売する例があり、アルカリ性の「次亜塩素酸ナトリウム」と酸性の「次亜塩素酸水」が混同されやすくなっています。
もっと勉強したい人に~参考リンク・参考図書
●新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
●「次亜塩素酸水」を使ってモノのウイルス対策をする場合の使用方法(消費者庁)
<参考図書>
『洗浄と殺菌のはなし』
『地球にやさしい石けん・洗剤ものしり事典』
<関連記事>
暮らしの薬学【家庭用洗剤・除菌/漂白編】
① 除菌・漂白とは
② 除菌/漂白成分の種類と性質
③ 漂白剤の選び方と注意事項
④ 家庭内の感染対策
*****
<書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。